五章 5
文字数 716文字
家の前で待っていると、ようやく玄関から大塚が出てきた。
「土橋さん……」
「話があるんだけど」
「……どうぞ」
大塚は家の中に戻っていった。土橋も続いて中に入った。
「お母さんは?」
「いません。パートに行っています」
大塚は土橋を居間に通した。
「コーヒーでいいですか?」
「ああ、お構いなく」
大塚は微笑んで居間を出ていった。仏壇がある。遺影の男は優しく微笑んでいた。大塚の義理の父親――岩槻勇――だろう。
すぐに大塚は戻ってきた。
「インスタントですけど」
「ありがとう」
「あたし、話すことは何もありませんから」にべもなく大塚は言った。
「いや、今日は俺の話を聞いてもらいたくて来たんだ」
「……」
土橋はおもむろにジャケットを脱いだ。大塚は驚いている。それはそうだろう。この火傷の痕を見れば誰だって驚くに決まっている。
「俺も君と同じなんだ」
「土橋さん……」
「三年前の七月二五日、俺の家が放火された。家族はみんな死んだ……」
土橋はジャケットを羽織った。
「俺はその犯人を見つけることだけを考えて、この三年間生きてきた!」
土橋は掌を拳で叩いた。
「東雲は七月二五日事件の犯人じゃない」
大塚はそっとハンカチを差し出した。土橋はそこで初めて自分が泣いていることに気がついた。
「ありがとう……」
「あたしには母がいました。でもあなたには誰もいなかったのね」
「う……うう」
もはや涙を止めることはできなかった。溢れ出る涙はあの時の怒りと悲しみが消えていないことの証でもあった。
「見つけましょう。犯人を」
「ああ……、見つけよう」
「土橋さん……」
「話があるんだけど」
「……どうぞ」
大塚は家の中に戻っていった。土橋も続いて中に入った。
「お母さんは?」
「いません。パートに行っています」
大塚は土橋を居間に通した。
「コーヒーでいいですか?」
「ああ、お構いなく」
大塚は微笑んで居間を出ていった。仏壇がある。遺影の男は優しく微笑んでいた。大塚の義理の父親――岩槻勇――だろう。
すぐに大塚は戻ってきた。
「インスタントですけど」
「ありがとう」
「あたし、話すことは何もありませんから」にべもなく大塚は言った。
「いや、今日は俺の話を聞いてもらいたくて来たんだ」
「……」
土橋はおもむろにジャケットを脱いだ。大塚は驚いている。それはそうだろう。この火傷の痕を見れば誰だって驚くに決まっている。
「俺も君と同じなんだ」
「土橋さん……」
「三年前の七月二五日、俺の家が放火された。家族はみんな死んだ……」
土橋はジャケットを羽織った。
「俺はその犯人を見つけることだけを考えて、この三年間生きてきた!」
土橋は掌を拳で叩いた。
「東雲は七月二五日事件の犯人じゃない」
大塚はそっとハンカチを差し出した。土橋はそこで初めて自分が泣いていることに気がついた。
「ありがとう……」
「あたしには母がいました。でもあなたには誰もいなかったのね」
「う……うう」
もはや涙を止めることはできなかった。溢れ出る涙はあの時の怒りと悲しみが消えていないことの証でもあった。
「見つけましょう。犯人を」
「ああ……、見つけよう」