009 悪いけど友達はグレード分けしてるよね…… side A
文字数 1,694文字
「てか、何もしねぇからだろ逆にっ。昆スタンツェが目をかけて、一緒に活動しようと声までかけたってのに、無粋なおまえにゃ靡 けるほどの度量すらないときた」
「てか、ないのはカネだけだろが」
「ま、それだけのことでしかないんだが、熾盛 で高校生活も出だしからキャットバード・シートを定席にしちまいたいセラフィムにとっちゃ、のっけにケチをつけた翳 りなんだおまえは」
「……ネコマネドリね。へ~、見晴らしがいい有利な場所を陣どる習性から代名詞になってるわけか? セラフィム人気に薄ムカついてる奴らのボヤきから広まったとはね」
「んん? 何いきなり独り言ブチってんだよ。やっぱセラフィムの帰心者どもからも叩かれまくりすぎて、電波系ノイローゼになったってか今更?」
「いや、何でもない……まぁそう、いいかも今更の電波系キャラ。て言うか、澤部相手だと気の置き所がなさすぎて口まで軽くなっちまうな。悪いがここでバイバイしとこう、今んトコ無事にやってるおまえにまで延焼させたくないんで」
通りかかった信号がちょうど青になったこともあり、崎陽は一人で右向け右、澤部と別れるにはまだ早すぎる地点ではあるものの横断歩道を渡りだす。
「ったく、ま~だアホクサく余裕ブッこいていられるとは、つまんねぇのっ。じゃあな、おまえとはオナ中とすら広められたくないんで、何か忘れ物しても俺のクラスまで借りに来るんじゃねぇぞ」
「あいよ、クラスまで行かなけりゃいいんだろ? まぁ今んトコ、忘れ物は絶対にしないだろうけどさ。何せ毎朝、索 ッとオレの耳元で情報収集の女神が囁いてくれるんで」
「あばよ! セラフィムの火矢を受けまくって焼き尽くされろってのっ」
そう吐き捨ててきた澤部へ、顔を向けずに突き上げた左腕を振って応える崎陽は、横断歩道を渡りきったあともそのまま路地を直進して行く。
少し歩いてからふり返り、後方に誰も来ていないと確認した崎陽は、かけているミューツアルグラスの左のサイドピースから、金属弦のようなマイクを引き延ばして口元へ近づけた。
これで、キザったらしくはあるもののヘッドセットで通話をしている体 が装える。
「はぁ~、ようやっとフツウに話せる。さっきヤバかったなチョット、澤部ってヘタに勘繰りまくるから当たっちまうんだよ偶に」
「今日も御苦労様でした~。いいの? 久しぶりの親しいお友達とのおしゃべりなのに、早ばやとバイバイしちゃって」
返答したのは和加。
その声は、ミューツアルグラスの両側のイヤピースから崎陽の両耳へと延びたイヤフォンで出力されている。
こうして崎陽が返答可能な状況にならない限り、和加からほぼ絶えず一方的に伝えたいことを呟き続けられる毎日となってしまっていた。
崎陽にしても、そのイヤフォンを隠す目的で髪が伸びるままにしているのだが、今日みたいな陽気には鬱陶しさを覚えてしまう。
「別に。澤部は親しくも、ましてやお友達なんて上等なモノでもない。大嫌いでもないけど、好きじゃないってフツウに、毎度毎度ナメかかってくる奴なんか」
「ワタシには黙っていた昆スタンツェへの本音を、ペラペラしゃべっちゃう相手なのにぃ?」
「……なんかさ、和加ってそういうことはヤケにニブくね?」
「だって……わからないことはわからないんだもの」
「はは、休神休神 。ならば自称一発芸の神が一発教えちゃろう。何て言うか、親しいんだろうけど、それはオナ中同士って微微たる分だけだな。澤部とオレはお互い、結局いてもいなくても全然問題ないおモブダチでしかないのさ。オレの人生これまで、友達なんてそんなのばっか。まぁモブからすれば、誰にとってのモブかが大事だしさ」
「フ~ン。じゃぁ崎陽は今、一体誰のモブなわけ?」
「急にスルドいな。ん~基本的にあの鬼母じゃね? ガッコではまだセラフィムみたいだし」
「ウ~ン、まるで大事そうじゃないんだけれど」
「いや、大事だろが充分、母ちゃんのモブでもセラフィムのでも嫌だって意味で言ってるんだから。和加には結構伝わらないよな、この手のニュアンス。……ホントはガチで外国育ちか、マジに昆スタンツェみたく家庭が外国文化なんじゃね?」
「てか、ないのはカネだけだろが」
「ま、それだけのことでしかないんだが、
「……ネコマネドリね。へ~、見晴らしがいい有利な場所を陣どる習性から代名詞になってるわけか? セラフィム人気に薄ムカついてる奴らのボヤきから広まったとはね」
「んん? 何いきなり独り言ブチってんだよ。やっぱセラフィムの帰心者どもからも叩かれまくりすぎて、電波系ノイローゼになったってか今更?」
「いや、何でもない……まぁそう、いいかも今更の電波系キャラ。て言うか、澤部相手だと気の置き所がなさすぎて口まで軽くなっちまうな。悪いがここでバイバイしとこう、今んトコ無事にやってるおまえにまで延焼させたくないんで」
通りかかった信号がちょうど青になったこともあり、崎陽は一人で右向け右、澤部と別れるにはまだ早すぎる地点ではあるものの横断歩道を渡りだす。
「ったく、ま~だアホクサく余裕ブッこいていられるとは、つまんねぇのっ。じゃあな、おまえとはオナ中とすら広められたくないんで、何か忘れ物しても俺のクラスまで借りに来るんじゃねぇぞ」
「あいよ、クラスまで行かなけりゃいいんだろ? まぁ今んトコ、忘れ物は絶対にしないだろうけどさ。何せ毎朝、
「あばよ! セラフィムの火矢を受けまくって焼き尽くされろってのっ」
そう吐き捨ててきた澤部へ、顔を向けずに突き上げた左腕を振って応える崎陽は、横断歩道を渡りきったあともそのまま路地を直進して行く。
少し歩いてからふり返り、後方に誰も来ていないと確認した崎陽は、かけているミューツアルグラスの左のサイドピースから、金属弦のようなマイクを引き延ばして口元へ近づけた。
これで、キザったらしくはあるもののヘッドセットで通話をしている
「はぁ~、ようやっとフツウに話せる。さっきヤバかったなチョット、澤部ってヘタに勘繰りまくるから当たっちまうんだよ偶に」
「今日も御苦労様でした~。いいの? 久しぶりの親しいお友達とのおしゃべりなのに、早ばやとバイバイしちゃって」
返答したのは和加。
その声は、ミューツアルグラスの両側のイヤピースから崎陽の両耳へと延びたイヤフォンで出力されている。
こうして崎陽が返答可能な状況にならない限り、和加からほぼ絶えず一方的に伝えたいことを呟き続けられる毎日となってしまっていた。
崎陽にしても、そのイヤフォンを隠す目的で髪が伸びるままにしているのだが、今日みたいな陽気には鬱陶しさを覚えてしまう。
「別に。澤部は親しくも、ましてやお友達なんて上等なモノでもない。大嫌いでもないけど、好きじゃないってフツウに、毎度毎度ナメかかってくる奴なんか」
「ワタシには黙っていた昆スタンツェへの本音を、ペラペラしゃべっちゃう相手なのにぃ?」
「……なんかさ、和加ってそういうことはヤケにニブくね?」
「だって……わからないことはわからないんだもの」
「はは、
「フ~ン。じゃぁ崎陽は今、一体誰のモブなわけ?」
「急にスルドいな。ん~基本的にあの鬼母じゃね? ガッコではまだセラフィムみたいだし」
「ウ~ン、まるで大事そうじゃないんだけれど」
「いや、大事だろが充分、母ちゃんのモブでもセラフィムのでも嫌だって意味で言ってるんだから。和加には結構伝わらないよな、この手のニュアンス。……ホントはガチで外国育ちか、マジに昆スタンツェみたく家庭が外国文化なんじゃね?」