040 side B
文字数 1,493文字
「らしいッスね。ではあのフィフさんはやっぱ、そんな年上じゃないわけッスか」
「ウンそう一六、オレと学年的にはタメ」
「へぇ~、一つしか違わないんッスねぇ? ウチのパイセンたちに遠慮とか全然ないんで、大学生かと思ってたッス」
「ホント見かけに寄らないカンジだし、お勉強以外も超できそうだから、あり得ることなんだけど……でもなぁ、大ゴケしてあの長細っちぃ腕や脚をポッキンしないかが心配になるよな。よく効く鎮痛クリームをもらった義理で、運ばなくちゃならないのはオレだしさ」
「大丈夫ッス。その時は俺が一担ぎして、一五〇メートル先の大学病院まで走るッスから」
「あ~、近くなんだ病院も?」
「ッス。チーフ‐レフェリー三人の内、ウチの部側から出すパイセンも救命センターからシフト外だったOBを呼んでいるッス。もう応急手当からバッチリッスよ」
「へ~、総合大学の附属校って至れり尽くせりのコンヴィニさだなぁ。日本一には、あんたってピースがハマるだけで確固不動になっちまうわけだ?」
「でも目指すは世界一ッスから。世界に出れば俺のデカさもありふれてるし、首が痼 らない女子も口説き放題ッス。その日のために、俺のタクティカルゴーグルのSIMを渡すわけにはいかないッスね」
事成し顔で椎座は片笑む。
「あんたのはタクティカルゴーグルって言うんだ? 日本の企業も物好きが多いんだなぁ……でもさ、世界の高身長女子を口説きまくるのに、どしてハラハラ司令官が必要なわけ? そりゃ世界大会となれば、毎年違う開催国へ無料で行けて賞金まで稼いで来られるんだろうけど、あんたなら司令官なしでも充分イケるんじゃね?」
「そッスね、ルールで守られたバトルでは、別に精確でシヴィアな指揮‐統率をしてくれるわけじゃないッスし。でも、必要になるのは世界一を果たしたその先、ルール無用で斃 し合ってるリアルな最前線ッスから。だから平和なこの国で負けはあり得ないッス。ブッチャケ、俺が出て行く頃に送られて来て欲しかったッスよ」
「……そっか。よくわからんけど、ダメだなもう、これ以上はモブが聞いたら」
目先のことですら目を瞑ってやり過ごす浅狭な崎陽には、フツウならば黒歴史化必至と笑うしかない椎座の大望など、思い及べる道理もない。
けれども、勇壮な将来を椎座が見据えている雄志だけは、ヒリめくほどにカンジられる。
それにより、不覚にも毒気をごっそりぬかれて両肩が落ち、崎陽は早くも椎座に首を延べてしまいかけていた。
「俺の方ッスけど、よくわからんのは……」
「あんたはガチに生まれついての大物なんだな、ってことさ。負けて、一生つけ廻すのも悪くないカンジがしちゃうけど、この国の平和ボケ維持のために、そう楽楽と出て行かれたら困る気もするよな。今の内に木 っ端 鬼の鬼手を味わっといて損はないはずだし」
「……さっぱりッス。とにかく俺は、俺自身の未倒記録が途切れた時点で、サッカー部落ちの刑まで確定してるんッスよね、だから勝利のみッス。サッカーじゃ本当の平和はムリッスからっ、全力で、つけ廻す気にもならないくらいにブッ倒してあげるッス」
「そうしてもらえるとガチで助かるんだよなぁ……オレだって、モブらしい人並みの一生を歩みたいんだけど、因業な血が許してくれんのよ、血が」
ここで本部ヤードから、ハンドマイクで両校のユニットに呼集がかかる。
「ホント、オモロい人ッスねぇ。それじゃぁパチンコでの鬼手ってヤツ、期待してるッス崎陽ビンボウ先輩。さすがにウザいガキとは呼べないッスから」
「……トシフサなんだけど、まぁいいって。それはもう、遠い昔に言われ慣れちまってる蔑称だしさ」
「ウンそう一六、オレと学年的にはタメ」
「へぇ~、一つしか違わないんッスねぇ? ウチのパイセンたちに遠慮とか全然ないんで、大学生かと思ってたッス」
「ホント見かけに寄らないカンジだし、お勉強以外も超できそうだから、あり得ることなんだけど……でもなぁ、大ゴケしてあの長細っちぃ腕や脚をポッキンしないかが心配になるよな。よく効く鎮痛クリームをもらった義理で、運ばなくちゃならないのはオレだしさ」
「大丈夫ッス。その時は俺が一担ぎして、一五〇メートル先の大学病院まで走るッスから」
「あ~、近くなんだ病院も?」
「ッス。チーフ‐レフェリー三人の内、ウチの部側から出すパイセンも救命センターからシフト外だったOBを呼んでいるッス。もう応急手当からバッチリッスよ」
「へ~、総合大学の附属校って至れり尽くせりのコンヴィニさだなぁ。日本一には、あんたってピースがハマるだけで確固不動になっちまうわけだ?」
「でも目指すは世界一ッスから。世界に出れば俺のデカさもありふれてるし、首が
事成し顔で椎座は片笑む。
「あんたのはタクティカルゴーグルって言うんだ? 日本の企業も物好きが多いんだなぁ……でもさ、世界の高身長女子を口説きまくるのに、どしてハラハラ司令官が必要なわけ? そりゃ世界大会となれば、毎年違う開催国へ無料で行けて賞金まで稼いで来られるんだろうけど、あんたなら司令官なしでも充分イケるんじゃね?」
「そッスね、ルールで守られたバトルでは、別に精確でシヴィアな指揮‐統率をしてくれるわけじゃないッスし。でも、必要になるのは世界一を果たしたその先、ルール無用で
「……そっか。よくわからんけど、ダメだなもう、これ以上はモブが聞いたら」
目先のことですら目を瞑ってやり過ごす浅狭な崎陽には、フツウならば黒歴史化必至と笑うしかない椎座の大望など、思い及べる道理もない。
けれども、勇壮な将来を椎座が見据えている雄志だけは、ヒリめくほどにカンジられる。
それにより、不覚にも毒気をごっそりぬかれて両肩が落ち、崎陽は早くも椎座に首を延べてしまいかけていた。
「俺の方ッスけど、よくわからんのは……」
「あんたはガチに生まれついての大物なんだな、ってことさ。負けて、一生つけ廻すのも悪くないカンジがしちゃうけど、この国の平和ボケ維持のために、そう楽楽と出て行かれたら困る気もするよな。今の内に
「……さっぱりッス。とにかく俺は、俺自身の未倒記録が途切れた時点で、サッカー部落ちの刑まで確定してるんッスよね、だから勝利のみッス。サッカーじゃ本当の平和はムリッスからっ、全力で、つけ廻す気にもならないくらいにブッ倒してあげるッス」
「そうしてもらえるとガチで助かるんだよなぁ……オレだって、モブらしい人並みの一生を歩みたいんだけど、因業な血が許してくれんのよ、血が」
ここで本部ヤードから、ハンドマイクで両校のユニットに呼集がかかる。
「ホント、オモロい人ッスねぇ。それじゃぁパチンコでの鬼手ってヤツ、期待してるッス崎陽ビンボウ先輩。さすがにウザいガキとは呼べないッスから」
「……トシフサなんだけど、まぁいいって。それはもう、遠い昔に言われ慣れちまってる蔑称だしさ」