008 side B
文字数 1,669文字
「へー、……崎陽でも逆らえない空気とはなぁ」
「そう、そうだっ。大体おまえが今まで完無視してくれたもんだから、いい加減オレだけで行くしかなくなったんじゃねぇか」
「ヨッシャ助かり~。意図は違えど、功を奏したな完無視は。俺ってば、身のほどをしっかり弁えてるからなぁ」
「何がヨッシャだ、ったく……」
「じゃぁ拡散してた昆スタンツェ発信の情報には、おまえとの仲を勘繰るような意味なんかなかったわけかよ?」
「ねぇよ全く。て言うか一体何が拡散してたんだ?」
「てかまぁ、きゃぴついたTシャツくらいは可愛いもんだが、あんなトコで茶ぁしたり晩メシ喰ってりゃ、三万近くは吹っ飛ぶよな軽く。おまえが無知なだけでしかないね」
「……晩メシは、奢ってもらった。あのコのフォロワーを自称するオヤジに。何かのプロデューサーらしい、Pちゃん呼ばわりされたから。一休みに入ったカフェってヤツも行きつけみたいでさ、謎のスイーツも、花のニオイがするコーヒーとかも店長の奢りだったし」
崎陽は謎としか言いようがないスイーツの堆 さも、両手で澤部へと表現して見せた。
「なんだかなぁ……」
「第一、原蓿までは別のフォロワーがブタピンクのマセラティで送ってくれて、澁谷からの帰りはまた別のフォロワーが迎えに来た、金ぴかランボルギーニでっ。どいつもあのコの一つぶやきで、ひょいと来やがったカンジだ」
「なんだよ交通費まで浮いてるじゃん、ガチでデートと言えそうもねぇし」
「だから、あんなTシャツ一枚が税込みで二万超えだっ。レジで金額を宣告されてから、しばらく呼吸も思考も完全停止で流されるままだった。昼メシを加えて計三万弱、そりゃメシ代は自分の分も入れてだけどさ」
「……ったく、ビンボー臭プンプン丸めが。ま、実際ビンボだからしゃーねぇけど」
「だって。なんか味からしてよくわからん物が、日替わりランチなのに一人四三七八円って、クルマで一時間しか離れてねぇのに、原蓿や澁谷は日本かよガチで?」
「ん~……ま、よかったんじゃね? セラフのガイドで天国ツアーへ行ったと思えば安いかもだし、送迎付きでほぼ無料の話題店巡り。色ばかりかツーシーターじゃないスーパーカーなんて鬼ダサッ、俺もそんなコッテコテのお上り日帰り旅行してみて~」
「言ってろっ。天国沙汰もカネ次第、そんなのがあのコのキラキラの利福ってヤツだぞ。おまえだって与 りきれるとは思えないね。むしろ触らぬキラキラに祟りなし、自分中心にまわしてもらえることに何の疑いもない凄まじさ。ヤル気なんか何一つ起きるもんかってのっ」
「……それで近頃、見るからにムッサリして日日ソッコーで逃げ帰ってるわけかよ? おまえのクラス自体にセラフィムがいないのは幸いだけど、隣のクラスには、ミカエル級の炎滅力との評判で、女子どもから支持率を高めちまってる別当芽亜璃 がいるもんなぁ」
「別に、オレはまじめな帰宅部員ってだけ。キラキラの眷族だろうが隣の女子まで知るもんか、て言うか、オレを観察してんじゃねぇってのっ」
「てか、おまえと一緒に火ダルマなんか御免だね。俺も最近知ったんだが、おまえ、ウチのS研の一部から焼き討ちを仕掛けられてたんだぞ」
「S研? ってそれ、絶対にいかがわしい集まりだろ」
「やっぱな。知らぬが仏もはなはだしいが、まぁハズレちゃいない。SNS研究会のことで、セラフィムの三人が入って桜嶺は着着と裏から征服されつつあるカンジだ。想像してたのとは違っても、俺が予測したとおり、セラフィムが学年ばかりか校内の流れと趨勢 をつくってる」
「裏へ廻ってのステルス戦法は十八番 だろうからな」
「そうらしいんだよどうも。おまえのことも、無論あどめもなく焚きつけて、煽っていたのは別当芽亜璃で、炎上しきらなかったのは、凡凡すぎるおまえからは可燃性のネタが出てこないっていう、スッカスカさに救われただけだなきっと」
訝 りが、はっきり顔にまで出た崎陽は、澤部と肩をしっかり並べて訴える。
「どしてオレが、そんな天使どもの魔女裁判で火炙 りにされなくちゃならない? 一体何をしたってんだよっ」
「そう、そうだっ。大体おまえが今まで完無視してくれたもんだから、いい加減オレだけで行くしかなくなったんじゃねぇか」
「ヨッシャ助かり~。意図は違えど、功を奏したな完無視は。俺ってば、身のほどをしっかり弁えてるからなぁ」
「何がヨッシャだ、ったく……」
「じゃぁ拡散してた昆スタンツェ発信の情報には、おまえとの仲を勘繰るような意味なんかなかったわけかよ?」
「ねぇよ全く。て言うか一体何が拡散してたんだ?」
「てかまぁ、きゃぴついたTシャツくらいは可愛いもんだが、あんなトコで茶ぁしたり晩メシ喰ってりゃ、三万近くは吹っ飛ぶよな軽く。おまえが無知なだけでしかないね」
「……晩メシは、奢ってもらった。あのコのフォロワーを自称するオヤジに。何かのプロデューサーらしい、Pちゃん呼ばわりされたから。一休みに入ったカフェってヤツも行きつけみたいでさ、謎のスイーツも、花のニオイがするコーヒーとかも店長の奢りだったし」
崎陽は謎としか言いようがないスイーツの
「なんだかなぁ……」
「第一、原蓿までは別のフォロワーがブタピンクのマセラティで送ってくれて、澁谷からの帰りはまた別のフォロワーが迎えに来た、金ぴかランボルギーニでっ。どいつもあのコの一つぶやきで、ひょいと来やがったカンジだ」
「なんだよ交通費まで浮いてるじゃん、ガチでデートと言えそうもねぇし」
「だから、あんなTシャツ一枚が税込みで二万超えだっ。レジで金額を宣告されてから、しばらく呼吸も思考も完全停止で流されるままだった。昼メシを加えて計三万弱、そりゃメシ代は自分の分も入れてだけどさ」
「……ったく、ビンボー臭プンプン丸めが。ま、実際ビンボだからしゃーねぇけど」
「だって。なんか味からしてよくわからん物が、日替わりランチなのに一人四三七八円って、クルマで一時間しか離れてねぇのに、原蓿や澁谷は日本かよガチで?」
「ん~……ま、よかったんじゃね? セラフのガイドで天国ツアーへ行ったと思えば安いかもだし、送迎付きでほぼ無料の話題店巡り。色ばかりかツーシーターじゃないスーパーカーなんて鬼ダサッ、俺もそんなコッテコテのお上り日帰り旅行してみて~」
「言ってろっ。天国沙汰もカネ次第、そんなのがあのコのキラキラの利福ってヤツだぞ。おまえだって
「……それで近頃、見るからにムッサリして日日ソッコーで逃げ帰ってるわけかよ? おまえのクラス自体にセラフィムがいないのは幸いだけど、隣のクラスには、ミカエル級の炎滅力との評判で、女子どもから支持率を高めちまってる
「別に、オレはまじめな帰宅部員ってだけ。キラキラの眷族だろうが隣の女子まで知るもんか、て言うか、オレを観察してんじゃねぇってのっ」
「てか、おまえと一緒に火ダルマなんか御免だね。俺も最近知ったんだが、おまえ、ウチのS研の一部から焼き討ちを仕掛けられてたんだぞ」
「S研? ってそれ、絶対にいかがわしい集まりだろ」
「やっぱな。知らぬが仏もはなはだしいが、まぁハズレちゃいない。SNS研究会のことで、セラフィムの三人が入って桜嶺は着着と裏から征服されつつあるカンジだ。想像してたのとは違っても、俺が予測したとおり、セラフィムが学年ばかりか校内の流れと
「裏へ廻ってのステルス戦法は
「そうらしいんだよどうも。おまえのことも、無論あどめもなく焚きつけて、煽っていたのは別当芽亜璃で、炎上しきらなかったのは、凡凡すぎるおまえからは可燃性のネタが出てこないっていう、スッカスカさに救われただけだなきっと」
「どしてオレが、そんな天使どもの魔女裁判で