四章 5

文字数 561文字

 応接室に大塚を残し、辻元は部屋を出た。そして部下の女に大塚のデータを調べさせた。
「データが?あったのか?」
「はい。名古屋の守山警察にデータがありました」
 辻元はプリントアウトされたデータに目を通した。
「……偶然か?まさか……」
「どうかしましたか?」
「いや……」
 辻元は女に次の指示をした。女はすぐに作業に取りかかった。

「主任!」
 先程、目配せした部下の男が戻ってきた。
「どうだった?」
「確かに駅前の防犯カメラに彼女が写っていました。さらに面白いことに、土橋が電話をかける直前に彼女と肩をぶつけています」
「そうか、ありがとう。お前は上杉を手伝ってくれ」
「はい」
 男は女の隣に腰掛けて、端末を操作し始めた。それを見て辻元は応接室に戻った。
「大塚さん、伺いたいことがあります」
「何でしょうか?」
「五年前の事件について」
「……」
 大塚の表情は動かなかった。大塚が何を思っているのかまるで掴めない。この女性は手ごわい。辻元はそう確信した。
「話していただけますか?」
「話すことはありません」
「そう……、ですか」
 大塚の目は「何を言われても話さない」そう言っていた。
「本日はありがとうございました」
 そう言って辻元は頭を下げた。
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