036 side B
文字数 1,551文字
「てか勘違いしてんなよっ、おまえもウチの一員なんだからな今日だけはっ」
「今日も何も、こっちから願い下げなんで。ほかに用がないなら、仲間んトコ戻って気取り合ってろよ。ど~にか、押し込められてる気が散っちまうから」
「言った傍からクソほざきやがって……てか、おまえのパチンコ二挺は、もうOKが出てるんだぞ。俺も早いトコ、マイ・アームズを返してもらわないと落ち着けやしねぇってのっ」
「オォ~。ちゃんと人体を害することなく、当たれば砕けて、着色後には数分でペイントが蒸発してキレイに消えてくれるんだ? まぁ、疑える余裕なんてなかったんだけどさ」
崎陽のこの発言には、和加が口を出さずにいられるはずもない。
突発させた和加のどくれ言が、崎陽の頭蓋骨をクドクドしく響動 もすが、それがまるで聞こえていない澤部には、崎陽が晒しだす臆面がただ苛立たしい。
「みたいだなっ。フザケた物をマイナーな上場企業のラボなんかから入手しやがって、フザケすぎにもほどがあるぜっ……」
「てかそもそも、こんな御大層なドンパチごっこ自体がフザケてね?」
「はんっ。あのアメンボ女子までが胡散クサい装備をもち込んで来て、なんかややこしいことになってんだ。オマケに、恥も外聞もなくセラフィムに尾ッポふりまくってるイヌ野郎を、ユニット桜嶺の一員として出せとまでゴネくっていやがるらしい」
「アメンボとか言ってやるなよフィフのことは。あいつ、たぶん天才ってヤツだぜ。話がつかないのは、聞いてる目上どもが凡人だからだきっと」
「だからほざくなっ。てか、可愛さが欠片もなく整いすぎてイケメンにすら見える美人のクセして、とにかくデカすぎ、手足長すぎだあの女子は。確かに凡人なはずもないだろうが、凡人にはどうすることもできねぇ厄 いの方の天災だ絶対っ」
「ほざくねぇおまえも。けど、美人って言っとけば激怒らないんじゃね?」
「テメェ……チクったら、電ガスAR15でアサルからなっ」
「まぁ貸しにしといてやるけどさ、って言うか澤部、チョット見ない内に身長縮んでね? それで自分よっかデカいフィフもピスタも腹立たしいんだろ」
「うぐぅ……俺が伸び悩んでるのに、まだ伸びていやがんのかテメェは!」
「え? そうなのかぁ。惜し~、来年の今頃なら、椎座って怪物の如己男 を堂堂張れたかも知れないってのにさ」
「この減らずグソが、今すぐ地獄へ殞 ちやがれっ」
「そいつは俺も惜しい気がするッスけど、何ッスかそのモコロオって?」
崎陽と澤部の卑俗なほざき合いに、その頭上からよく通るヘヴィーなバスヴォイスで割り込んできたのは、まだ挨拶すらも交わしていない、容貌魁偉さを崎陽が実感なく遠目にしていただけの椎座だった。
崎陽は弾かれたように、澤部は怖ず怖ずと、見上げてそれを認識した瞬間に身を凍らせる。
その間へ、観客席から三メートルの高さなど造作もなく下り立った椎座は、二次元で見たインパクトをはるかに超えた重厚感。
そしてまだ中学生であることも、心腹にストンと落ちる若やかさ。
椎座の方は、人懐こい戯笑を浮かべた顔を、崎陽の目線に合わせるために武張って強靭そうな背を丸め、余裕もやり慣れている感もたっぷりに、ウインクまでして見せた。
それには崎陽も、前後に暮れ続けてなどいられない。
「……『万葉集』に出てくる語句で、
椎座は一瞬円くした目をパチクリと細めていく。なんだかヤケに嬉しそう。
「へ~、えっと何の話でしたっけ? てか、パチンコなんか使う人だから、もっとバーバラスだと思ってたッス」
「何それ? 床屋なら、オレもバトったあと行くってのっ」
過敏になっているせいもあり、反射的に応酬に出る崎陽だった──。
「今日も何も、こっちから願い下げなんで。ほかに用がないなら、仲間んトコ戻って気取り合ってろよ。ど~にか、押し込められてる気が散っちまうから」
「言った傍からクソほざきやがって……てか、おまえのパチンコ二挺は、もうOKが出てるんだぞ。俺も早いトコ、マイ・アームズを返してもらわないと落ち着けやしねぇってのっ」
「オォ~。ちゃんと人体を害することなく、当たれば砕けて、着色後には数分でペイントが蒸発してキレイに消えてくれるんだ? まぁ、疑える余裕なんてなかったんだけどさ」
崎陽のこの発言には、和加が口を出さずにいられるはずもない。
突発させた和加のどくれ言が、崎陽の頭蓋骨をクドクドしく
「みたいだなっ。フザケた物をマイナーな上場企業のラボなんかから入手しやがって、フザケすぎにもほどがあるぜっ……」
「てかそもそも、こんな御大層なドンパチごっこ自体がフザケてね?」
「はんっ。あのアメンボ女子までが胡散クサい装備をもち込んで来て、なんかややこしいことになってんだ。オマケに、恥も外聞もなくセラフィムに尾ッポふりまくってるイヌ野郎を、ユニット桜嶺の一員として出せとまでゴネくっていやがるらしい」
「アメンボとか言ってやるなよフィフのことは。あいつ、たぶん天才ってヤツだぜ。話がつかないのは、聞いてる目上どもが凡人だからだきっと」
「だからほざくなっ。てか、可愛さが欠片もなく整いすぎてイケメンにすら見える美人のクセして、とにかくデカすぎ、手足長すぎだあの女子は。確かに凡人なはずもないだろうが、凡人にはどうすることもできねぇ
「ほざくねぇおまえも。けど、美人って言っとけば激怒らないんじゃね?」
「テメェ……チクったら、電ガスAR15でアサルからなっ」
「まぁ貸しにしといてやるけどさ、って言うか澤部、チョット見ない内に身長縮んでね? それで自分よっかデカいフィフもピスタも腹立たしいんだろ」
「うぐぅ……俺が伸び悩んでるのに、まだ伸びていやがんのかテメェは!」
「え? そうなのかぁ。惜し~、来年の今頃なら、椎座って怪物の
「この減らずグソが、今すぐ地獄へ
「そいつは俺も惜しい気がするッスけど、何ッスかそのモコロオって?」
崎陽と澤部の卑俗なほざき合いに、その頭上からよく通るヘヴィーなバスヴォイスで割り込んできたのは、まだ挨拶すらも交わしていない、容貌魁偉さを崎陽が実感なく遠目にしていただけの椎座だった。
崎陽は弾かれたように、澤部は怖ず怖ずと、見上げてそれを認識した瞬間に身を凍らせる。
その間へ、観客席から三メートルの高さなど造作もなく下り立った椎座は、二次元で見たインパクトをはるかに超えた重厚感。
そしてまだ中学生であることも、心腹にストンと落ちる若やかさ。
椎座の方は、人懐こい戯笑を浮かべた顔を、崎陽の目線に合わせるために武張って強靭そうな背を丸め、余裕もやり慣れている感もたっぷりに、ウインクまでして見せた。
それには崎陽も、前後に暮れ続けてなどいられない。
「……『万葉集』に出てくる語句で、
相手になれる男
って意味。ちょうど来年の今頃には習うんじゃね? 教科書が同じならな」椎座は一瞬円くした目をパチクリと細めていく。なんだかヤケに嬉しそう。
「へ~、えっと何の話でしたっけ? てか、パチンコなんか使う人だから、もっとバーバラスだと思ってたッス」
「何それ? 床屋なら、オレもバトったあと行くってのっ」
過敏になっているせいもあり、反射的に応酬に出る崎陽だった──。