第52話 山本周五郎「晩秋」と黒いブラジャー

文字数 2,033文字

お風呂から先に上がって、ソファに座ってアップルジュースを飲みながら、途中になっていた山本周五郎の短編「晩秋」をもう一度初めから、噛むようにして読む。藩の財政破綻を回避するために、苛斂誅求ともいうべき施策を打ち出した「進藤主計」と、それを止めようとして切腹させられた父をもつ「都留」。日本人独自の価値観や美徳、誰にも理解されることのない愚直なまでの覚悟、山本周五郎さんの小説は、時代を超えた普遍性を感じるものが多い。
今のこの時代は、後世の人達から、どのような評価を受けるのだろうか。あの世というものがあるならば、前世の人達から何と言われるだろうか。それは政治家だけの責任ではない。

「なに読んでるんですか?」 
急に後ろから声がかかり、振り向くと、風呂から上がった結衣が立っている。
「ハルさんは、本を読んだり、何か考えごとをしてるとき、お声かけしても全く聞こえないようですね。真琴ちゃんに良く似てますね」と笑う。
初めて見る黒い下着をつけ、パジャマの上だけをボタンを留めずに羽織っている。飲みかけのアップルジュースを渡すと、それを美味しそうにゴクゴクと飲む。白い、しっとりとした喉が上下に動く。僕の前にまわり、はだけたパジャマの前を合わせて、ソファの左に置いてあった本を手に取って、その場所に座った。
いつもよりも、リップの色が少しだけ赤い。
「ハルさんは、山本周五郎さんの小説の中ではどのお話が好きですか?」
「そやなぁ。この『晩秋』も好きやし、『その木戸を通って』も好きかな」
「『その木戸を通って』は、ちょっと不思議なお話ですよね。でもSFとは違って、その情景が浮かぶというか、『鶴の恩返し』とか『雪女』の大人版って感じですかね」
「結衣は、何が好き?」
「好きなお話しはたくさんありますが、私が一番初めに読んだのは、『日本婦道記』です。母が亡くなった時から何度も読み返していて、私の心の支えでした」
題名は忘れてしまったが、日本婦道記には、妻や母の話だけでなく、弟と姉の話もでてくる。結衣の本棚の中で、その本だけ手垢で色が変わっているのは気づいていた。
「結衣にそう言うてもらえたら、山本周五郎さんも喜んではるやろ」と髪の毛をなでながら言うと嬉しそうに照れた。娼婦のような黒い下着で、誘惑するような恰好で、真面目な話をする、そのギャップ、コントラストがとても可愛い。

「もう一つ聞いてええか?」
「何ですか?」
「そのセクシーな下着は、どうしたん?」
「やっと気が付いていただけましたか。ハルさんが本に夢中で気づいてもらえなければ、どうしようかと思ってましたよ」と少し拗ねたように笑う。
「最初から気づいてたよ。ほら」
結衣の右手を取って、大きく固くなっている僕のものを触らせる。
「ホントだ。ハルくんは気が付いてくれてましたか。よかった」
そう言うと、笑いながら、僕のものを車のシフトレバーのように握って、ギアチェンジをするときのように、前後左右に振る。
「レポートを提出した日に四条にでて、ハルさんに見てもらおうと思って、百貨店で上等なのを買ったんですよ。結構高かったんですよ」
そう言うと、少し恥ずかしそうにパジャマを脱いでゆっくりと一回転する。しっとりした大人の色気を感じさせる黒のシンプルなもので、結衣にとても良く似合う。
「とても良く似合ってて、色っぽい」と言うと
「でも、今日は私が先手ですよ」と微笑んで、ソファに座ったままの僕の両足を開かせ、その間のラグに膝をついて身体を伸ばしながら、ゆっくりと顔を近づけてきた。
可愛くチュッとしたあとで、仕留めた獲物を慈しむようなねっとりしたキスをしながら、ゆっくりと僕のパジャマのボタンをはずしていく。背中に手をまわして黒いブラジャーをはずそうとすると、「ダメ。まだおあずけです」と手を外される。
結衣の顔とくちびるが、少しずつ下腹部へ降りて行き、腰を上げさせ僕のズボンを脱がせる。固く飛び出したものにくちびるで軽く挨拶をすると、片方ずつ丁寧に足から下着を抜いて、パジャマの上着と一緒に、ソファの低い肘掛にそっと置く。
両足の間に座りなおすと、右手で握ってピストンのようにゆっくりと扱きながら、その下の皺状の袋を匂うように鼻を押し当てる。大きく口を開けて、その中にある柔らかい卵のようなものを吸い取るように口中にいれていく。
机に向かっているときとは別人の妖艶な目つきで、そのそそり立っているものを崇めるように、根元から少しずつ舐め上がってくる。チラリと僕の方をみて、ゆっくりと口の奥まで入れると、結衣の中にある官能がゆっくりと僕を包んでいく。
僕の両ひざに手をおいて立ち上がると、視線を合わせたまま、黒いショーツを降ろし、右足からゆっくりと抜き取る。黒い下着の下から現れる黒々とした茂みがなんとも情欲的だ。そして、僕の腰の横あたりに膝をついてソファにゆっくりと上がってくる。腰の上で正座をするようにペタリと座ると、足の甲を僕の開いた太ももの上に器用に乗せた。
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