028 side B
文字数 1,936文字
「……どう言う意味? まぁ優秀な奴ってドMが多いもんな」
「アハハ、確かにMっけと解釈できるのかもだよ。つまり私は一度では引き下がらないイタい奴だと言うことだよ。また何かあったら崎陽に協力を求めるよ、何度でも」
「うへ~。協力って、どうせあんたが考えついた策略に、オレが体を張るってことだろ? 勘弁して欲しいんだけどなぁ」
「明快は楽なだけに損もするよ。よく考えてみなよ、私がやられたら、次は近場にいる崎陽だろうし、その逆もまた真なり。だよ」
「……まぁ、そうだな」
「どうせ体を張らなければならないなら、私相手じゃない方がいいと思うよ。目下私はレーザー発生装置のダウンサイジングと、拳銃型射出モジュールによる連射速度の更新にとり組み中で、設計上は問題なさそうだから」
「ガチでかぁ──」口調に憤りがこもる崎陽へ、和加が機嫌をとるようにバートリが言わんとしている真意の説き明かしを口添えた──「なるほどね、この前の一発は布石だったってわけか。とりあえずオレに威力と恐怖を撃ち込んでおけば、話は早いもんな」
「ならそれ、協定の了承と受け取るよ。言うまでもなく、もう威嚇射撃の必要はないし狙い撃つこともしない」
「絶対かよ? ま、絶対なんてありゃしないことは承知してるけどさ」
「単に、交渉を有利にするためには、最強そうな武装が明快なだけだよ。これまた、よくわからないけどなんだか最強そう、ってところがミソなんだよ」
バートリの言うことが今一つピンとこない崎陽だが、和加がまた始めた言い足しもウザい。
「わ~った。とにかく、あんたは勉強だけが超できるバカじゃなく、やること言うこと全部に意味があってムダがないらしいって。オレの相棒もそう言ってるし、敵にまわらないってだけでも感謝しなくちゃな」
「ハハハ……」
バートリは屈託なく牙への憚 りもなしに笑うが、崎陽からは角度的にルームミラーからでも窺えない。
「ま。できる協力はするんで、何でもいつでも言ってくれ。でもムリなことはムリ、ムチャぶりしてもムダだから、断わっとくよあらかじめ」と、崎陽もニヒル気味に応じておく。
「了承したよ。……ほらピスタ、そこだよ昆スタンツェの現今の住み処があるマンションは」
バートリが指差すと、クルマも速度を落としだしウィンカーも点滅を始めた。
「か~、早くもピスタ呼ばわりとは。まぁチオが付くよりマシか……」
そう愚痴りながらも玄牟は、バートリが倚れるシートの前へ乗り出す勢いで、フロントガラスの景色を目張る。
「現今の住み処って?」
訝りから崎陽も前景へ目を瞠 ってしまう。
「ストーカー対策で、セラフィムはねぐらを転転としてるんだよ。このピスタは、これでまだマシな部類──」
バートリは左手を振り上げ、乗り出して顔が近すぎるピスタを後ろへ払いやる。
「油断ならんなぁ、まったく。ホント女子ってのは気配なく攻撃動作をしてくるから敵わん、と言うより堪らん」
弾かれたようなスウェーバックで上体を戻したピスタは、そのままシートへ踏ん反るように凭 れ込む。
「そこには今、門勅主らうらと別当芽亜璃もいる、あとは崎陽にお願いしなよ。手土産には、もう少し先にあるパン屋で
「本当か! ローラたんとメアりぃもだなんて。セラフが三人そろっているのに会わずに引き下がれるものかぁ、何とかしてくれ崎陽っ。何でもする、死ねと言うなら会ってから死ぬっ、会わせなければ貴様を怨み呪って死んでやるからなぁ!」
「……やられたよなぁ、言った傍からまたしても──」崎陽は玄牟ではなくバートリの形のいい後頭部を怨めしげに睨めつける──「ったくもぉ~。なら、オレは紹介するだけなっ。そのあとどうなろうが、オレのせいに絶対しないってのが条件だ」
「しないしない絶対しない、するものかっ。だが……どうしたものか? 貴様に破かれ汚されたこの制服姿では絶対にヒかれてしまう。パン屋の前に近くで制服を買えないか? どこのどんなのでもかまわない、僕は制服でないと絶対にアウトなんだぁ」
「だから知るかってぇのっ」
「アハハ。このクルマをイメージしてデザインされたユニフォームならトランクにあるよ、プレゼン時のムード盛り上げ用だから一応フォーマルでオシャレ」
「本当かっ。なんだ、女子にしては気が利くではないか」
「さぁ。男子ウケはしそうだけど、セラフィムにはどうだろう? 二着あるし、二人で着替えて行けば、何か意味があると勘繰ってはくれるはず。フォトジェニック・ファーストのセラフィムも、喰いついてくれるかもだよ」
バートリは笑う、実に愉しげに牙を晒 して……。
「アハハ、確かにMっけと解釈できるのかもだよ。つまり私は一度では引き下がらないイタい奴だと言うことだよ。また何かあったら崎陽に協力を求めるよ、何度でも」
「うへ~。協力って、どうせあんたが考えついた策略に、オレが体を張るってことだろ? 勘弁して欲しいんだけどなぁ」
「明快は楽なだけに損もするよ。よく考えてみなよ、私がやられたら、次は近場にいる崎陽だろうし、その逆もまた真なり。だよ」
「……まぁ、そうだな」
「どうせ体を張らなければならないなら、私相手じゃない方がいいと思うよ。目下私はレーザー発生装置のダウンサイジングと、拳銃型射出モジュールによる連射速度の更新にとり組み中で、設計上は問題なさそうだから」
「ガチでかぁ──」口調に憤りがこもる崎陽へ、和加が機嫌をとるようにバートリが言わんとしている真意の説き明かしを口添えた──「なるほどね、この前の一発は布石だったってわけか。とりあえずオレに威力と恐怖を撃ち込んでおけば、話は早いもんな」
「ならそれ、協定の了承と受け取るよ。言うまでもなく、もう威嚇射撃の必要はないし狙い撃つこともしない」
「絶対かよ? ま、絶対なんてありゃしないことは承知してるけどさ」
「単に、交渉を有利にするためには、最強そうな武装が明快なだけだよ。これまた、よくわからないけどなんだか最強そう、ってところがミソなんだよ」
バートリの言うことが今一つピンとこない崎陽だが、和加がまた始めた言い足しもウザい。
「わ~った。とにかく、あんたは勉強だけが超できるバカじゃなく、やること言うこと全部に意味があってムダがないらしいって。オレの相棒もそう言ってるし、敵にまわらないってだけでも感謝しなくちゃな」
「ハハハ……」
バートリは屈託なく牙への
「ま。できる協力はするんで、何でもいつでも言ってくれ。でもムリなことはムリ、ムチャぶりしてもムダだから、断わっとくよあらかじめ」と、崎陽もニヒル気味に応じておく。
「了承したよ。……ほらピスタ、そこだよ昆スタンツェの現今の住み処があるマンションは」
バートリが指差すと、クルマも速度を落としだしウィンカーも点滅を始めた。
「か~、早くもピスタ呼ばわりとは。まぁチオが付くよりマシか……」
そう愚痴りながらも玄牟は、バートリが倚れるシートの前へ乗り出す勢いで、フロントガラスの景色を目張る。
「現今の住み処って?」
訝りから崎陽も前景へ目を
「ストーカー対策で、セラフィムはねぐらを転転としてるんだよ。このピスタは、これでまだマシな部類──」
バートリは左手を振り上げ、乗り出して顔が近すぎるピスタを後ろへ払いやる。
「油断ならんなぁ、まったく。ホント女子ってのは気配なく攻撃動作をしてくるから敵わん、と言うより堪らん」
弾かれたようなスウェーバックで上体を戻したピスタは、そのままシートへ踏ん反るように
「そこには今、門勅主らうらと別当芽亜璃もいる、あとは崎陽にお願いしなよ。手土産には、もう少し先にあるパン屋で
ゴルディオスの結び目
と呼ばれているプレッツェルがウケるはずだよ。知る人ぞ知る昆スタンツェの好物で、今日はまだ買いに行っていないから」「本当か! ローラたんとメアりぃもだなんて。セラフが三人そろっているのに会わずに引き下がれるものかぁ、何とかしてくれ崎陽っ。何でもする、死ねと言うなら会ってから死ぬっ、会わせなければ貴様を怨み呪って死んでやるからなぁ!」
「……やられたよなぁ、言った傍からまたしても──」崎陽は玄牟ではなくバートリの形のいい後頭部を怨めしげに睨めつける──「ったくもぉ~。なら、オレは紹介するだけなっ。そのあとどうなろうが、オレのせいに絶対しないってのが条件だ」
「しないしない絶対しない、するものかっ。だが……どうしたものか? 貴様に破かれ汚されたこの制服姿では絶対にヒかれてしまう。パン屋の前に近くで制服を買えないか? どこのどんなのでもかまわない、僕は制服でないと絶対にアウトなんだぁ」
「だから知るかってぇのっ」
「アハハ。このクルマをイメージしてデザインされたユニフォームならトランクにあるよ、プレゼン時のムード盛り上げ用だから一応フォーマルでオシャレ」
「本当かっ。なんだ、女子にしては気が利くではないか」
「さぁ。男子ウケはしそうだけど、セラフィムにはどうだろう? 二着あるし、二人で着替えて行けば、何か意味があると勘繰ってはくれるはず。フォトジェニック・ファーストのセラフィムも、喰いついてくれるかもだよ」
バートリは笑う、実に愉しげに牙を