五章 2

文字数 437文字

 明は手帳に書き込みながら考えていた。
「本当に和さんが七月二五日事件の犯人なのか?」
 東雲は二年以上海外にいた。四年前はともかくその後の犯行は不可能だ。
 教授と梨香子を殺したのは東雲だ。それは間違いない。でも疑問に残ることがいくつもある。東雲は教授室から持ち出した写真を処分せずに持っていた。まるで捕まえてくれと言わんばかりに――。
 辻元が東雲の自宅を調べた結果、徳田の血がわずかに付いたタンクトップが見つかった。さらに梨香子の血がついたTシャツも発見されている。なぜ処分しなかったのか。
 梨香子の殺害現場では女が目撃されている。――はたしてそれは誰なのか?
「和さんは細かいことが苦手だった。あんなに綺麗に現場の証拠を隠滅できるものだろうか」
 無理だ。東雲の性格と現場の状況が違い過ぎた為に、明は犯人が東雲だとは思わなかった。
 まだ事件は終わっていない。
「裏で糸を引いている者がいる」
 七月二五日は明日。
「必ず何かが起こる」
 
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