一章 3

文字数 556文字

「二人の証言を聞いて確信したよ。彼女が犯人だって」
「それで彼女は?」
「自首してもらった。警察にはあまり通報したくなかったしね。もちろん、拒否するなら警察に言うしかなかったけど」
「一件落着だね。お金は返ってきたの?」
「もう使っちゃってたよ。ホストに入れ込んでたみたい。でもお金は学長が補填してたからいいかなって思って」
「学長意外に太っ腹だね」
「そんなことないよ。あれ経費だし」
「マジ?」
「うん、マジ。被害者に渡したのと同じ額の接待費が翌日申請されてた」
「そんなの、どうやって調べたのよ」
「ひ・み・つ」
 再び奈々は口を尖らせた。その顔を見て明は嬉しそうに微笑んだ。
「あれ?」
 奈々は疑問に思った。
「どうしたの?」
「更衣室って、鍵変えたって言ってなかったっけ?」
「気がついた?」
「うん。二回目の犯行の時、その美容師は鍵をどうやって開けたの?」
「その美容師の話では、盗んだのは一回だけだってさ」
「え?じゃあ」
「二回目の犯人は別人ってこと」
「じゃあ全然解決してないじゃない」
「解決したよ、ちゃんとね」
 奈々は訳が分からないといった風に首を傾げた。
「そういえば、昨日付けで講師が一人退職したよ」
 明は片目を瞑って見せた。
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