033 ビーム砲にはパチンコで…… side A
文字数 1,939文字
「負ける理由づけも、そろそろ底をついたかしら~。チョット待ってねっ──」
「ぁあ? って、底なんか別に……」
和加は、椎座が組んでいるユニットのみで画像を集めなおし、それらに一画像ずつチェックを入れてはスクロールしていく様子まで、崎陽のミューツアルグラスへ表示し始める。
「ほらほら崎陽、ちゃんと見てるぅ?」
「何を? 目は開けてるちゃんと。だから見ずにはいられないって」
「ワタシは、ちゃんと見ているのかを聞いたんだけれど。さぁよ~く見て」
「……だから何をだよ──」が、ようやく崎陽にピンとくる──「ってこれ、ただのサヴァゲ用ゴーグルじゃなく、こいつのD‐ヴァイザーなんじゃねっ?」
「だからぁ?」
「なら、こいつもオルターエゴゥかよ! 端からオレ狙いで、練習戦は呼びつけるための口実だなんて……」
「やっとこさ、頭がまわりだしたみたいね」
「ガチか……道理で、起きてスグつながる約束を忘れたの、激怒らなかったはずだよな」
「そうだったぁ? 激怒ってあげてもいいんだけどワタシは~」
「いや、てか、そもや練習戦が勝手に決まってオレが条件だって情報を、和加がオレから初めて聞くなんてあり得るわけもなかったっ。全部知っててオレにシカトって何でだ? 負けたら怪物にSIMを捥がれて、こんなやり取りすら二度とできなくなっちまうかもなのに!」
崎陽にはふと、昨日負かしたあとのピスタの捨て鉢な卑屈ぶり、それまでの高慢さが、コロリンと反転した見苦しく疎ましい姿が思い起こされてしまっていた。
さらに崎陽は、SIMとともに圧略 されるのは、自分の中にある何か自分でもよくわからないものの、失ったが最後、一生悔やみ続けなければならないモノのような予感がしている。
敗北した場合、ピスタほどあからさまにはなれないだろうとの予想もよぎらせた崎陽は、自分がどんな鬼に衣の醜態を晒すハメになるのかまでは想像しきれず、その見当のつかなさから生じる恐怖心で背スジにビビりが走りぬけまくる。
「あれあれ~? 崎陽はワタシと関わるの、基本的にウザいんじゃなかったぁ。つながれなくなるのは、むしろ嬉しいだろうと思っていたんだけれど」
「……そんなこと、和加から言いだすってか今更……ああ、なるほどな。何のかんの言っときながら、このイケメン怪物には、オレじゃ絶対に勝てないって判断したわけかよっ」
「だって、戦意も闘志もウジウジで、負ける気だけが満満なんでしょう?」
「……ならいいって。前言は全撤回、タクラダ死 になんて絶対するもんかっ」
「はい?
「別に。こっちの話だし」
「タクラダはジャコウジカに似ていて、狩りの際に獲物じゃないのに殺されることから、無意味に出て来てムダ死にするマヌケという意味があるのねぇ……つまり崎陽は、無意味に倒されるのは嫌、勝つ気になってくれたわけなの?」
「フン、気持だけならな。戦闘開始と同時に打成一片 の一点突破で、怪物へギッチョンギチョンに当って砕け散るまでだっ。オレに流れる鬼の血は一度負けないと滾らないんで。残りの人生、全部かけても絶対にこの怪物をブチのめす……クソッ」
ミューツアルグラスに映る椎座の画像の一つを、あらためて注視する崎陽だが、対戦前から早ばやと決した己のくだらなすぎる生涯を呪わずにはいられない。
ダイヴィング用の酸素ボンベを思わせるハイパワード・ビーム砲の砲身をか易く肩に担いで小癪に笑う、その椎座を見る崎陽の目はグングン睨視へと変わっていく。
「ウンウン、かなりいいカンジ~。それでは作戦のディテールを詰めていきましょ、崎陽の必勝が期せるようにねっ」
「へ? ……って今日、初戦で勝つ気なのかよ」
「当然。気持の上では既に一度負けちゃったんでしょ? もう何が何でも勝利のみの一念で闘えるはずぅ。そのために崎陽が目覚めない内にと、あれやこれやと大急ぎで準備を整えたんだからぁ」
「……勝てる準備? そんな、いつこうなる情報を入手したのか知らんけど、昨日の今日だし時間は半日もなかったはずじゃね? 一体何が整ったんだよ」
「モォ~。ワタシは崎陽を信じているのに、崎陽はまだワタシをイマイチ信頼してくれていないんだからぁ。今回は、その認識をあらためさせちゃういいチャンスだわっ」
「って言うか、オレが全然オレ自身を信じられないってのに、そのオレを信じてるとか言っちまうからだろ。和加が自分で信頼度を下げてるんじゃね?」
「いいのっ。崎陽が自分を信じられなくたって、勝つまでヤル気になってくれさえすれば、それはもう勝てるのと同じことでしょ。その鬼の執念をワタシは信じているんだし~。それに見合う金棒くらい、パパッと準備できちゃうんだもの」
「ぁあ? って、底なんか別に……」
和加は、椎座が組んでいるユニットのみで画像を集めなおし、それらに一画像ずつチェックを入れてはスクロールしていく様子まで、崎陽のミューツアルグラスへ表示し始める。
「ほらほら崎陽、ちゃんと見てるぅ?」
「何を? 目は開けてるちゃんと。だから見ずにはいられないって」
「ワタシは、ちゃんと見ているのかを聞いたんだけれど。さぁよ~く見て」
「……だから何をだよ──」が、ようやく崎陽にピンとくる──「ってこれ、ただのサヴァゲ用ゴーグルじゃなく、こいつのD‐ヴァイザーなんじゃねっ?」
「だからぁ?」
「なら、こいつもオルターエゴゥかよ! 端からオレ狙いで、練習戦は呼びつけるための口実だなんて……」
「やっとこさ、頭がまわりだしたみたいね」
「ガチか……道理で、起きてスグつながる約束を忘れたの、激怒らなかったはずだよな」
「そうだったぁ? 激怒ってあげてもいいんだけどワタシは~」
「いや、てか、そもや練習戦が勝手に決まってオレが条件だって情報を、和加がオレから初めて聞くなんてあり得るわけもなかったっ。全部知っててオレにシカトって何でだ? 負けたら怪物にSIMを捥がれて、こんなやり取りすら二度とできなくなっちまうかもなのに!」
崎陽にはふと、昨日負かしたあとのピスタの捨て鉢な卑屈ぶり、それまでの高慢さが、コロリンと反転した見苦しく疎ましい姿が思い起こされてしまっていた。
さらに崎陽は、SIMとともに
敗北した場合、ピスタほどあからさまにはなれないだろうとの予想もよぎらせた崎陽は、自分がどんな鬼に衣の醜態を晒すハメになるのかまでは想像しきれず、その見当のつかなさから生じる恐怖心で背スジにビビりが走りぬけまくる。
「あれあれ~? 崎陽はワタシと関わるの、基本的にウザいんじゃなかったぁ。つながれなくなるのは、むしろ嬉しいだろうと思っていたんだけれど」
「……そんなこと、和加から言いだすってか今更……ああ、なるほどな。何のかんの言っときながら、このイケメン怪物には、オレじゃ絶対に勝てないって判断したわけかよっ」
「だって、戦意も闘志もウジウジで、負ける気だけが満満なんでしょう?」
「……ならいいって。前言は全撤回、タクラダ
「はい?
タクラダ死に
、なんて言葉はどこにも見当たらないんだけれどぉ……」「別に。こっちの話だし」
「タクラダはジャコウジカに似ていて、狩りの際に獲物じゃないのに殺されることから、無意味に出て来てムダ死にするマヌケという意味があるのねぇ……つまり崎陽は、無意味に倒されるのは嫌、勝つ気になってくれたわけなの?」
「フン、気持だけならな。戦闘開始と同時に
ミューツアルグラスに映る椎座の画像の一つを、あらためて注視する崎陽だが、対戦前から早ばやと決した己のくだらなすぎる生涯を呪わずにはいられない。
ダイヴィング用の酸素ボンベを思わせるハイパワード・ビーム砲の砲身をか易く肩に担いで小癪に笑う、その椎座を見る崎陽の目はグングン睨視へと変わっていく。
「ウンウン、かなりいいカンジ~。それでは作戦のディテールを詰めていきましょ、崎陽の必勝が期せるようにねっ」
「へ? ……って今日、初戦で勝つ気なのかよ」
「当然。気持の上では既に一度負けちゃったんでしょ? もう何が何でも勝利のみの一念で闘えるはずぅ。そのために崎陽が目覚めない内にと、あれやこれやと大急ぎで準備を整えたんだからぁ」
「……勝てる準備? そんな、いつこうなる情報を入手したのか知らんけど、昨日の今日だし時間は半日もなかったはずじゃね? 一体何が整ったんだよ」
「モォ~。ワタシは崎陽を信じているのに、崎陽はまだワタシをイマイチ信頼してくれていないんだからぁ。今回は、その認識をあらためさせちゃういいチャンスだわっ」
「って言うか、オレが全然オレ自身を信じられないってのに、そのオレを信じてるとか言っちまうからだろ。和加が自分で信頼度を下げてるんじゃね?」
「いいのっ。崎陽が自分を信じられなくたって、勝つまでヤル気になってくれさえすれば、それはもう勝てるのと同じことでしょ。その鬼の執念をワタシは信じているんだし~。それに見合う金棒くらい、パパッと準備できちゃうんだもの」