第32話 ユウキお姉ちゃん

文字数 782文字

 帰り際、子どもたちと別れるときに、シオン先輩がお父さんお母さんたちに、次の映画のパンフレット(まだ白黒のざらばんのものだけど…)を配った。もし良かったら観に来て下さい…って。さり気なくね。
 すると、それを見たお母さんの一人が、僕を見つめながら、

「あの…、やっぱりユウキさん…、ですよね?」

って、小声で話しかけてきた。

「はい、そうですけど…」

 そのお母さん、どうやら去年の映画祭に出展した映画を観て、僕のことを知っていたらしいんだ。それで、ちょっと言いにくそうに、

「あのう…、失礼ですけど…、ユウキさんって…、男性…、ですよね?」

って訊ねてきた。

「はい、そうです!」

笑ってそう答えると、周りの大人たちは、一様に声を上げてビックリした表情を浮かべた。
 その場で固まっているお父さんもいた。
 子どもたちはみんなお話に夢中で、このやり取りは聞こえていなかったようだけど。

 するとシオン先輩がすかさず、

「めっちゃ綺麗でしょ?うちの宝です。」

ってフォローしてくれた。

 やるね、シオン先輩。
 さすが、僕の狂信的信者!

 お父さんお母さんたちもみんな一様に、ウンウン、ってうなづいてくれた。さっきのお母さんは、

「映画で見るより、実物の方がさらに綺麗ですね」

とまで言ってくれた。

 ホントかな?照れる…



 子どもたち、バイバイする時、いっぱい手を振ってくれた。
 ユウキお姉ちゃん、バイバーイ、また遊ぼうねえ!って、大声で。

 うん
 また遊んでね

 子どもっていいなって思う。将来絶対欲しいと思う。
 僕は多分母親向きなんだけど、それを選べないのは知っている。僕は父親にしかなれないってことも。その父親にだって、僕なんかがホントになれるのだろうか。だって、子どもたちの両親って、あんなだもん。
 そう、みんな男と女…
 この問題は僕には超シリアスな問題なんです。
 考えても仕方ない問題なんだけどね。
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