四章 13

文字数 503文字

 一○分程すると、スーツを着た女が部室を訪ねてきた。奈々はその女に見覚えがあった。明が電話をしたのはあの人だったようだ。スーツの女はCDを受け取ると、何も言わずに出て行った。
 その後、二○分程して明は戻ってきた。その顔は憔悴しきっていた。
「おい!どうしたんだよ。どこに行っていた?」
「……」
「明……」
 明は椅子に腰掛けた。呆然と虚空を見つめている。
「明」奈々は再び声をかけた。
 明は虚ろな目を奈々に向けるだけだった。奈々は明の頬を張った。“パシッ”という小気味良い音が響く。
「しっかりしなさい!」
「奈々……」
 明は頬を押さえながら、叱られた子供の様な目で奈々を見つめている。
「何があったの?犯人が解ったの?」
 明の目に生気が戻っていくのが解った。明は力強く頷いた。
「そろそろだね」明は時計を見ながら言った。
「何が?」
「行こう。後で説明する」
 明は部室を出て行った。土橋もそれに続いて出ていく。
「全く、世話が焼けるんだから」
 奈々は学を踏みつけてから部室の外へ出た。部室の中では学が苦しそうに唸っていた。
「変な写真を撮った罰よ」
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