052 side B
文字数 1,875文字
「……ガチかよ? ペイントを弾丸として撃つんじゃなく、風に乗るように噴射して霧吹き染めみたく色を付けちまおうってか? そんなのでもヒットの判定をされるのかよっ」
「されるんでしょうね。ペイントが付着したことに変わりはないんだから、色さえチェッカーの目で確認できる濃さにまでなれば」
「オッソロし~……なんか鬼道みたいで、司令官ってイメージとは別のヤバさをそこはかとなくカンジるよなぁ。真っ向微塵に撃ち砕くのが基本の椎座が、思いつくようなことじゃないって」
そこで崎陽も思い起されての反撃、三発を高高と連射する。
やはりそれらラウンダルにしても鬼道で投じた環石 のよう。ハーフパイプのスロープを逆戻るカンジで、大気をえぐりながら落ちて行く──。
「チョット~、ハズレ方が大きくなっているわよっ」
「てか。それ以前にフィフは何て物をつくって椎座に渡しやがったんだよ? ホントに味方してくれてるんだろうなっ」
「味方はするけれど、勝つかはワタシたち次第ということに決まっているでしょ。崎陽は勝たせてもらいたいわけ? 勝たせてもらえる相手なの怪物クンは?」
「……勿論、そう言うことならいいんだけどさ」
「つまり、さっきからの崎陽の攻撃が、怪物クンたちを驚かせたのよかなり。おそらく、崎陽とピスタに騒いでもらえればラッキーと言うくらいのやり返し。風向きが変われば続けられない手なんだから、狼狽えることなどないわ」
「……狼狽えちゃいないって。でもホント、臭ってきてはいるんだよなっ、今はもう嗅ぎ取れるくらいに。早くピスタに教えてやってくれ、あいつは椎座に近づこうとしているはずだし、睡眠不足だとニオイにも鈍感になるんじゃね?」
「もう知らせたわ。鈍感も何もニブすぎる反応だったし、既に手遅れかも」
「早っ。いつの間に? って言うか、ガチで手遅れなのか?」
「スーツの表面に、広い範囲で薄っすらと色がわからない量が付着したとしても、動いてスーツに深いシワが寄れば、そこにペイントが集まって色が濃くなるわ。直接当たったように見えちゃうはず。霧状のペイントだから急速に蒸発しながら付着していくけれど、そのスピードよりも、滞留時間が勝る量に覆われた途端に敗退だわ」
「ならせめて、じかに風上へは身を晒さないようにして、じっとしてろと言ってくれよ。あいつにいなくなられたら、作戦と言うのもビミョ~な作戦がオジャンだ」
「言ってあるに決まっているわよ。今のところピスタもじっとしてくれているようだし、風上では一応丸太が壁にもなっているから、この二、三分ほどの間にヒット判定をされなければ、やり過ごせたことになるでしょ」
「……あっそ」
あまりにも敏速すぎる和加には、崎陽もさすがに訝りを禁じ得なかった。
だが、ツッコんでみても気伏できずに、逆に和加からただ叱り説かれるだけの損になることは目に見えている。
そのため崎陽は、そんなことなど噯気 にも出さないことだけを徹底する。
「ただ待つということも大切なの、ガマンしてよね崎陽」
「あぁでも、もしかして、椎座にはここの風向きの変わり方がわかってるんじゃないのか? ランダムも数学的にはパターンの一つにすぎないらしいし、大体、ワザワザここに風を吹かせる必要があるとも思えないしさ」
「必要性はあるのよ。あれだけ観戦席が埋まっているんだから、熱を籠らせないためとか、何より崎陽と怪物クンが撃つのは風に影響される実体弾だもの。リアルさを求めるCUCルールでのトレーニングが、リアルにできちゃうってことなんでしょ」
「ったく。どこまでも仰仰しいたら……」
「それに当然、不自然も身贔屓もなく風上と風下をつくりだすにしても、六箇所の送風機の組み合わせでは、パターン化するに決まっているわ」
「じゃあ、やっぱ椎座は今の風向きから判断して、ペイントがしっかり付着する霧になってくれる位置まで、移動してたってことなんじゃね?」
「当然でしょ。そもそもサヴァイヴァルゲームというのは、白兵戦を模した演習なのっ」
「……ここまできて、そもそも話かよぉ」
「なので、実戦でも通用する能力がなければ勝ち残れない、怪物クンの強さも、リアルな兵士としての有能さに裏づけられたモノだってこと。撃ち合わずに倒すのが上策だし、撃ち合うにしても万全を整えてのことだから、未だヒットされてもいないんじゃないのよ」
呆れ入った素気ない和加の言いようには、崎陽の錯愕も一気にうち湿ってしまう。
「……わーったよっ。仰仰しいのも結局のトコ、ガチでヤバいオトナの理由、てか、この国の事情でもあるってこったろ?」
「されるんでしょうね。ペイントが付着したことに変わりはないんだから、色さえチェッカーの目で確認できる濃さにまでなれば」
「オッソロし~……なんか鬼道みたいで、司令官ってイメージとは別のヤバさをそこはかとなくカンジるよなぁ。真っ向微塵に撃ち砕くのが基本の椎座が、思いつくようなことじゃないって」
そこで崎陽も思い起されての反撃、三発を高高と連射する。
やはりそれらラウンダルにしても鬼道で投じた
「チョット~、ハズレ方が大きくなっているわよっ」
「てか。それ以前にフィフは何て物をつくって椎座に渡しやがったんだよ? ホントに味方してくれてるんだろうなっ」
「味方はするけれど、勝つかはワタシたち次第ということに決まっているでしょ。崎陽は勝たせてもらいたいわけ? 勝たせてもらえる相手なの怪物クンは?」
「……勿論、そう言うことならいいんだけどさ」
「つまり、さっきからの崎陽の攻撃が、怪物クンたちを驚かせたのよかなり。おそらく、崎陽とピスタに騒いでもらえればラッキーと言うくらいのやり返し。風向きが変われば続けられない手なんだから、狼狽えることなどないわ」
「……狼狽えちゃいないって。でもホント、臭ってきてはいるんだよなっ、今はもう嗅ぎ取れるくらいに。早くピスタに教えてやってくれ、あいつは椎座に近づこうとしているはずだし、睡眠不足だとニオイにも鈍感になるんじゃね?」
「もう知らせたわ。鈍感も何もニブすぎる反応だったし、既に手遅れかも」
「早っ。いつの間に? って言うか、ガチで手遅れなのか?」
「スーツの表面に、広い範囲で薄っすらと色がわからない量が付着したとしても、動いてスーツに深いシワが寄れば、そこにペイントが集まって色が濃くなるわ。直接当たったように見えちゃうはず。霧状のペイントだから急速に蒸発しながら付着していくけれど、そのスピードよりも、滞留時間が勝る量に覆われた途端に敗退だわ」
「ならせめて、じかに風上へは身を晒さないようにして、じっとしてろと言ってくれよ。あいつにいなくなられたら、作戦と言うのもビミョ~な作戦がオジャンだ」
「言ってあるに決まっているわよ。今のところピスタもじっとしてくれているようだし、風上では一応丸太が壁にもなっているから、この二、三分ほどの間にヒット判定をされなければ、やり過ごせたことになるでしょ」
「……あっそ」
あまりにも敏速すぎる和加には、崎陽もさすがに訝りを禁じ得なかった。
だが、ツッコんでみても気伏できずに、逆に和加からただ叱り説かれるだけの損になることは目に見えている。
そのため崎陽は、そんなことなど
「ただ待つということも大切なの、ガマンしてよね崎陽」
「あぁでも、もしかして、椎座にはここの風向きの変わり方がわかってるんじゃないのか? ランダムも数学的にはパターンの一つにすぎないらしいし、大体、ワザワザここに風を吹かせる必要があるとも思えないしさ」
「必要性はあるのよ。あれだけ観戦席が埋まっているんだから、熱を籠らせないためとか、何より崎陽と怪物クンが撃つのは風に影響される実体弾だもの。リアルさを求めるCUCルールでのトレーニングが、リアルにできちゃうってことなんでしょ」
「ったく。どこまでも仰仰しいたら……」
「それに当然、不自然も身贔屓もなく風上と風下をつくりだすにしても、六箇所の送風機の組み合わせでは、パターン化するに決まっているわ」
「じゃあ、やっぱ椎座は今の風向きから判断して、ペイントがしっかり付着する霧になってくれる位置まで、移動してたってことなんじゃね?」
「当然でしょ。そもそもサヴァイヴァルゲームというのは、白兵戦を模した演習なのっ」
「……ここまできて、そもそも話かよぉ」
「なので、実戦でも通用する能力がなければ勝ち残れない、怪物クンの強さも、リアルな兵士としての有能さに裏づけられたモノだってこと。撃ち合わずに倒すのが上策だし、撃ち合うにしても万全を整えてのことだから、未だヒットされてもいないんじゃないのよ」
呆れ入った素気ない和加の言いようには、崎陽の錯愕も一気にうち湿ってしまう。
「……わーったよっ。仰仰しいのも結局のトコ、ガチでヤバいオトナの理由、てか、この国の事情でもあるってこったろ?」