第65話 いざ最終決戦がはじまる

文字数 702文字

翌朝9時、ホテルのロビーに洋さんとタケを呼び出した。
外資のファンドに会社を乗っ取られると、これまでの特許や技術だけを奪われて、会社も人も残らない。あの工場も切捨てられて閉鎖になる。それだけは何とか阻止したいが、ここまでくれば、それさえも約束できる道は残っていない。また日繊工との提携というこれまでと同じゴールにたどり着いても、株価の動向や交渉によってはこれまでのような独立した経営権を維持できなくなる可能性がある。どの方向に転んでも、全員で力を合わせて、問題にあたることを確認した。
ただ、ここまで問題が拗れファンドに付け入る隙を与えたその遠因は、僕と洋さんの責任が大きく、この時点では病院にいる社長や美穂子、お母さんには詳細は告げず、失敗した時の心理的な負担は、ここにいる人間で負うことも伝えた。
そのまま三人で病院に行って、社長に説明した。
午後からは、昨日と同じメンバーが社長室に集まった。そこで、基本的にはタケが前日作ってくれた方針(当初のものに近い業務提携のシナリオ)に沿って進めることを出席者全員に伝えた。
会議は一時間程度で終わった。ただ、予測すべき様々な課題やその対策については、個別に検討する必要があるとして、それは僕と洋さんとタケに任せてもらうことにした。美穂子には、雅弘さんが作っている資料作成のサポートをお願いした。
想定される課題だけでなく、マスコミや銀行への説明の仕方、それぞれの役割を含め、議論は深夜まで及び、終わったのは月曜日の夕方だった。
ほぼ同時に、雅弘さんと美穂子の作ってくれた渾身のレポートも完成した。
僕が説明や応答に困らないよう、詳細な想定問答集(Q&A)が添えられていた。
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