010 side B
文字数 1,734文字
「素直で率直なんだものワタシは、ガチにもマジにも全っ然っ伝わらな~い。そもそも、そのどっちにも取れる二重のニュアンスなんかまで使うから、親身になってくれる友達ができないんじゃないの? 結構ウザわかり難いもの、崎陽の言うことって」
声だけにもかかわらず、崎陽には和加が唇を尖らせてそっぽを向く様までが目に浮かんだ。
「……ホント、ストレートを打ち返してくるなぁ。けどさ、親身って、家族みたいにって意味だったはずだぞ。偶然に知り合う他人同士が家族同様になるなんてのは、相応のつながりの強さが必要だと思うんだよな」
「……例えばぁ?」
「ん~。ともに長い時間を過すなり、一緒に二つとない体験をするなりして、わかり合えたり分かち合える愉しさがないとムリなんじゃね? でもフツウ、そんな他人は滅多にいてくれやしないしさ。偶然って条件まで加えたら、もはや
「名ばかりで、ないに等しいと言うことね……」
「実の家族からして理解しようって気にもなりゃしない。お互い大あしらいがあたりまえで、それゆえ毎日誰かが怒鳴りだすまで好き勝手をし合っててさ……」
「ま、崎陽の家は確かにそうかも~」
「だろ? 他人同士の友情なんてもっとビミョ~だし。男はまず男を見下すか敵視するかのどっちかで、敵わないと観念したあと、一方的にもて囃すか当たり障りなくやり過すかなんだ。女子のことは知らんけど」
「ワタシだって知りませ~ん。でもぉ、さっきの澤部原市とは、崎陽が言うような家族の大あしらいをし合っていたカンジがするんだけれど」
「だからモブ同士、互いに見下し合ってるだけ。どうでもいいって意味での大あしらいだよ。家族と違ってさ、きり捨ても拾いなおしも自由、その時の気分や都合次第だからな。こっちはこっちで、善し悪しがないようなもんだって」
「……なんだか、物凄く寂しいことをヤケにわっさりと言うのね?」
和加の声は明暢 だが、わだかまるモノがありそうな口ぶり。
「そ? けどいいんじゃね? 大概みんな寂しいんだし、別に親身じゃなくても、親しげに話せる都合の好いモブダチがそこかしこで溢れ返ってるもんな。やいのやいの互いにヒマを潰し合ってれば、寂しさなんか存在しなかったかも同然にわっさり忘れちまえるアホなんだって、きっとまだオレたちの年代はさ」
「アホな年代にしては、随分と達観したような言いぐさね。でも世間一般的には、そんな相手のことを友達と呼ぶんだけれど、でしょ?」
「いんや違うね。オレが達観してみるに、友達ってのは親友候補だな。親友はもう家族も同然でさ、吉凶も禍福も身につまされる運命共同体とも言えちまう存在だって」
「……友達にはグレードがあるってこと?」
「まぁそう。何一つ親身になってくれない澤部なんか、オレだって何も身につまされやしないから、親友候補から完全に脱落して、ただの友達ですらなくモブダチと言ったまで」
崎陽は層一層わっさりと言い進 ぶ。
「何なんでしょ……よくわからないわ。この、処理方法が見つからない空転情況のような感覚って? もどかしさと処理してしまうべきなのかしら?」
「ほらな。それだって、オレが和加に常識の違いって言うか、国民性の違いみたいなモノをたびたびカンジちまうのは。あの昆スタンツェからは育ちや境遇の違いまでカンジたけど、それが和加には全然ないんで不思議だよな、逆にさ」
「……だってワタシは生まれも育ちも日本だものガチマジで。崎陽の方こそ、この国の高一にしてはヒネくれすぎぃ、そうカンジるわよたびたび」
「そこはさ、育ちや境遇でも家庭環境の違いってヤツじゃね? そりゃヒネくれもするって、鬼母の酷烈な支配下で際疾 く成長期を生きてるんだから」
「ホントお母さんのモブみたいねぇ崎陽は。それで、ワタシも崎陽の都合次第なおモブダチと言うことなのかしら?」
「何言ってんだ、どっちかと言やオレが和加のおモブだろが。都合次第なんかじゃ全然ない、つながるのがチョット遅れただけで、家デンにかけてくるまでの不都合さじゃないかよ。祖母ちゃんや祖父ちゃんが取ってる内は穏便に済ましてもらえるけど、今に母ちゃんが出て地獄を見るハメになるぞっ」
「ウフッ、それはワタシじゃなく崎陽がね~」
声だけにもかかわらず、崎陽には和加が唇を尖らせてそっぽを向く様までが目に浮かんだ。
「……ホント、ストレートを打ち返してくるなぁ。けどさ、親身って、家族みたいにって意味だったはずだぞ。偶然に知り合う他人同士が家族同様になるなんてのは、相応のつながりの強さが必要だと思うんだよな」
「……例えばぁ?」
「ん~。ともに長い時間を過すなり、一緒に二つとない体験をするなりして、わかり合えたり分かち合える愉しさがないとムリなんじゃね? でもフツウ、そんな他人は滅多にいてくれやしないしさ。偶然って条件まで加えたら、もはや
有って無かりし物
ってヤツじゃね?」「名ばかりで、ないに等しいと言うことね……」
「実の家族からして理解しようって気にもなりゃしない。お互い大あしらいがあたりまえで、それゆえ毎日誰かが怒鳴りだすまで好き勝手をし合っててさ……」
「ま、崎陽の家は確かにそうかも~」
「だろ? 他人同士の友情なんてもっとビミョ~だし。男はまず男を見下すか敵視するかのどっちかで、敵わないと観念したあと、一方的にもて囃すか当たり障りなくやり過すかなんだ。女子のことは知らんけど」
「ワタシだって知りませ~ん。でもぉ、さっきの澤部原市とは、崎陽が言うような家族の大あしらいをし合っていたカンジがするんだけれど」
「だからモブ同士、互いに見下し合ってるだけ。どうでもいいって意味での大あしらいだよ。家族と違ってさ、きり捨ても拾いなおしも自由、その時の気分や都合次第だからな。こっちはこっちで、善し悪しがないようなもんだって」
「……なんだか、物凄く寂しいことをヤケにわっさりと言うのね?」
和加の声は
「そ? けどいいんじゃね? 大概みんな寂しいんだし、別に親身じゃなくても、親しげに話せる都合の好いモブダチがそこかしこで溢れ返ってるもんな。やいのやいの互いにヒマを潰し合ってれば、寂しさなんか存在しなかったかも同然にわっさり忘れちまえるアホなんだって、きっとまだオレたちの年代はさ」
「アホな年代にしては、随分と達観したような言いぐさね。でも世間一般的には、そんな相手のことを友達と呼ぶんだけれど、でしょ?」
「いんや違うね。オレが達観してみるに、友達ってのは親友候補だな。親友はもう家族も同然でさ、吉凶も禍福も身につまされる運命共同体とも言えちまう存在だって」
「……友達にはグレードがあるってこと?」
「まぁそう。何一つ親身になってくれない澤部なんか、オレだって何も身につまされやしないから、親友候補から完全に脱落して、ただの友達ですらなくモブダチと言ったまで」
崎陽は層一層わっさりと言い
「何なんでしょ……よくわからないわ。この、処理方法が見つからない空転情況のような感覚って? もどかしさと処理してしまうべきなのかしら?」
「ほらな。それだって、オレが和加に常識の違いって言うか、国民性の違いみたいなモノをたびたびカンジちまうのは。あの昆スタンツェからは育ちや境遇の違いまでカンジたけど、それが和加には全然ないんで不思議だよな、逆にさ」
「……だってワタシは生まれも育ちも日本だものガチマジで。崎陽の方こそ、この国の高一にしてはヒネくれすぎぃ、そうカンジるわよたびたび」
「そこはさ、育ちや境遇でも家庭環境の違いってヤツじゃね? そりゃヒネくれもするって、鬼母の酷烈な支配下で
「ホントお母さんのモブみたいねぇ崎陽は。それで、ワタシも崎陽の都合次第なおモブダチと言うことなのかしら?」
「何言ってんだ、どっちかと言やオレが和加のおモブだろが。都合次第なんかじゃ全然ない、つながるのがチョット遅れただけで、家デンにかけてくるまでの不都合さじゃないかよ。祖母ちゃんや祖父ちゃんが取ってる内は穏便に済ましてもらえるけど、今に母ちゃんが出て地獄を見るハメになるぞっ」
「ウフッ、それはワタシじゃなく崎陽がね~」