049 完璧主義者の弱点も断れないこと…… side A
文字数 1,804文字
「だ、か、ら、言いたくなかったのにぃ。ワタシがチェックしているわけじゃないもの。セットされている装置内の通信を始める手前で、メカニカルにされているし、そんなアホなことを言い出すアホさ加減が、それ以上悪化することもないから問題ないでしょっ」
「ならまぁ問題はなさそうだけど、アホにはムダと決めつけて、オレに説明してないことはまだまだたくさんあるんじゃね? オレの聞き方や、聞かないのが悪いってのか? フィフも言ってたけどさぁ」
「あとにしてそんなことはっ。今もう、約三〇メートルにまで接近して来ちゃっているのよ怪物クンが──」
その様子を、和加はD‐ヴァイザーに表示。
「……オォッ。でもどしてだ?」
「手間どったけれど、このフィールド全景のエアリアルヴューを、セラフィムや、観戦客たちがアップロードしてくれている動画や画像で、ようやく完全な把握ができたわ。フィフのシステムも、一応活かせる距離になったから射撃管制は任せて」
「さすが~、和加様でごじゃりまするなぁ」
「フザケないの。ただちにロングレンジ・スリングショットで牽制攻撃開始よっ」
「了解だ──」崎陽は迎撃態勢に入ることを、声をかけてピスタへ伝える──「それじゃぁピスタ、あとは巧いことやってくれっ」
崎陽は片手を挙げて左向け左、ピスタと大雑把ながら、うち合わせておいた自分の配置へとつくために歩きだす。
「ねぇ、ワタシは、ただちにって言ったんですけれど」
「てかさ、言い出されるまで考えもしなかったけど、ここ全体を把握する程度のこと、和加にしては遅くね?」
「だって、ここの最新版として、いろいろ利用されている航空写真と今日来て集めた映像データとでは、ビミョ~なズレがあるんだもの」
「……どう言うことだよ?」
「可能性として、ここは毎日、どこかが少しだけ変更されているだけでなく、元に戻されたりもしているから、それをキッチリ照合しきるまでに時間がかかっちゃったのっ。一つ一つアングルを合わせるとか、大変だったんだからぁ」
「そのガッチガチの完璧主義、この先、弱みにならなけりゃいいんだけど」
「崎陽のカオスなファジーさを整斉で鮮明にするには、ガッチガチにならざるを得ないのっ。とにかくここは、怪物クンたちを鍛える目的で、小マメにレイアウトが変えられて、場慣れからの緊張感がなくならないように配慮されているのよ」
「なるほどな……それもまた、ホームアドヴァンテージってか」
「だから、今日のフィールド状況でも、怪物クンの対応スピードは相当なはずぅ。こちらの有利さに気づかれる前に倒さないと」
「そんな椎座に牽制攻撃もないって。もう最初から狙っていくんでドンピシャの指示を頼む。ショートレンジ用で有効弾が撃てる距離になった時もスグに教えてくれ」
「勿論、そのつもりだけれど」
「頼むなっ。左手に生えてる樹の枝、結構横に広がってて邪魔だから。低い弾道で撃つしかなくて、ロングレンジ用のメリットが少ないし、ラウンダルに変化をつけるのも難しいからさ」
和加が、「わかったわ。セラフィムや観客たちがネットにあげる映像は、こちらから見て左側から撮られたモノのみだけれど、数があるからドンピシャには限りなく近づけられるはずよ」と返答する間に、崎陽は尻をついてしゃがみ込む。
前へとズラし回したヒップバッグから、ロングレンジ・スリングショットをとり出して足先にセット、一連の動作を円転と済ませて発射態勢に入った。
「よっしゃOK。いつでもいいぞ」
「スリングを引きすぎ、一五七・三六ミリ戻して。発射角はそのままベータで、右へ八八・一九ミリ向きなおしたら撃っていいわよ」
和加が精度を高めた数値で指示出しをしたのは、D‐ヴァイザーのディスプレイに表示される単位に合わせただけのこと。いくら練習しようとも、崎陽の感覚では当然そこまで微妙な姿勢の修正などは不可能。
しかしもう現時点では、カメラが捉える映像から、D‐ヴァイザーがスリングショットの発射体勢を認識してくれるようになっている。
ディスプレイ中央に、ダイヤ形と、その対角線による十字で構成された照準インディケーターも表示してくれた。
射出方向と角度、およびスリングの引き加減という、崎陽の狙う動作が命中の予測されるとおりに定まれば、歪んでいたダイヤ形と内側の十字もきっちりと形が整い、崎陽は、その十字の交点を目がけてラウンダルを放てばいいだけとなる。
「ならまぁ問題はなさそうだけど、アホにはムダと決めつけて、オレに説明してないことはまだまだたくさんあるんじゃね? オレの聞き方や、聞かないのが悪いってのか? フィフも言ってたけどさぁ」
「あとにしてそんなことはっ。今もう、約三〇メートルにまで接近して来ちゃっているのよ怪物クンが──」
その様子を、和加はD‐ヴァイザーに表示。
「……オォッ。でもどしてだ?」
「手間どったけれど、このフィールド全景のエアリアルヴューを、セラフィムや、観戦客たちがアップロードしてくれている動画や画像で、ようやく完全な把握ができたわ。フィフのシステムも、一応活かせる距離になったから射撃管制は任せて」
「さすが~、和加様でごじゃりまするなぁ」
「フザケないの。ただちにロングレンジ・スリングショットで牽制攻撃開始よっ」
「了解だ──」崎陽は迎撃態勢に入ることを、声をかけてピスタへ伝える──「それじゃぁピスタ、あとは巧いことやってくれっ」
崎陽は片手を挙げて左向け左、ピスタと大雑把ながら、うち合わせておいた自分の配置へとつくために歩きだす。
「ねぇ、ワタシは、ただちにって言ったんですけれど」
「てかさ、言い出されるまで考えもしなかったけど、ここ全体を把握する程度のこと、和加にしては遅くね?」
「だって、ここの最新版として、いろいろ利用されている航空写真と今日来て集めた映像データとでは、ビミョ~なズレがあるんだもの」
「……どう言うことだよ?」
「可能性として、ここは毎日、どこかが少しだけ変更されているだけでなく、元に戻されたりもしているから、それをキッチリ照合しきるまでに時間がかかっちゃったのっ。一つ一つアングルを合わせるとか、大変だったんだからぁ」
「そのガッチガチの完璧主義、この先、弱みにならなけりゃいいんだけど」
「崎陽のカオスなファジーさを整斉で鮮明にするには、ガッチガチにならざるを得ないのっ。とにかくここは、怪物クンたちを鍛える目的で、小マメにレイアウトが変えられて、場慣れからの緊張感がなくならないように配慮されているのよ」
「なるほどな……それもまた、ホームアドヴァンテージってか」
「だから、今日のフィールド状況でも、怪物クンの対応スピードは相当なはずぅ。こちらの有利さに気づかれる前に倒さないと」
「そんな椎座に牽制攻撃もないって。もう最初から狙っていくんでドンピシャの指示を頼む。ショートレンジ用で有効弾が撃てる距離になった時もスグに教えてくれ」
「勿論、そのつもりだけれど」
「頼むなっ。左手に生えてる樹の枝、結構横に広がってて邪魔だから。低い弾道で撃つしかなくて、ロングレンジ用のメリットが少ないし、ラウンダルに変化をつけるのも難しいからさ」
和加が、「わかったわ。セラフィムや観客たちがネットにあげる映像は、こちらから見て左側から撮られたモノのみだけれど、数があるからドンピシャには限りなく近づけられるはずよ」と返答する間に、崎陽は尻をついてしゃがみ込む。
前へとズラし回したヒップバッグから、ロングレンジ・スリングショットをとり出して足先にセット、一連の動作を円転と済ませて発射態勢に入った。
「よっしゃOK。いつでもいいぞ」
「スリングを引きすぎ、一五七・三六ミリ戻して。発射角はそのままベータで、右へ八八・一九ミリ向きなおしたら撃っていいわよ」
和加が精度を高めた数値で指示出しをしたのは、D‐ヴァイザーのディスプレイに表示される単位に合わせただけのこと。いくら練習しようとも、崎陽の感覚では当然そこまで微妙な姿勢の修正などは不可能。
しかしもう現時点では、カメラが捉える映像から、D‐ヴァイザーがスリングショットの発射体勢を認識してくれるようになっている。
ディスプレイ中央に、ダイヤ形と、その対角線による十字で構成された照準インディケーターも表示してくれた。
射出方向と角度、およびスリングの引き加減という、崎陽の狙う動作が命中の予測されるとおりに定まれば、歪んでいたダイヤ形と内側の十字もきっちりと形が整い、崎陽は、その十字の交点を目がけてラウンダルを放てばいいだけとなる。