五章 3

文字数 570文字

 明は土橋に電話をかけた。
「明です」
『ああ、崎本くん。もう大丈夫なのか?』
「大丈夫じゃありません。でもそんなことを言っている余裕はない」
『では君も彼は違うと思っているのか?』
「はい。事件はまだ終わってはいません」
『よかった。ではまだ約束は有効かな?』
「ええ。七月二五日事件の解決に協力します。そのために折り入ってお願いがあります」
『なんだね』
「これまでに土橋さんが調べた事件のデータを僕のアドレスに送ってくれませんか?」
『お安いご用だ。アドレスを教えてくれるか?』
「はい」
 明はアドレスを言った。土橋がメモを取るペンの音が聞こえる。
『すぐに送るよ。ところで大塚さんに話を聞きたいんだが』
「どうぞ。奈々の信頼を得ることができれば、話してくれると思います」
『信頼?』
「彼女は心に悪魔を抱えているから、それを押さえ込むあまり誰も近づけようとはしない。でも一度信頼を得れば、本当の彼女が解る」
『悪魔ね……』
 電話を切った後、すぐにパソコンのアドレスにメールが送られてきた。メールには僅かな文とともにファイルが添付されていた。メールにはこう書かれていた。「悪魔は誰の心にもいる」
 明はファイルを開いてデータをプリントアウトした。
 それを元にして、手帳に要点を纏めた。
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