五章 4

文字数 2,242文字

七月一九日
 一八時○一分~一八時一六分→土橋と名乗る男が教授室を訪れ、滝沢誠について尋ねる。

相田真紀
 一八時一六分~一八時五五分→女生徒が入室。徳田、趣味に勤しむ。
 一九時○四分~一九時一九分→何者かが押し入り徳田を殺害。男根を切り取り、心臓を一突き、その後腹を十字に引き裂いている。

殺害現場
 【所見】犯人の痕跡なし、返り血もほとんど浴びていない模様。警察が押収したのか、持ち去った可能性が高い。
 犯人が持ち去ったのか不明だが、コレクションの写真はない。扉に釘→気を付けないと怪我をする。
 凶器は刃渡り二○㎝程のサバイバルナイフのような物だと推測される。
 事件の少し前(日付は不明)、教授の元奥さんに徳田の居場所を尋ねる電話があった。女の声だった。
 山田幸子が逃げていく男を目撃。
 犯人は東雲和成。
 
七月二二日
 一八時四四分→梨香子が何者かに殺害される。背中から一突き。
 一八時五二分→土橋さんが梨香子を発見。すでに脈はなかった。

 【所見】当日は雨で、地面はぬかるんでいたが現場には土橋さんの足跡しか残っていなかった。犯人と梨香子の足跡は消されていた。梨香子は土橋さんの名刺を握り締めていた。しかし名刺には梨香子の指紋しかついておらず、犯人が土橋さんに罪を擦り付ける為に握らせた模様。
 凶器は徳田殺害に使われた物と同じである可能性が高い。
 また、現場から逃げていく女が目撃されている。
 犯人は東雲和成。
 
【七月二五日事件】
 
 一○年前
  無職、滝沢誠(当時五○歳)が自宅で背後から刺されて死亡(首筋を一突き)。死亡推定時刻は深夜三時~四時の間。凶器のナイフからは家族の指紋しか検出できなかった。首にいくつも打撲があったが、当日受けたものではなかった。妻(綾子当時三二歳)の証言で滝誠は寝相が悪く、よくベッドから落ちていたという。その時の打撲だと思われる。
 元々滝沢は中小企業の社長だったが、亡くなる三か月前に社長職を退いている。その頃から借金をするようになり、気力を失い、家を出ることも少なくなった。
 滝沢には多額の保険金がかけられていた。その為、真っ先に綾子が疑われたが、犯行時刻に綾子と娘(結衣当時九歳)は綾子の母親の家にいて、アリバイがあった。→二二時に自宅(誠宅)を出て、翌六時に帰宅。
 綾子は死んでいる誠を見つけ、狼狽してナイフに触り、結衣も警察が来るまでの間に興味本位でナイフに触ってしまったと証言。つまり犯人はナイフの指紋を拭き取ったか手袋をしていた、ということになる。
 部屋を漁った形跡があったが、家には金目のものは少なく、誠の財布の中身(約五千円)だけが盗まれていた。
 事件後、綾子は生命保険を受取り、家を売却して結衣と名古屋へ引っ越した。
 名古屋で二人は新しい戸籍を手に入れ、綾子は顔を変えた。その後の消息は不明。
 
五年前
 会社員、岩槻勇(当時五○歳)が名古屋の自宅の玄関で刺されて死亡(二三時頃)。犯人は勇の帰宅を待っていたかのように押し入った。勇は玄関に迎えに来た娘(奈々)を護るように覆いかぶさって死んでいた。腹と背中を刺されていた。
 奈々は犯人の顔は暗くてよく解らなかったと証言。
 二三時二一分、警察に犯人と思われる女から通報。警察がかけつけた時にはすでに勇は死んでおり、娘は気を失っていた。妻(富美)は二階で寝ていた。
 ホームレスが岩槻宅から逃げていく者を目撃(男女不明)。
 富美はパート先の店長と浮気をしており、事件当日も二人で会っていたようだ。
 富美と奈々は事件後、堂明へ引っ越している。
 
四年前
 会社員、山口直人(当時四五歳)町外れの廃工場で裸で殺されていた。死亡推定時刻は一九時~二○時頃。男根を切り取られており、腹部を十字に切り裂かれていた。致命傷となったのは心臓への一突き。切り取られた男根はその場にはなかった。犯人が持ち去った?
 犯人の痕跡は巧みに消されていた。現場から逃げていく男が目撃されている。→東雲和成?
 犯人は東雲和成?
 
三年前
 会社社長、谷口一郎(当時五五歳)の自宅が放火された。時刻は一五時○一分。
自宅はほぼ全焼。一郎と妻の愛子(当時五四歳)、そして娘の咲(当時二五歳)の焼死体が発見された。唯一の生き残りは息子の建(当時三二歳)。全身に大火傷を負ったが、一命は取り留めた。
 現場近くでは怪しい中年の女が目撃されているが、犯人逮捕には至っていない。
 建はその後、愛子の妹夫妻の養子になった。
 
二年前
 市内の高校に通う、佐藤真奈美(当時一七歳)が繁華街の路地裏で刺されて死亡。現場に居た田中梨香子は無事だった。梨香子は犯人の顔を目撃してはいなかった。→犯人はフードを被っていた。
 後日、犯人が着ていたと思われるパーカーが発見された(真奈美の血が付いていた)が、大量生産された物で犯人を特定できなかった。
 梨香子以外に目撃者はなし。
 
一年前
 クラブホステス、佐藤良枝(当時四五歳)は娘と同じ場所で刺されて死亡。良枝は娘に花を手向けようと現場を訪れたところを襲われた。娘を殺した犯人と同一犯だと思われている。やはり目撃者はなかった。
 現場近くからはやはりパーカーが発見されている。
 良枝はクラブを経営している。経営は順調で周辺との軋轢はなく、客とのトラブルもなかった。捜査は難航。犯人逮捕には至っていない。
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