三章 6

文字数 629文字

 土橋は山さんからヤクザの情報に詳しい人を紹介してもらった。岡田というその男は警察のマル暴とのパイプを持っているらしい。岡田に昨日の屋敷のことを聞いてみた。
「ああ、そりゃあ間違いなく暴力団だ。『神龍会』グループ『土屋組』の組長の家だ。その家は先代の組長が建てた屋敷だな。今は四○歳そこそこの若い組長が住んでいる。色々と危ないことやってるって話だな」
「薬ですか?」
「それもそうなんだが、もっと危ないことだよ」
「薬以上に?」
「ああ、人身売買だよ」
「今、二一世紀ですよ」
「バカ!奴隷を売っているわけじゃねえよ。ダッチワイフとしての女と労働力としての男、それらを発展途上国に売ってるんだ。世間的にはそいつらは行方不明ってことになっている」
「それ本当の話ですか?」
「噂だよ。噂。俺もそこまで突っ込んで調べてねえよ。命が惜しいしな。ああ、でも戸籍の売買は間違いなくやってるって話だ」
「戸籍の売買……」
「ホームレスから戸籍を買うんだよ。女の戸籍は高く売れるらしいぞ。女のホームレスは少ないからな」
「なるほど……、これで解りました」
「あ?何が?」
「いえ、その組長って昼間はどこにいるんですかね。屋敷にはいないらしいんですけど」
「多分事務所じゃねえかな」
 土橋は岡田に教えられた住所を素早くメモして言った。
「岡田さん、お願いがあるんですけど……」
「……なんだよ」
 岡田は露骨に嫌そうな顔をした。
 
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