第53話 それはまるで古代の祭祀と生贄のよう

文字数 1,871文字

一度キスをしてから耳元に口を寄せ、首に手を回すと「はずしてください」とささやく。
言われた通りに、結衣の背中に手をまわしてホックをとり、ふわりと浮いた黒の残骸を残したままで、乳房を下から揉みあげる。両手に力をいれてギュッと握ると、その痛みに、大きく息を吐いて眉間にしわを寄せる。そしてまた、淫靡な微笑みをチラリと見せて身体を密着させ、僕の頭を抱くようにして、自分の乳首を口に含ませていく。
「はぁ、気持ちいい。ハルさん、上手」
良い点を取ってきた子供の頭を抱いて、褒めるときのように頭をなでる。僕はもっとたくさん褒めてもらえるよう、丁寧に優しく舐めて口の中で転がしていく。
「あぁ~」
僕の右手を、胸から外し、自分の秘所へといざなう。
そこはすでに、滴り落ちそうなほど、たっぷりの潤みを湛えている。
指を入れたまま腰をくゆらせていたが、しばらくすると、耐えきれなくなったように後ろに手を回し、秘部を刺激している固くなったものを掴んで、それを自分の入り口に当てた。しばらくは、手で調整しながらその感触を楽しんでいたが、目を閉じてゆっくりと身体を起こすと、自分の中に、ゆっくりとしたスピードで押し入れていく。

「ズズズズズ」
何かを開くような音が、頭の中で聞こえる。
僕のものが、身体の中心を通って頭の先まで入っていくかのように背筋を伸ばし、顔を真っ直ぐ正面に向ける。眉間にしわを寄せて何か祈るように微動だにしない。ビクビクと二回痙攣すると、それを合図に「ふぅ~」と言う大きな吐息とともに全身の力を抜く。体重を僕の上に完全に乗せると、子宮の奥にまでピッタリとおさまった。
何度か大きな深呼吸をすると、目を閉じたまま、結衣の腰を支えていた僕の両手を持って胸を掴ませる。そして、その姿勢のまま、僕の手に自分の手を重ねると、四本の手で胸を揉みしだきながら、そのままゆっくりと小さく前後に腰をくゆらしはじめた。

眉間にしわを寄せた顔が緩むと、赤ん坊が眠りながら楽しい夢をみているときのような、ニコニコ、ニコニコとした満面の笑みに変わる。
それは、まるで古代の祭祀と生贄のよう。
結衣は、どこに行っているのだろうか。
そのまましばらくすると、とろんとした目が開き、初めて僕がそこにいるのに気付いたような顔をして戻ってきてくる。にっこり笑うと僕の首に手を回し、ピッタリと身体をあずけて、騎手が馬に乗っているときのような恰好で、短い呼吸とともに、腰を上下してリズムを取るように僕のものを出し入れしていく。最初はゆっくりスタートし、そしてそのスピードは少しずつ上がっていく。
「はっ、はっ、はっ、はっ」
10回から20回程度、リズムを合わせると、少しだけ身体を起こして、お腹を凹ませるように腰をくゆらせ僕を奥まで飲み込む。ゆっくりと味わうかのようにそれを繰り返すと、また、身体を密着させてリズムカルな動きにもどる。哲学者のように眉間にしわを寄せた真剣な顔、娼婦のような官能的な顔、思春期の少女のような少し困った顔、赤ん坊のような無防備なニコニコ顔など、結衣の深層にある複数の表情が交互に現れる。
「ベッドに行くか」と聞くと、まだここで良いとゆっくりと顔を左右に振る。
結衣の中に入ったままで身体を起こして、身体を反転させ、結衣をソファの上に横たえる。両足を高く持ちあげ、ゆっくりとしたスピードで抽送を始める。足の角度を変えながら、膣壁のあたる部分を調整していく。身体の柔らかい結衣の二つの足裏を合わせると、股関節が最大限に大きく開かれ、その輪の中を、スピードを変えながら突き進む。
「はぁ、ふぅ」
大きく息を吐いて、両手で自分の黒髪を両手できつくつかむ。
ソファの上に膝をついた格好で反対側を向かせ、背もたれに手をつかせると、わかっているかのように両手を後ろにまわして、臀部を大きく左右に開く。
腰をつかんで立ったまま、その中心にある満ちて溢れそうな源泉に、ゆっくりと後ろから入れる。仔犬が泣くような可愛い声のあとで、過呼吸のように口がパクパクするまで、手で身体が支えられなくなるまで、後ろから荒々しく突きあげる。
もう一度、結衣をソファの上に寝かせ、フィニッシュに向けて正常位にもどると、今度は朦朧としながら正面から僕のものを掴んで、ゆっくりと自分の中に差し入れる。両手と両足を首と背中に回してしっかりと絡ませ、身体に残ったすべての力をふりしぼり、僕がどこにも行かないようにと強く、強く抱きしめてくる。
うなされるように何度も何度も、僕の名前を呼ぶ。
そう心配しなくても、僕は、結衣の中にしかいけないのだけれど。
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