006                         side B

文字数 1,280文字

「……でも、そんな連中がどうして桜嶺なんだろ、フツウなら私立のお嬢様ガッコへ行くんじゃね?」

「そう言うメンバーもいるわね。セラフィムらしき存在は現在七名確認できる。日本国内には西区に在住する四名で、一人が都内の女子校へ通っているけれど、崎陽と同じ桜嶺高校へ進んだ三人は、制服のカワユさと、両親のどちらかの母校だからという理由なのかも?」

「確かに、駅向こうや西隣の市の一帯はDE関係者とその家族のための町みたいなもんだし、近い西高や桜嶺の卒業生は多そうだよな」

「事実、そう言うことのようね」

「……しっかし、ガチで何でも、たちどころにわかっちまうみたいだなぁ。できたらオレやウチの恥は黙っててくれるとありがたいんだけど、かと言って、あんたとつながることを条件に脅すんなら、ど~ぞ御自由にだし」

 口調に表しきれない崎陽の開きなおる気がまえが、イスの上で胡坐(あぐら)をかくという態度として出る。

「だから和加って呼んでよ~、しょんぼりしてきちゃうでしょ。脅したりも崎陽が嫌がることもする気はないし、崎陽こそワタシを助けてくれない? こんなでも、もはや袖擦り合う以上の縁だと思うんだけれど。縁に連るれば唐の物を喰う、とも言うじゃないのよ」

「……そんな、日本人離れってか、リアル離れしちまってる顔で言われてもなぁ」

「ちなみにね、崎陽が好きなお煎餅もうどんも唐から伝わった食べ物なのよぉ」

「……別に、大好物はほかにあるし、空きっ腹を祖母ちゃんに訴えると、それくらいしか出ないだけだし。ったく、そんなことまでどこから索ってくるんだか?」

「大好物は唐揚げ、ナポリタン、それとタケノコのキンピラねっ。ケチャップの主原料になるトマトは唐柿、タケノコも唐玉とも言うこと知っていたぁ? 当然キンピラだって唐辛子が美味しさの決め手だしぃ」

「……悪い、何言ってるのかわからんし、そこまでだと笑えもしないって」

「だから崎陽~、ワタシを活用してちょうだいな。唐への投げ銭、なんてことには絶対にしないからぁ」

「……オレの吐く戯れ言はそんなんじゃないと思うけど、ま、そう言う返しも嫌いじゃないかもだ」

「そぉ? ならよかったぁ」

「……とりあえずオレのことはもういいんで、あんたのことを教えてくれない?」

「それは勿論いいけれどぉ、あんたじゃなく和加ね和加っ。人って、どう呼ぶか呼ばれるかで関係性に大きく影響しちゃうんだから。これ以上あんた呼ばわりをひっぱり続けたら、どんどんヤサグレていっちゃうかもよワタシ~」

「へー。それもオモロそうだけど、了解したって和加……ん~。やっぱ気恥じぃし違和感もなんか強いんだよな、女子の名前を、それも呼び捨てで呼ぶ慣れがなくて」

「ならガンバッ。とりあえず女子相手のソーシャビリティーを上げていきましょ。世間からはボチボチと知られているのに世間知らずな世間離れアイドルには、もう二度とふり廻されないようにねっ。若気の誤り対策は、和加にお任せあ~れ」 

「……

った、と駄洒落ておこうかな。まんまと(わかつ)られてる気がしちまうけどさ……」

 納め顔で応じる崎陽だが、存外、興に入りだしていた。
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登場人物紹介

当作は ”ワケあり” ということから、情報ナシにてお愉しみいただければと……

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