三章 12

文字数 609文字

 新幹線のシートに凭れながら土橋は考えていた。
 綾子と結衣は一○年前、名古屋で戸籍を買った。その後、綾子は整形。二人は別人になった。結衣は記憶を失っており、綾子は結衣を護らなければいけないと言っていた。
 そして五年後の七月二五日、岩槻勇が殺された。妻の富美と娘の奈々は無事だった。状況がよく似ている。もし綾子が富美で、結衣が奈々だとしたら、点が線に繋がっていく。富美と奈々は事件後、堂明に引っ越している。
 堂明では一○年前からその年まで、七月二五日に殺人事件は起きていない。しかし、二人が堂明に越した翌年――四年前――には七月二五日に山口直人が刺殺。タイミングが合い過ぎている。
 そして次の年からは毎年殺人事件が起きている。今年も起こるはずだ。警察はあてにならない。堂明の殺人事件はすべて違う区で起こっている。管轄が違うというだけで事件の繋がりには気がついていない。恐らく縄張り争いに忙しくて連携が取れていないのだろう。
 徳田の殺害は連続殺人に関係あるのだろうか。名古屋初日、梨香子から徳田の死を知らされて驚いた。しかし、殺されたのは七月一九日。二五日ではない。
「偶然か?」土橋は思わず口走っていた。周りを見るが、全員寝ているようだ。
 徳田は滝沢誠一家に深く関わっている。土橋は全くの偶然とは思えなかった。どちらにしても鍵は大塚富美と奈々が握っていることは間違いない。土橋はそう確信した。
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み