第28話 男子だけのお弁当づくり

文字数 1,166文字

 献立は全部僕一人で考えた。
 お弁当作りの当日、昼前に必要なものをみんなで買い出しに行って、仕込みして、いよいよ本格的に狭い僕の部屋で、男7人と、見た目女の子1人が、キッチンフル稼働でお弁当作りに取り組み始めた。みんなエプロン姿で。

 いつもは言われたことをやるだけなんだけど、今日は僕が全部取り仕切った。

「料理って、段取りとタイミングが大事なんで、みんな僕の指示にちゃんと従って下さいね。返事は?」

って、腰に両手を当てて偉そうに言ってみた。そしたらみんな素直に、

「ハイ!!」

って。

 普段こういう場面まったく無いんで、一度言ってみたかったんだ。いつも返事する立場だから。

 作る品数も種類も多い上に、キッチンで使えるコンロの数は限られているので、何回かに分けなきゃいけない。順序よく、手際よくやらないと、せっかくのものが台無しになる。ホットプレートからミキサー、電気湯沸かし器まで使える物は総動員した。

 一年生男子は、ほとんど料理なんてやったことない子ばかりだけど、前もって包丁の使い方や野菜の切り方を教えたら、みんなちゃんと練習しといてくれた。こないだ僕が包丁の特訓するって言ったら、喜んで参加してくれたんだ(なぜか美優初め、女の子たちまで…)。
 やる気満々だから、料理も手順さえ指示すれば、上手に手際よくやってくれた。

 憲斗は元々腕悪くないし、一緒に作ったこともあって意思疎通しやすいから、ここ一番のところは憲斗に頼んだ。
 意外なのは兵藤先輩で、不器用なんだけど、ホント、言ったことを忠実に一生懸命(死にもの狂いで…)やってくれるんで十分戦力になった。僕が褒めれば褒めるほど上手くなっていった。
 スゴーィ!!って隣で手を叩いて褒めてあげた。

 兵藤先輩、褒められて伸びるタイプだね、って言ったら、脇目も振らずに包丁で細かくニンジン刻みながら、ボソッと

「褒めてくれる人にもよりますが…」

って言った。

 じゃあ、僕に褒められたら?って覗き込むと、

「きっと空も飛べるようになります。」

って答えてくれた。とても恥ずかしそうに。脇目も振らずに…
 よろしい。なかなか良い返しでした。



 仕上げの部分はほとんど僕。それでも、一年生や兵藤先輩にやってもらわなきゃいけない場面もあって、どうなることかハラハラしたけれど、みんな上手くやってくれた。

 作ったものは、唐揚げ、ハンバーグ、ポテトサラダを初め、野菜と肉の煮込みといった定番のものが大半なんだけど、僕なりの譲れないこだわりと工夫が多かったから、けっこう手間かかったと思う。それでもみんな文句言わずに一生懸命やってくれた。

 一部傷みやすいものだけ朝早くに僕が作ることにして、それ以外は全部仕上がった。夜も少し遅くなっていたけど、男一堂、充実の一時だった。
 僕も今日は男代表として取り組んだつもりです。
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