072 side B
文字数 2,044文字
「ったく、ガチ使えねぇ鬼母がぁ。壊してないならいいけどさ、とりあえず迂回するか? 裏隣の庭を突っきらせてもらえば、バレずに済むかも知れないし。JK社長が来てる反応がないんなら、戦闘員とムダにやり合いたくないからな」
「反応はないままだけれど、あっちのアイウェアの電源をオフしているだけの可能性があるわよ。大勢で、寄って集って崎陽をボコまくりしたあとに、JK社長が電源オンして、崎陽から一言降参させてミューツアルグラスを奪えばいいんだもの」
「誰が、ボコまくられも降参の一言もするもんかよっ」
「けれどあのワゴン、座席数まで変えていなければ七人乗りのはずだから、六人は戦闘員がいると思って」
「……六人も? 重役社員が仕事より優先させて来るもんかなぁ。そんな会社、さらに儲ける前に潰れちまうんじゃね?」
「フィフの情報だとSGRのチーフディレクター・クラスには、星林佳歩と同じ一五歳からいるとても若い会社だわ」
「……なら、血の気が多そうなのもいそうだな」
「ヴェテランは要所だけ、しかも社員の八割強が女性。ファッションやもち物がカブるのは嫌っても、女子の結束力は本務を二の次にしちゃうかも。収益につながれば仕事だし、崎陽を倒すプロジェクトチームを発足させていたりして?」
「てか、最初に言ってくれよそこまでのチートはっ。ほぼ女子相手にバトれるもんかよ、きっと対峙しただけで痴漢騒ぎの冤罪オチだ。そうなりゃオレは、先に母ちゃんに屠 られちまうだろが」
「アラァ、それこそ判断するまでもない常識でしょ。事業を立ちあげたのはティーン女子なんだし、その人品や気稟だけにオトナの男性が自然と靡いて、自発的なゆるがぬ支援でより高みへと押し上げるほど、感化される道理がないわよ」
「……そう、かもだけどさぁ」
「崎陽も、わかっていてJK社長のことを男誑しではなく、人誑しと言い表したんだと思ったから、その辺の説明は不要と判断したんだけど~」
「ったく、これだから女子は……あ~、じゃなくて、おそらくフィフにテストされたぞ和加」
「テスト? 何をよ」
「フィフは、敢えて言わずに情報を送って、和加がスグにオレへ伝えるかをだ。今度の敵は間違いなく若い女性ばっか、アマゾネス軍団だってことじゃねぇかっ」
「はい? 意味わからないんだけど~」
「和加の常識知らず、って言うより常識足らず度を測られたんじゃね? ただ同乗しただけの女子ならそれでいいけどさ、和加はオレの相棒だろが。となればオレの立場で情報をあつかってくれないと」
「……あつかっているわよ、いつも」
「まぁオレもたった今自覚できたんだが、敵の最悪さは、一人でも寄らなくたって姦しい女子ってことなんだ。どうバトっても、オレが一方的に、社会的に追いつめられちまう」
「……だって、いずれにしても同じでしょ? 崎陽が全力でバトれないことは」
「いんや、厳密にはバトれもしない。とにかく逃げないと、関わった時点で負ける。騒がれて第三者に見られれば、オレがどんだけ必死に弁解してもムダだ。地元も地元が全く地の利になりゃしない、崎陽んトコのアホ息子が、とうとう怪しからんでは済まない痴情沙汰の犯罪をしでかしやがったとしか思われないって」
そう愚痴りつつ、崎陽は自宅の裏に廻るため、似たような造りの建て売り住宅が並ぶ路地へと左折する。
駐まっていたワゴン車の後部の窓には、カーテンが引かれていたため、中に人がいるかもわからない。
車内から見られていたとしても、崎陽は、ホームセンターでまとめ買いした高校生が建て売り住宅の一軒に帰っただけ、という体 が装えたことを信じるしかない。
紙袋を持つ手に負荷をかけないよう、自身へとギシむ負荷をかけて、できる限り歩みを速める崎陽だった。
「領得したわ。思うところはワタシにもいろいろあるけれど、崎陽の立場になれば、それは当然自分へ返ってくるブーメランでしかなくなるもの。ここは建設的で発展的な情報提供をさせてもらうから」
「そ? で、どうすりゃいいオレは」
「もし敵に遭遇したら、左手の黄色っぽい紙袋の中にある卵形をしたヤツを投げつけて。ネットボムよ、細網が広がって足止めに使えるから」
「領得領得。フィフも、完全に領得してやがるのは確定だな、敵を傷つけない武器なんかをくれるなんてさ。って言うか、ガッコをやめたのは、ガンスミスの資格を活かして儲けるためだったんじゃね?」
「そうなのかも、開設している受注サイトも繁盛しだしているから。怪物クンにアーム提供をしたことは、程好い宣伝効果までもが織り込まれていたと言えそうね」
「ったくあいつは、鬼ムカつく計算尽くだな一切がっ」
「もらった紙袋の中身は、全て公式サヴァイヴァルゲーム仕様のアイテムだから、どれも基本的に人を傷つけはしないけれど、ネットボム以外は今の状況には向いてなさそう。帰り着いたら一つずつ説明するわ」
「ん、領得。……ちなみにさ、和加へもブーメランになって返るオレの立場って何だよ一体? なんか引っかかるんだけど」
「反応はないままだけれど、あっちのアイウェアの電源をオフしているだけの可能性があるわよ。大勢で、寄って集って崎陽をボコまくりしたあとに、JK社長が電源オンして、崎陽から一言降参させてミューツアルグラスを奪えばいいんだもの」
「誰が、ボコまくられも降参の一言もするもんかよっ」
「けれどあのワゴン、座席数まで変えていなければ七人乗りのはずだから、六人は戦闘員がいると思って」
「……六人も? 重役社員が仕事より優先させて来るもんかなぁ。そんな会社、さらに儲ける前に潰れちまうんじゃね?」
「フィフの情報だとSGRのチーフディレクター・クラスには、星林佳歩と同じ一五歳からいるとても若い会社だわ」
「……なら、血の気が多そうなのもいそうだな」
「ヴェテランは要所だけ、しかも社員の八割強が女性。ファッションやもち物がカブるのは嫌っても、女子の結束力は本務を二の次にしちゃうかも。収益につながれば仕事だし、崎陽を倒すプロジェクトチームを発足させていたりして?」
「てか、最初に言ってくれよそこまでのチートはっ。ほぼ女子相手にバトれるもんかよ、きっと対峙しただけで痴漢騒ぎの冤罪オチだ。そうなりゃオレは、先に母ちゃんに
「アラァ、それこそ判断するまでもない常識でしょ。事業を立ちあげたのはティーン女子なんだし、その人品や気稟だけにオトナの男性が自然と靡いて、自発的なゆるがぬ支援でより高みへと押し上げるほど、感化される道理がないわよ」
「……そう、かもだけどさぁ」
「崎陽も、わかっていてJK社長のことを男誑しではなく、人誑しと言い表したんだと思ったから、その辺の説明は不要と判断したんだけど~」
「ったく、これだから女子は……あ~、じゃなくて、おそらくフィフにテストされたぞ和加」
「テスト? 何をよ」
「フィフは、敢えて言わずに情報を送って、和加がスグにオレへ伝えるかをだ。今度の敵は間違いなく若い女性ばっか、アマゾネス軍団だってことじゃねぇかっ」
「はい? 意味わからないんだけど~」
「和加の常識知らず、って言うより常識足らず度を測られたんじゃね? ただ同乗しただけの女子ならそれでいいけどさ、和加はオレの相棒だろが。となればオレの立場で情報をあつかってくれないと」
「……あつかっているわよ、いつも」
「まぁオレもたった今自覚できたんだが、敵の最悪さは、一人でも寄らなくたって姦しい女子ってことなんだ。どうバトっても、オレが一方的に、社会的に追いつめられちまう」
「……だって、いずれにしても同じでしょ? 崎陽が全力でバトれないことは」
「いんや、厳密にはバトれもしない。とにかく逃げないと、関わった時点で負ける。騒がれて第三者に見られれば、オレがどんだけ必死に弁解してもムダだ。地元も地元が全く地の利になりゃしない、崎陽んトコのアホ息子が、とうとう怪しからんでは済まない痴情沙汰の犯罪をしでかしやがったとしか思われないって」
そう愚痴りつつ、崎陽は自宅の裏に廻るため、似たような造りの建て売り住宅が並ぶ路地へと左折する。
駐まっていたワゴン車の後部の窓には、カーテンが引かれていたため、中に人がいるかもわからない。
車内から見られていたとしても、崎陽は、ホームセンターでまとめ買いした高校生が建て売り住宅の一軒に帰っただけ、という
紙袋を持つ手に負荷をかけないよう、自身へとギシむ負荷をかけて、できる限り歩みを速める崎陽だった。
「領得したわ。思うところはワタシにもいろいろあるけれど、崎陽の立場になれば、それは当然自分へ返ってくるブーメランでしかなくなるもの。ここは建設的で発展的な情報提供をさせてもらうから」
「そ? で、どうすりゃいいオレは」
「もし敵に遭遇したら、左手の黄色っぽい紙袋の中にある卵形をしたヤツを投げつけて。ネットボムよ、細網が広がって足止めに使えるから」
「領得領得。フィフも、完全に領得してやがるのは確定だな、敵を傷つけない武器なんかをくれるなんてさ。って言うか、ガッコをやめたのは、ガンスミスの資格を活かして儲けるためだったんじゃね?」
「そうなのかも、開設している受注サイトも繁盛しだしているから。怪物クンにアーム提供をしたことは、程好い宣伝効果までもが織り込まれていたと言えそうね」
「ったくあいつは、鬼ムカつく計算尽くだな一切がっ」
「もらった紙袋の中身は、全て公式サヴァイヴァルゲーム仕様のアイテムだから、どれも基本的に人を傷つけはしないけれど、ネットボム以外は今の状況には向いてなさそう。帰り着いたら一つずつ説明するわ」
「ん、領得。……ちなみにさ、和加へもブーメランになって返るオレの立場って何だよ一体? なんか引っかかるんだけど」