060 side B
文字数 1,827文字
「確かに崎陽には鬼に衣ね、その筋の情報は。ワタシも結局はムダな、犬馬の心を熬 らるだけのことになるんでしょうし~」
「げげ~。オレの引喩戯れとでも呼ぶべき戯れ言に、易易とノっかってくるようになった今日この頃と思ってたけど、既にオレの上をいってくれちゃってるよなぁ……」
「でしょ~。その引喩戯れと言うのも意味不明だけれど、崎陽が使う言語遊戯は完全なモジリでも語呂合わせでも重ね言葉でもなくて、最近ようやく理解できるようになったから。もう閉口や辟易ともサヨナラ~、幾らだって言い返してあげちゃうんだから」
「ったく、まいるよなぁ……でもさ、何でオレが言い遊んじまうのか、まだその根本が理解できてないんじゃね?」
「も~、また意味不明なことをぉ。そうやって──」
「どうだっ、見たかぁキチキチ。貴様にピョンとひらめく浅略くらい、ボクにはお茶のこさいさ~い、丸太を登る真似も何のそのなのだぁ」
「見た見たっ、まさかあんたまで登るとは意表の突きすぎにもほどがあるって。椎座もゆくゆく防御力の向上につながるいい経験になったんじゃね?」
鼻高高と喜び勇んで肩を並べて来たピスタに会話を遮られ、崎陽も歓迎ムードで応じたことから、和加は一まず気がもまれつつも押し黙る。
「知ったことか。ボクを侮りすぎて眼中になかったあまりに、交錯を嫌って、確実に仕留めるためにも飛び下がる反応をした椎座の完全なる凡失だ。だが助かったぞ、ボクのクツ紐だけではどうにも長さが心細かったからな」
「あぁ。オレが囮で攻撃も掩護となれば気は楽だったけど、し甲斐もあったって。なんか、オレが思ったことにバッチリ気づいて動いてもくれてさ、ヘンタイなのが惜しいくらいだピスタはホント」
「惜しむなヘンタイくらい~。ボクはセラフィムにいいトコを見せつけるためならば、気などいくらでもグルングルンまわせる善いコなのだっ」
「気が利きすぎて間がぬけるってヤツかよ? 全然惜しくなかったな。まぁ御苦労さん、もう充分だ、セラフィムから褒詞を賜っていい夢見ちゃってくれ。オレはまだ一人も倒してないんで、やれるトコまでやっとかないと、ムカつく丸坊主になっちまうから」
「ぬな?長翅目 がのたまく譫言にまで気はまわらんが、怪物退治に成功した爽快さでボクはまだまだ戦えるっ。残党どもの掃討にも手を貸してやるぞ、また貴様を囮に使うのに、格好の場所があるからついて来い~」
ピスタは、猛 り立 ちから血走りが酷くなった目をギロつかせ、浮かべる笑みまで不気味さを一層強めると、崎陽に先んじて歩調も上げだす。
「そりゃどうも……」
短く応じてピスタのあとに続く崎陽だが、それ以上はどちらも口を開く気ぶりがないため、今の間に起こった急変の報告を「ねぇねぇ、意気込んでるところを悪いんだけれどぉ」と、物麗らかに始める和加だった。
「もしかして、ピスタが向かってる方はもうヤバいのか?」
「そうじゃなく、もうこの一戦は勝っちゃったみたいよ。残るユニットカイザーの連中は、崎陽とピスタを倒して決着をつけるどころではなくなって、オロオロと慌てながらフィールドから出て行っちゃってるぅ」
「ガチか……どう言うことだよ?」
「観戦者の中には中等部のサッカー部員と友達の人もいて、怪物クンが敗れたスクープを大急ぎで知らせたから。早速サッカー部が、怪物クンの身柄確保に乗り込んで来るってことなんでしょうね」
「……オレたちよっか、椎座のリアル防衛戦ってかよ?」
「中高の運動部が練習している場所は、やっぱりここから二〇〇メートルも離れていない大学のキャンパスに隣接したグラウンドだしぃ」
「じゃぁオレたちの勝ちか……頭は丸めずに済みそうだな」
「ま、よかったんじゃない?」
「だな。オレ、左寄りの後頭部に小さな
「……全然笑えないんだけれど。崎陽って実は、鬼どころか黙示録の獣か九陽の精霊ソラトの呪いがかかってたりしてぇ? それは見る角度で
「……鬼ですらもて余してるのに、それ以上物騒なこと言うなっての。角度なんか変えちまったら、
和加の放笑に合わせたみたいにゲーム終了のサイレンが鳴る。
そして第一回戦は、ユニットカイザーのFG(放棄試合)により、ユニット桜嶺の勝利がアナウンスされた。
「げげ~。オレの引喩戯れとでも呼ぶべき戯れ言に、易易とノっかってくるようになった今日この頃と思ってたけど、既にオレの上をいってくれちゃってるよなぁ……」
「でしょ~。その引喩戯れと言うのも意味不明だけれど、崎陽が使う言語遊戯は完全なモジリでも語呂合わせでも重ね言葉でもなくて、最近ようやく理解できるようになったから。もう閉口や辟易ともサヨナラ~、幾らだって言い返してあげちゃうんだから」
「ったく、まいるよなぁ……でもさ、何でオレが言い遊んじまうのか、まだその根本が理解できてないんじゃね?」
「も~、また意味不明なことをぉ。そうやって──」
「どうだっ、見たかぁキチキチ。貴様にピョンとひらめく浅略くらい、ボクにはお茶のこさいさ~い、丸太を登る真似も何のそのなのだぁ」
「見た見たっ、まさかあんたまで登るとは意表の突きすぎにもほどがあるって。椎座もゆくゆく防御力の向上につながるいい経験になったんじゃね?」
鼻高高と喜び勇んで肩を並べて来たピスタに会話を遮られ、崎陽も歓迎ムードで応じたことから、和加は一まず気がもまれつつも押し黙る。
「知ったことか。ボクを侮りすぎて眼中になかったあまりに、交錯を嫌って、確実に仕留めるためにも飛び下がる反応をした椎座の完全なる凡失だ。だが助かったぞ、ボクのクツ紐だけではどうにも長さが心細かったからな」
「あぁ。オレが囮で攻撃も掩護となれば気は楽だったけど、し甲斐もあったって。なんか、オレが思ったことにバッチリ気づいて動いてもくれてさ、ヘンタイなのが惜しいくらいだピスタはホント」
「惜しむなヘンタイくらい~。ボクはセラフィムにいいトコを見せつけるためならば、気などいくらでもグルングルンまわせる善いコなのだっ」
「気が利きすぎて間がぬけるってヤツかよ? 全然惜しくなかったな。まぁ御苦労さん、もう充分だ、セラフィムから褒詞を賜っていい夢見ちゃってくれ。オレはまだ一人も倒してないんで、やれるトコまでやっとかないと、ムカつく丸坊主になっちまうから」
「ぬな?
ピスタは、
「そりゃどうも……」
短く応じてピスタのあとに続く崎陽だが、それ以上はどちらも口を開く気ぶりがないため、今の間に起こった急変の報告を「ねぇねぇ、意気込んでるところを悪いんだけれどぉ」と、物麗らかに始める和加だった。
「もしかして、ピスタが向かってる方はもうヤバいのか?」
「そうじゃなく、もうこの一戦は勝っちゃったみたいよ。残るユニットカイザーの連中は、崎陽とピスタを倒して決着をつけるどころではなくなって、オロオロと慌てながらフィールドから出て行っちゃってるぅ」
「ガチか……どう言うことだよ?」
「観戦者の中には中等部のサッカー部員と友達の人もいて、怪物クンが敗れたスクープを大急ぎで知らせたから。早速サッカー部が、怪物クンの身柄確保に乗り込んで来るってことなんでしょうね」
「……オレたちよっか、椎座のリアル防衛戦ってかよ?」
「中高の運動部が練習している場所は、やっぱりここから二〇〇メートルも離れていない大学のキャンパスに隣接したグラウンドだしぃ」
「じゃぁオレたちの勝ちか……頭は丸めずに済みそうだな」
「ま、よかったんじゃない?」
「だな。オレ、左寄りの後頭部に小さな
の
の字の傷が三角に並んでてさ、剃れば目立つと思うから助かったって。高校生にもなって、あだ名がののの
とかの
の三乗とか最悪だもんなぁ」「……全然笑えないんだけれど。崎陽って実は、鬼どころか黙示録の獣か九陽の精霊ソラトの呪いがかかってたりしてぇ? それは見る角度で
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になる傷だもの」「……鬼ですらもて余してるのに、それ以上物騒なこと言うなっての。角度なんか変えちまったら、
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にも、どっかの古代文字とかにも見えちまうだろが」和加の放笑に合わせたみたいにゲーム終了のサイレンが鳴る。
そして第一回戦は、ユニットカイザーのFG(放棄試合)により、ユニット桜嶺の勝利がアナウンスされた。