038 side B
文字数 1,684文字
「俺も詳しくないッスが、ヌース間で争うルールは一緒でも、ヌースそれぞれに能力差と言える得意‐不得意がありそうッス」
「ん? あ~、それは昨日わかった、なんとなく」
「そちらさんみたく普段使いしてて何の支障もないのは、情報戦に強いヌースなんだと思うッスけど、俺のヌースだと、とにかく命令に従えってカンジなんで、基本無視ッス。こっちから尋ねた答えを聞くだけッスね」
「なるほどね……あぁ、知ってるだろうけどオレは崎陽、あんたを怪物呼ばわりしたのは褒め言葉だけど、それでも気に障るなら、オレのことは有財餓鬼 呼ばわりでかまわないし。とにかく、こうして話が通じる怪物クンだとわかっただけでも物凄く楽になったって」
「ウッス。まぁこっちも、言うまでもなくわかってるッスよね? 倒した方がSIMを獲得できる。ユニットの勝敗じゃなく、あくまで俺たち二人の勝負ッス。信じてるッスから、ほかの誰かにやられるなんてことは、考えなくていいッスよね?」
「そりゃどうも、よくよく承知してるって。いや~ブッチャケ、あんたガチでモテまくるタイプだよなぁ。わかるってなんか、育ちのスクスクさが目に痛いくらいでさ」
椎座は、瞳のみをわずかに曇らせる。
「そッスかぁ? でもブッチャケ、実質的には全然モテないッスよ、ただ騒がれるだけで。キャ~キャ~近づいて来れば、力士やプロレスラーも同然にバシバシ容赦なくはたかれるし、こっちから近づけばキャ~キャ~逃げるし」
「あぁ~、なんかわかるかも。スケール感なんだろなぁ……」
「ッス。あまりにスクスク育ちすぎて、このガタイじゃ、カワイコちゃんはガチの相手なんかしてくれないッス。俺も、できたカノジョがチワワだのトイプーだのと囃されるのはツラすぎッスから」
「またまた~。でも、そう言や今のところキャ~キャ~がないんじゃね? 物凄いアウェーの洗礼まで想像して、ここへ入るまでビビりこいてたんだけど」
「ウッス。だろうと思って、観戦目的の客は、エントランス前で行列してもらってるッス」
「行列かぁ……手慣れたもんってわけ?」
「いつもなら、そのまま観客席へ誘導し終えてからTTFすれば混乱はないんッスけど、今日はセラフィム目当ての客も多くて。整理係をしてくれてるパイセンたちに、余計な手間がかかってるみたいッスね。なので、物凄いのはこれからッスが、それもあっと言う間ッス」
「ったくウザい堕天使どもが……でもまぁ心づかいはどうもだ。オレもまだまだギャーギャー言われていたいんで、怯まず鬼ガチでいかせてもらうって」
「よくわからないッスけど、俺もPGのつもりはないッス。でも、ルール縛りがないと、それこそ怪物が一暴れした惨状になりかねないッスから」
「……確認させてもらっとくけど、あんたが着込むプロテクター類を除いたディテクタースーツに、チョットでもペイントすればオレが倒したことになるんだよな?」
「いえ、違うッス。このあとに説明があるッスけど、今日はCUCルールでもメットを被るリアルゲームなんで、致命傷と判定される胴体や首にヒットさせないとダメッス。脚へのヒットは歩く‐走るの移動が禁止になるだけ、腕は両方ヒットしない限り銃器を無事な手に持ち替えてバトれるッス」
「……てか、そんなルールがホントにきちんと守られるのか?」
「当然ッス。きちんと一人一人にチェッカーがつくんで、ズルはムリッス」
「ガチかぁ……けどその急所部分なら、チョットのヒットでもいいわけ?」
「そうッスね。なら俺も断わっておくッスけど、俺が倒した時には、そんなチョットじゃ済まないかも知れないッスから、とりあえず先に詫び入れに来たわけッス」
「……それはそれは御丁寧に、とか言っちゃったりして」
「こちらこそッスよ。ゲーム中のケガは最初にサインした書類どおり、治療費だけでなく入院からリハビリ、死亡時には二〇〇〇万までが保険で出ますけど、お互い怨みっコなしの自己責任でいいッスよね?」
その、やはり言い慣れた椎座の口ぶりには、崎陽の中の奥底で、まだ闘志の炎と燃え盛るかはわからない鬼火がフッツと点り、ゆららと彷徨きだしていた──。
「ん? あ~、それは昨日わかった、なんとなく」
「そちらさんみたく普段使いしてて何の支障もないのは、情報戦に強いヌースなんだと思うッスけど、俺のヌースだと、とにかく命令に従えってカンジなんで、基本無視ッス。こっちから尋ねた答えを聞くだけッスね」
「なるほどね……あぁ、知ってるだろうけどオレは崎陽、あんたを怪物呼ばわりしたのは褒め言葉だけど、それでも気に障るなら、オレのことは
「ウッス。まぁこっちも、言うまでもなくわかってるッスよね? 倒した方がSIMを獲得できる。ユニットの勝敗じゃなく、あくまで俺たち二人の勝負ッス。信じてるッスから、ほかの誰かにやられるなんてことは、考えなくていいッスよね?」
「そりゃどうも、よくよく承知してるって。いや~ブッチャケ、あんたガチでモテまくるタイプだよなぁ。わかるってなんか、育ちのスクスクさが目に痛いくらいでさ」
椎座は、瞳のみをわずかに曇らせる。
「そッスかぁ? でもブッチャケ、実質的には全然モテないッスよ、ただ騒がれるだけで。キャ~キャ~近づいて来れば、力士やプロレスラーも同然にバシバシ容赦なくはたかれるし、こっちから近づけばキャ~キャ~逃げるし」
「あぁ~、なんかわかるかも。スケール感なんだろなぁ……」
「ッス。あまりにスクスク育ちすぎて、このガタイじゃ、カワイコちゃんはガチの相手なんかしてくれないッス。俺も、できたカノジョがチワワだのトイプーだのと囃されるのはツラすぎッスから」
「またまた~。でも、そう言や今のところキャ~キャ~がないんじゃね? 物凄いアウェーの洗礼まで想像して、ここへ入るまでビビりこいてたんだけど」
「ウッス。だろうと思って、観戦目的の客は、エントランス前で行列してもらってるッス」
「行列かぁ……手慣れたもんってわけ?」
「いつもなら、そのまま観客席へ誘導し終えてからTTFすれば混乱はないんッスけど、今日はセラフィム目当ての客も多くて。整理係をしてくれてるパイセンたちに、余計な手間がかかってるみたいッスね。なので、物凄いのはこれからッスが、それもあっと言う間ッス」
「ったくウザい堕天使どもが……でもまぁ心づかいはどうもだ。オレもまだまだギャーギャー言われていたいんで、怯まず鬼ガチでいかせてもらうって」
「よくわからないッスけど、俺もPGのつもりはないッス。でも、ルール縛りがないと、それこそ怪物が一暴れした惨状になりかねないッスから」
「……確認させてもらっとくけど、あんたが着込むプロテクター類を除いたディテクタースーツに、チョットでもペイントすればオレが倒したことになるんだよな?」
「いえ、違うッス。このあとに説明があるッスけど、今日はCUCルールでもメットを被るリアルゲームなんで、致命傷と判定される胴体や首にヒットさせないとダメッス。脚へのヒットは歩く‐走るの移動が禁止になるだけ、腕は両方ヒットしない限り銃器を無事な手に持ち替えてバトれるッス」
「……てか、そんなルールがホントにきちんと守られるのか?」
「当然ッス。きちんと一人一人にチェッカーがつくんで、ズルはムリッス」
「ガチかぁ……けどその急所部分なら、チョットのヒットでもいいわけ?」
「そうッスね。なら俺も断わっておくッスけど、俺が倒した時には、そんなチョットじゃ済まないかも知れないッスから、とりあえず先に詫び入れに来たわけッス」
「……それはそれは御丁寧に、とか言っちゃったりして」
「こちらこそッスよ。ゲーム中のケガは最初にサインした書類どおり、治療費だけでなく入院からリハビリ、死亡時には二〇〇〇万までが保険で出ますけど、お互い怨みっコなしの自己責任でいいッスよね?」
その、やはり言い慣れた椎座の口ぶりには、崎陽の中の奥底で、まだ闘志の炎と燃え盛るかはわからない鬼火がフッツと点り、ゆららと彷徨きだしていた──。