027 天才も身近に結構います…… side A
文字数 1,908文字
「フ~ン、崎陽敏房はまだ知らないわけだ? ならそれは、キミのヌースから聞くべきで、話そうとしないのなら、キミの聞き出し方がヘタってことだよ」
「……別に、単なる感心からのボヤきさ。ガチで知りたいわけじゃないってそんなこと。って言うか、キミとか初めて呼ばれたんで、薄らキモいななんか」
「私もだよ、見限ったガッコの名前を出されて、気分は好くないよ」
「悪い、なら言わないって二度と。オレももう黙るけど、その前に一つだけ答えてくれるか? オレの相棒がさっきから耳元でウルサいんで」
「いいよ、崎陽敏房は黙らなくても。まんまとその玄牟植を倒してもらったから」
「それだって。今日はそもそも、オレとこのピスタチオをバトらせようと仕組んでたってわけなのか? 現れたタイミングが良すぎたもんだから、確かめろってウザくてさぁ」
「アハハ、適言だよピスタチオは」
「なっ……」
言い止 して、プイッと顔を窓の外へと向け戻す玄牟からは、屈辱感を、もうじきセラフィムの住まいを知ることができる期待で、強引にねじ伏せようとする葛藤と相剋がまざまざとカンジられた。
それには、崎陽もバートリも軽く鼻まじろきをしてしまったほどの不憫さから、互いに寛容な言い繕いをせずにはいられない。
「オレのことは、崎陽の呼び捨てでいいんでチャラにしてくれって」
「私も、もう関係ないガッコのことさえ出さなければ、どう呼んでくれてもかまわないよ」
「あぁ、わかった。バートリとか言ったよな?」
「じゃぁ崎陽、質問に答えるけど、まぁ仕組んだとまでは言えないよ。二人が闘ってくれて、どちらかが倒れてくれたらラッキーと思っていた程度だよ」
「やっぱな。ピスタチオがこっちへ来る建前も、前前からつくってやってたわけか? 昆スタンツェがオレともつながるのを知って、今日みたいな好機が巡ってくる確率がそう低くないことやら、そうなった時点でオレたちをバトらせる手はずも、あらゆる可能性で計算済みかよ? ったく空恐ろしい脳ミソだっての、ガチで」
「まぁそうだよ。倒すべきオルターエゴゥの存在をニオわせれば、昆スタンツェの実在を肉眼で確かめずにはいられないという、ピスタチオの本音を抑えつける箍 は、容易くはずれてくれるだろうから」
「……ま、容易そうだよな」
「でも、毎週末のように、こっちへ来る大義名分を与えていたにすぎないよ。今日は昆スタンツェたちも、崎陽が登場する動画配信をしてくれたから、手はずというほどでもなかったよ」
「……あの場所を離れてノドの渇きを癒すには、バス通りに出るのが手っとり早いし、オレがバス通り沿いさえ歩いてれば、近くで彷徨くピスタチオの相棒に情報を流してぶつけるのは簡単ってか……」
「そ。実に簡単なことだよ」
「まさかなぁ。オレも、これまでの日常をチェックされてて、バス代をケチって駅まで最短ルートのバス通りを帰ることまで計算尽くだったとか?」
「私、こう見えてか弱いから。ヴァイオレンスの速戦即決より、シコシコと周密にしていくプロット・アンド・スキームが向いているだけだよ」
「へ~。か弱いのかバートリは? なんか惜しいな、って言うか勿体ないカンジがするって。オレの身長が一八〇をそれだけ超えてたら、箔がしっかりついて、モブダチからベロベロ無遠慮にナメられなくて済むだろうにさ」
「……よくわからないけど、時俗ハズレなおもしろい言われようだよ。ま、嫌いじゃぁない」
バートリは崎陽へふり返る。
「てか、やっぱ慣れないなぁ。運転席から、そんな思いきりよそ見をされちまうとさ」
その崎陽の返答みたくバートリは、ほいやりと同年の女子らしい笑顔を見せた。
「でさ。崎陽にも、これを貸しということにして提案があるんだけれど、聞いてくれる?」
「……それ、オレにも組もうって話なら遠慮しとく。連 んだが最後、あんたの掌の上で全く気づけもせずに踊らされぱなしって気がするんで。この借りは、オレからあんたへは、絶対にバトりをフッかけないことでチャラにしてくれね?」
「そんなに警戒することないよ、私も暴力は完全拒否だし。でもそれで充分、私の要望は聞き入れてもらえているから。崎陽のことはまあ、柔順全面な顔つきの割りに賢明なんだと認識しておくよ」
「やっぱ頭まわりすぎだって、柔順全面なだけ。オレは痛いのは嫌、嫌なことは避けたい。危険性があるなら、全部避けとけば楽だろ?」
「賢明ではなく明快だった? けど、それでは楽でも愉しくないよ。リスクなら何にだってあるし、大したことはないと読み間違えて、痛い目に遭う可能性も少なくないよ。避けまくったらすることがなくなる、だから私はヒマよりずっと痛い方が好き、憶えておきなよ」
「……別に、単なる感心からのボヤきさ。ガチで知りたいわけじゃないってそんなこと。って言うか、キミとか初めて呼ばれたんで、薄らキモいななんか」
「私もだよ、見限ったガッコの名前を出されて、気分は好くないよ」
「悪い、なら言わないって二度と。オレももう黙るけど、その前に一つだけ答えてくれるか? オレの相棒がさっきから耳元でウルサいんで」
「いいよ、崎陽敏房は黙らなくても。まんまとその玄牟植を倒してもらったから」
「それだって。今日はそもそも、オレとこのピスタチオをバトらせようと仕組んでたってわけなのか? 現れたタイミングが良すぎたもんだから、確かめろってウザくてさぁ」
「アハハ、適言だよピスタチオは」
「なっ……」
言い
それには、崎陽もバートリも軽く鼻まじろきをしてしまったほどの不憫さから、互いに寛容な言い繕いをせずにはいられない。
「オレのことは、崎陽の呼び捨てでいいんでチャラにしてくれって」
「私も、もう関係ないガッコのことさえ出さなければ、どう呼んでくれてもかまわないよ」
「あぁ、わかった。バートリとか言ったよな?」
「じゃぁ崎陽、質問に答えるけど、まぁ仕組んだとまでは言えないよ。二人が闘ってくれて、どちらかが倒れてくれたらラッキーと思っていた程度だよ」
「やっぱな。ピスタチオがこっちへ来る建前も、前前からつくってやってたわけか? 昆スタンツェがオレともつながるのを知って、今日みたいな好機が巡ってくる確率がそう低くないことやら、そうなった時点でオレたちをバトらせる手はずも、あらゆる可能性で計算済みかよ? ったく空恐ろしい脳ミソだっての、ガチで」
「まぁそうだよ。倒すべきオルターエゴゥの存在をニオわせれば、昆スタンツェの実在を肉眼で確かめずにはいられないという、ピスタチオの本音を抑えつける
「……ま、容易そうだよな」
「でも、毎週末のように、こっちへ来る大義名分を与えていたにすぎないよ。今日は昆スタンツェたちも、崎陽が登場する動画配信をしてくれたから、手はずというほどでもなかったよ」
「……あの場所を離れてノドの渇きを癒すには、バス通りに出るのが手っとり早いし、オレがバス通り沿いさえ歩いてれば、近くで彷徨くピスタチオの相棒に情報を流してぶつけるのは簡単ってか……」
「そ。実に簡単なことだよ」
「まさかなぁ。オレも、これまでの日常をチェックされてて、バス代をケチって駅まで最短ルートのバス通りを帰ることまで計算尽くだったとか?」
「私、こう見えてか弱いから。ヴァイオレンスの速戦即決より、シコシコと周密にしていくプロット・アンド・スキームが向いているだけだよ」
「へ~。か弱いのかバートリは? なんか惜しいな、って言うか勿体ないカンジがするって。オレの身長が一八〇をそれだけ超えてたら、箔がしっかりついて、モブダチからベロベロ無遠慮にナメられなくて済むだろうにさ」
「……よくわからないけど、時俗ハズレなおもしろい言われようだよ。ま、嫌いじゃぁない」
バートリは崎陽へふり返る。
「てか、やっぱ慣れないなぁ。運転席から、そんな思いきりよそ見をされちまうとさ」
その崎陽の返答みたくバートリは、ほいやりと同年の女子らしい笑顔を見せた。
「でさ。崎陽にも、これを貸しということにして提案があるんだけれど、聞いてくれる?」
「……それ、オレにも組もうって話なら遠慮しとく。
「そんなに警戒することないよ、私も暴力は完全拒否だし。でもそれで充分、私の要望は聞き入れてもらえているから。崎陽のことはまあ、柔順全面な顔つきの割りに賢明なんだと認識しておくよ」
「やっぱ頭まわりすぎだって、柔順全面なだけ。オレは痛いのは嫌、嫌なことは避けたい。危険性があるなら、全部避けとけば楽だろ?」
「賢明ではなく明快だった? けど、それでは楽でも愉しくないよ。リスクなら何にだってあるし、大したことはないと読み間違えて、痛い目に遭う可能性も少なくないよ。避けまくったらすることがなくなる、だから私はヒマよりずっと痛い方が好き、憶えておきなよ」