053 ユニット桜嶺 全滅…… side A
文字数 1,805文字
「索りたくもないわっ、そんなことまで……」
「まぁ、わかってるって。椎座があの体格と勢いだけで勝ってきたんじゃないことくらい。この期に及んで言われても、もうビビることすらできないしさ……で、次はどう風が吹くのか、和加にも予測できるか?」
「それは、きっと無意味なの。怪物クンも、この風向きの変わり目で攻め出るでしょうから。けれど風の向け方毎の時間の長さは、完全にランダム設定が可能でしょ。ホームアドヴァンテージがある怪物クンでも、サポートしている女司令官でも、読みきれはしないわ」
「……てか、和加からしてムリってことなんじゃね?」
「そおよっ。だから崎陽は焦らずに、撃ち合うその
「って! それならもう、オレは、当てられる前にブチ当てるしかない、ヘタに動けばペイントの霧が付着して、濃くなっていくだけの釘づけ状態だってことなんじゃないかよっ」
「モォ~、だから焦らないの。むしろ、最初から撃ち合うと決めてくれていることを感謝しなくちゃ。ほかのメンバーたちと連係して攻められていたら、怪物クンから直接攻撃されることさえなかったかも知れないし」
輪がかかる和加の素気なさに、崎陽の気がまえも
「……ったく、そこまで言わなくても大丈夫だっての。椎座の姿を直接眼で見て撃ち合えるんなら、蛇も仏もなく、ただブチ当てることのみの鬼になるしかないんだし」
「そう? ならこれも敢えて言っておくけれど、たった今、ユニット桜嶺は全滅しちゃったわよっ。最後は、ほとんど嬲 り撃たれまくられての敗衄 ……」
「ガチかぁ……」
「対して、ユニットカイザーは、ピスタが倒した一人を含めて三人しか退場していない。怪物クンが崎陽を撃ちとったあと、ピスタの弄 り討 ちでこの一戦を締めくくるつもりのようね。そんな会話を交わしながら、早くもこっちを包囲しようという動きも見せている。セラフィムのマイクやカメラも役に立つみたい」
「チッ……まさかそこまで弱かったとはな、全国大会の常連じゃないのかよ? まぁ桜嶺的にはあと二戦するとは言え、この初っ端に澤部の奴が出てたぐらいだから、今年からは、戦力大幅ダウンの人材不足なのかも知れないけどさぁ」
「桜嶺的にも様子見なんでしょ。これだけユニットカイザーとは実力差があるのに、何を勿体ぶることがあるのかしらね? 崎陽が出ない二戦目以降には、怪物クンだって出る理由なんかないわ、結局、話のタネにもできず終いの手ぶらで帰るハメになるんじゃないの?」
「キッツ~。……その、急に、何に機嫌悪くするか予測不可なトコ、女子なんだよなぁ和加もつくづく」
「だから女子だもんっ。そもそもこの一戦を真剣勝負にしているのは、崎陽と怪物クンだけと言うことよ」
「あ~了解了解、オレまで様子見なんかしてちゃダメってことだな? って言うかっ、オレがこの風向きが変わるのを待っててどうすんだってことか!」
「そうね……」
素気ない口調に嵩 を懸 く和加には、崎陽も疑心が生じてしまう。
「……そうねって、どしてさっさと言ってくれないんだよ? なんか、さっきから調子がいつもと違うんじゃね? まさか、具合でも悪くなったのか?」
「確証が得られなくて、明言ができないだけよ。いつも言っているでしょ、わからないことはわからないって。ユニットカイザーと怪物クンの戦いぶりは、アクセスできた限りの映像から掌握しているのに、メイン・アームを持ち替えた今回の怪物クンはこれまでと違う。それもビミョ~な違いで、見切りがつけられないの」
「そりゃ、そうだろ」
「……そうだろって? どうしてそれで平気なのっ。わからないことだらけで全然理解できないわっ」
「……って、言われてもなぁ」
「だって、崎陽とピスタが、結局何を目論んでいるのか? 怪物クンがどう動き出そうとしているのか? ワタシには、ニオイも嗅ぎ分けられなければ、風向きが変わりそうな気配さえカンジ取れない。だから、いいとは言えないわ、調子も具合もっ」
「ここで出ちゃうかよ完璧主義の弊害がぁ……まあ、でっかりかまえてろって。オレも、今もう鼻がすっかり慣れちまって、嗅覚は何の役にも立たないし。当然、椎座の動きも風向きが変わる気配もさっぱり──」
崎陽は、ふり仰いだ鼻でまたクンクンと周囲のニオイを嗅ぎ込んでみるも、やはり何も判知できない。
「……何なの、また一体?」
「まぁ、わかってるって。椎座があの体格と勢いだけで勝ってきたんじゃないことくらい。この期に及んで言われても、もうビビることすらできないしさ……で、次はどう風が吹くのか、和加にも予測できるか?」
「それは、きっと無意味なの。怪物クンも、この風向きの変わり目で攻め出るでしょうから。けれど風の向け方毎の時間の長さは、完全にランダム設定が可能でしょ。ホームアドヴァンテージがある怪物クンでも、サポートしている女司令官でも、読みきれはしないわ」
「……てか、和加からしてムリってことなんじゃね?」
「そおよっ。だから崎陽は焦らずに、撃ち合うその
時つ風
を待てばいいの、鬼になって仕留めちゃえばいいだけっ」「って! それならもう、オレは、当てられる前にブチ当てるしかない、ヘタに動けばペイントの霧が付着して、濃くなっていくだけの釘づけ状態だってことなんじゃないかよっ」
「モォ~、だから焦らないの。むしろ、最初から撃ち合うと決めてくれていることを感謝しなくちゃ。ほかのメンバーたちと連係して攻められていたら、怪物クンから直接攻撃されることさえなかったかも知れないし」
輪がかかる和加の素気なさに、崎陽の気がまえも
はった
と整おる。「……ったく、そこまで言わなくても大丈夫だっての。椎座の姿を直接眼で見て撃ち合えるんなら、蛇も仏もなく、ただブチ当てることのみの鬼になるしかないんだし」
「そう? ならこれも敢えて言っておくけれど、たった今、ユニット桜嶺は全滅しちゃったわよっ。最後は、ほとんど
「ガチかぁ……」
「対して、ユニットカイザーは、ピスタが倒した一人を含めて三人しか退場していない。怪物クンが崎陽を撃ちとったあと、ピスタの
「チッ……まさかそこまで弱かったとはな、全国大会の常連じゃないのかよ? まぁ桜嶺的にはあと二戦するとは言え、この初っ端に澤部の奴が出てたぐらいだから、今年からは、戦力大幅ダウンの人材不足なのかも知れないけどさぁ」
「桜嶺的にも様子見なんでしょ。これだけユニットカイザーとは実力差があるのに、何を勿体ぶることがあるのかしらね? 崎陽が出ない二戦目以降には、怪物クンだって出る理由なんかないわ、結局、話のタネにもできず終いの手ぶらで帰るハメになるんじゃないの?」
「キッツ~。……その、急に、何に機嫌悪くするか予測不可なトコ、女子なんだよなぁ和加もつくづく」
「だから女子だもんっ。そもそもこの一戦を真剣勝負にしているのは、崎陽と怪物クンだけと言うことよ」
「あ~了解了解、オレまで様子見なんかしてちゃダメってことだな? って言うかっ、オレがこの風向きが変わるのを待っててどうすんだってことか!」
「そうね……」
素気ない口調に
「……そうねって、どしてさっさと言ってくれないんだよ? なんか、さっきから調子がいつもと違うんじゃね? まさか、具合でも悪くなったのか?」
「確証が得られなくて、明言ができないだけよ。いつも言っているでしょ、わからないことはわからないって。ユニットカイザーと怪物クンの戦いぶりは、アクセスできた限りの映像から掌握しているのに、メイン・アームを持ち替えた今回の怪物クンはこれまでと違う。それもビミョ~な違いで、見切りがつけられないの」
「そりゃ、そうだろ」
「……そうだろって? どうしてそれで平気なのっ。わからないことだらけで全然理解できないわっ」
「……って、言われてもなぁ」
「だって、崎陽とピスタが、結局何を目論んでいるのか? 怪物クンがどう動き出そうとしているのか? ワタシには、ニオイも嗅ぎ分けられなければ、風向きが変わりそうな気配さえカンジ取れない。だから、いいとは言えないわ、調子も具合もっ」
「ここで出ちゃうかよ完璧主義の弊害がぁ……まあ、でっかりかまえてろって。オレも、今もう鼻がすっかり慣れちまって、嗅覚は何の役にも立たないし。当然、椎座の動きも風向きが変わる気配もさっぱり──」
崎陽は、ふり仰いだ鼻でまたクンクンと周囲のニオイを嗅ぎ込んでみるも、やはり何も判知できない。
「……何なの、また一体?」