023 エリザベートという名のイケデカ美女子…… side A
文字数 1,984文字
「グブッ……」
玄牟が吐き出した呻きに、和加は通常の調子ながら厳酷なツッコみ。
「供奉? それとも弘布かしら、仏の教えを広めたいわけ~? 何でしょこいつ、ミンションスクールへ通っているクセして」
「和加が一番鬼なんじゃね?」
崎陽は、荒儀 の一切を和加へおっ被せるように言い放ちつつ、玄牟の襟足が隠れるほど伸ばした乱れ髪へと両手を突っ込みにかかる。
背後からなので、ヒーロー変身グッズじみたアイウェア自体は見えないが、和加の指図どおり左耳にかかっていたパーツを、沈毅 なまでに捥 ぎとってしまう。
勿論のこと、玄牟も両肩から背中を崎陽の六四キロで圧しつけられてはいたものの見苦しく両腕を振り両脚もジタバタさせて抵抗した。
だが、崎陽の躊躇も容赦もない強引な手捷 さを排斥するには、俯 せ状態ではまるで力が及ばない。
それ以前に崎陽が毟 り折った部分は、耳にかける部分だけあって、あまりに脆弱すぎた。
「ぁ~あぁ途絶した、ヌースとの通信がっ、僕の神、神の声がぁ……」
「やっぱ仏じゃなく神だとよ。どっちにしろヤベェなこいつ」
「まったくぅ。まともな協力のお願いなんかしていないわね絶対。ま、その辺はもう心配要らないけどっ」
外へは届かない和加の声はさておき、呆れて腐 した崎陽をも全く意に介さない様子で、玄牟は管を巻きだす始末。
「あり得ないぃ。この僕が、無名校の運動部にすら所属していない鼠輩 なんぞにこうも……これでは、モォ~生徒会選挙への助力が得られないっ、部長選挙と同じ失敗をくり返してしまうぅ、こんな様では学院革命どころではないじゃあないか!」
玄牟が顔をうずめた地面を殴りだし、わけのわからん無念泣きまで重ねるウザさに、お座が急激に醒めゆくのを覚えた崎陽は、地面ごと玄牟を突き放す勢いでその背中から立ち上がる。
そんな崎陽が鬼になりきらないよう、毒気ぬきならぬ鬼気ぬきのはぐらかしを和加が語りだす前にと、崎陽は残る目標、ロボットの攻撃へと走り出す。
「あいつ、推薦してくれる部員が一人もいなくてフェンシング部の部長に立候補すらできなかったの。支持者集めで鼻につく点数稼ぎをしまくったから、ド顰蹙を爆買いされたみたい。性懲りもなく生徒会長選挙にもうって出ることに決めて、ヌースとはそのPR活動で、プロ級の空間演出を賛助してもらう条件で結託したカンジね」
「どうでもいい、ロボタンの弱点は頭のアンテナだったよなっ」
全速力で狙い寄る中、崎陽はあたらためてロボットへ視線を注ぐ。
サイズ的に崎陽とほぼ同じ背格好の玄牟の半分程度であったし、二本足で立ってはいるが、二足歩行というよりはスリ足移動といった歩み方。
さらには現在、店内から気づいて出て来た子供たちにわらわら群がられ、その取り繕いに胸部のディスプレイで、
一蹴での撃砕も可能との高をくくった目算が、崎陽の走りを軽快にする。
左腕にカンジ始めた激しい痛みも、アドレナリンとは違う脳内物質が再び忘失へと崎陽を誘っていく。
「待って待って崎陽っ。もう攻撃する必要はないの、むしろ無傷で回収すれば有効利用できるでしょ。イタズラされない内に、とり巻いているガキンチョどもから守ってあげないと」
「悪ぃな。こっちは和加のドローンがやられちまってるんだ、和加が許そうがオレが許せないっての。それに敵の武器なんかリサイクルするか、縁起悪ぃ」
「え。だから待ってってば──」
そこで崎陽は、でき得る限りの鬼臉 を被って子供たちへの脅しに出る。
「おぉりゃ! 退け退けガキンチョども~っ」
そうして子供たちを跳ね退かすと、ロボットに向けて、崎陽はまたも一発芸であるロンダートからバック転二連続のあとにH難度モドキの床運動ワザ、後方伸身気味二回宙返り三回ヒネりを披露しつつ、ロボットの頭部を両脚キックで踏みのめす!
着地のことなど考えずアンテナ部の完全破壊だけを目指したため、崎陽はロボットを蹴り飛ばしたあとは受身もとらず落ち転がった。
「うわ~凄っ。何だこの人ぉ……」
「スタントマン? とか言うヤツだよきっと」
「……じゃぁ、これもガチでドッキリ? どこどこカメラ!」
寸秒、呼吸ができないほど激しく背中を地面にたたきつけてしまった崎陽だったけれども、子供たちの騒ぎ立てが今度は自分へ向いたことで、痛がる素ぶりもできず、ここは必死に痩せガマン。
背中を押さえてのたうち廻りたいところを、代わりに背筋を目一杯使ったネックスプリングで機敏に跳ね起きる。
「やっぱスタントマンだぁ、TVとかでよくやるヤツだもん今のっ」
騒然とした場の空気が崎陽への湧き立ちに変わってきたせいで、会計を済ませ店内から出て来た子供たちの親を始めとする辺りのオトナが、何事かと、ロボットや一人頭ぬけている崎陽を気に留め、目も立て始める。
玄牟が吐き出した呻きに、和加は通常の調子ながら厳酷なツッコみ。
「供奉? それとも弘布かしら、仏の教えを広めたいわけ~? 何でしょこいつ、ミンションスクールへ通っているクセして」
「和加が一番鬼なんじゃね?」
崎陽は、
背後からなので、ヒーロー変身グッズじみたアイウェア自体は見えないが、和加の指図どおり左耳にかかっていたパーツを、
勿論のこと、玄牟も両肩から背中を崎陽の六四キロで圧しつけられてはいたものの見苦しく両腕を振り両脚もジタバタさせて抵抗した。
だが、崎陽の躊躇も容赦もない強引な
それ以前に崎陽が
「ぁ~あぁ途絶した、ヌースとの通信がっ、僕の神、神の声がぁ……」
「やっぱ仏じゃなく神だとよ。どっちにしろヤベェなこいつ」
「まったくぅ。まともな協力のお願いなんかしていないわね絶対。ま、その辺はもう心配要らないけどっ」
外へは届かない和加の声はさておき、呆れて
「あり得ないぃ。この僕が、無名校の運動部にすら所属していない
玄牟が顔をうずめた地面を殴りだし、わけのわからん無念泣きまで重ねるウザさに、お座が急激に醒めゆくのを覚えた崎陽は、地面ごと玄牟を突き放す勢いでその背中から立ち上がる。
そんな崎陽が鬼になりきらないよう、毒気ぬきならぬ鬼気ぬきのはぐらかしを和加が語りだす前にと、崎陽は残る目標、ロボットの攻撃へと走り出す。
「あいつ、推薦してくれる部員が一人もいなくてフェンシング部の部長に立候補すらできなかったの。支持者集めで鼻につく点数稼ぎをしまくったから、ド顰蹙を爆買いされたみたい。性懲りもなく生徒会長選挙にもうって出ることに決めて、ヌースとはそのPR活動で、プロ級の空間演出を賛助してもらう条件で結託したカンジね」
「どうでもいい、ロボタンの弱点は頭のアンテナだったよなっ」
全速力で狙い寄る中、崎陽はあたらためてロボットへ視線を注ぐ。
サイズ的に崎陽とほぼ同じ背格好の玄牟の半分程度であったし、二本足で立ってはいるが、二足歩行というよりはスリ足移動といった歩み方。
さらには現在、店内から気づいて出て来た子供たちにわらわら群がられ、その取り繕いに胸部のディスプレイで、
ドッキリ撮影中
と表示しながら惑いふためいている様子が窺えた。一蹴での撃砕も可能との高をくくった目算が、崎陽の走りを軽快にする。
左腕にカンジ始めた激しい痛みも、アドレナリンとは違う脳内物質が再び忘失へと崎陽を誘っていく。
「待って待って崎陽っ。もう攻撃する必要はないの、むしろ無傷で回収すれば有効利用できるでしょ。イタズラされない内に、とり巻いているガキンチョどもから守ってあげないと」
「悪ぃな。こっちは和加のドローンがやられちまってるんだ、和加が許そうがオレが許せないっての。それに敵の武器なんかリサイクルするか、縁起悪ぃ」
「え。だから待ってってば──」
そこで崎陽は、でき得る限りの
「おぉりゃ! 退け退けガキンチョども~っ」
そうして子供たちを跳ね退かすと、ロボットに向けて、崎陽はまたも一発芸であるロンダートからバック転二連続のあとにH難度モドキの床運動ワザ、後方伸身気味二回宙返り三回ヒネりを披露しつつ、ロボットの頭部を両脚キックで踏みのめす!
着地のことなど考えずアンテナ部の完全破壊だけを目指したため、崎陽はロボットを蹴り飛ばしたあとは受身もとらず落ち転がった。
「うわ~凄っ。何だこの人ぉ……」
「スタントマン? とか言うヤツだよきっと」
「……じゃぁ、これもガチでドッキリ? どこどこカメラ!」
寸秒、呼吸ができないほど激しく背中を地面にたたきつけてしまった崎陽だったけれども、子供たちの騒ぎ立てが今度は自分へ向いたことで、痛がる素ぶりもできず、ここは必死に痩せガマン。
背中を押さえてのたうち廻りたいところを、代わりに背筋を目一杯使ったネックスプリングで機敏に跳ね起きる。
「やっぱスタントマンだぁ、TVとかでよくやるヤツだもん今のっ」
騒然とした場の空気が崎陽への湧き立ちに変わってきたせいで、会計を済ませ店内から出て来た子供たちの親を始めとする辺りのオトナが、何事かと、ロボットや一人頭ぬけている崎陽を気に留め、目も立て始める。