一章 11

文字数 864文字

 それを聞き終えて、明は口を開いた。
「少なくとも犯人は、昨日の女生徒ではなさそうだね。女生徒の前に会っている、この土橋って人は誰だろう?」
「解らん。フリーライターと言ってるが、怪しいな」
「……それより、教授は刺されたの?」
「それに関しては警察の話を盗み聞きしたんだけどな」
「どうやって?」
「ひ・み・つ」
「はあ、まあいいや。続けて」
「犯人は徳田をソファーに寝かせて手錠をかけ、刃渡り二○㎝のサバイバルナイフでズボンを切り、○○チンをスパっと切った。さらに心臓を一突き。その後、腹を十字に切り裂いた」
「うわあ、えげつない。ってことはやっぱり恨みかな?」
「だろうな。○○チンを切られているから、そっちの線だろう」
「女子には難しいよね。あれを切るまではやれたとしても、心臓を突いて、腹を裂くなんて」
「あれって?」
 東雲はイタズラな目を向けてきた。からかっているのだ。明は下ネタが苦手だということを解っているから――。
「うるさいな、いいだろ。そんなの」
 明は拗ねたように顔を背けた。
「くくく。悪い、悪い。やられた女の彼氏って線もあるぞ」
「それが一番可能性ありそうだね」
 明は顎に手を当てて考え始めた。これは明が推理している時の癖だと東雲は知っている。
「だめだ!解んない。情報が音声だけじゃ無理だよ。犯人一言もしゃべってないし」
「だろうな。後は警察に任せるしかないな」
 その時、内線電話が鳴った。
「はい。『野草サークル』部長の東雲です。ああ、どうも。まだ解りません。いますよ。代わります」
 東雲は「学長だ」と言って受話器を渡した。
「はい、崎本です」
『犯人はうちの学生なのかね?』
「まだ解りません。ただ、徳田教授に恨みを持つ者であることは間違いないでしょう」
『そうか……。うちの生徒が犯人という可能性もあるわけだな?』
「はい」
『解った。正式に依頼する。徳田教授を殺した犯人を警察より先に見つけてくれ』
「了解しました」

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