046               side B

文字数 1,659文字

「貴様こそ恐ろしいぞ、その程度の知識も入れずにここにいるとは」

「だろ? オレも恐ろしくなるけど、毎度今みたくそれどころじゃなくてさ」

「もぉいい、敵から撃れた光線も実体ある武器でしか防げないのだっ。レイ‐ガン同士の撃ち合いで最も注意しなければならないのは、相撃ちによる共倒れ。互いの光線は衝突してもすりぬけて、ディテクタースーツを反応させヒット判定信号を送信してしまう」

「ん? だから何だよ」

「見てわからんか? このライトニングセイバーは、上身が実体として存在し、そこが光るだけなのだ」

「……で?」

「ほんにバッタだなっ。その発光が、斬った‐突いたの反応を生み判定にも使われる。ゆえに素速く振れば盾となり得て、レイ‐ガン同様に剣先から光線も射出できるのだ。扱う技術さえあれば、アドヴァンテージはかなり高いと言えるっ」

「へ~、意外だな。そう言うことって常識なのか?」

「はっは~。僕もさっきフィフから教わっただけだぁ」

「ったく。でもその光線剣の類って、なんかオールラウンドっぽく聞こえるけどさ、ほかに誰も使ってなくね?」

「確かにサブ・アーム的存在らしいし、サブにするにも邪魔クサいだろうからな。サーベルを振り突き極めた僕だから、高確率で盾になってくれて攻撃も銃器の精度で喰らわせられるっ。選ばれし者の中でも、さらなる卓抜のみが両手にできる僕に絶好の得物な~のだ。脳ミソがないなら触角にでも刻んでおけ、このバッタめが」

「……嫌でも刻まれたけどさ、そんな高らかに言うなって──」

 ピスタに突かれてヒット判定を受けるや、すごすごと退場のために引き返していた相手がチラリふり返った手前、崎陽はペコリの会釈でも送礼する。

「ま、そうだが。高らかくらいが、ちょうどいい状況なのでなぁ」

「って言うか、この大ブーイングに少しはビビれば? 今にあんたが道火で、セラフィムのSNSが大炎上しちまってもしらねぇぞっ」

「しろしろ燃えろ~。今やギャップの凄まじさが何よりの決め手、僕がキモウケるだけのピスタっちではないことを、彼女たちにも刻み込んじゃるチャンスだぁ」

「あっそ……一応見なおしたけどさ、礼は言わないよ。当然借りとも思わない、あんたがついて来なけりゃ相手ユニットに見つからなかった自信があるから。きっとこの位置が椎座に伝わってるって、オレの相棒がうるさいしさ」

「ケチショボいこと言うな~。つまりはもうザコ敵はこっちに来ないのだっ。怪物を歓迎するのに適した地点が、もう少し行った所にあるぞ。貴様はそこで待ち受ければいい」

「……そ? けど、逆にあんたは景気好すぎるカンジがヤバげ~」

「おぅ、バブル景気とやらだろうと上等だっ。怪物が来るまで、入りそうな邪魔は僕が全て排除して、賞賛ブーイングの嵐を浴びまくってやろうぞぉ。僕には無視や無反応以外はみな声援だ、さぁこいエクスタシー・アンド・オーガズム~ッ」

 ピスタは早くも勝利を収めたかのような渾身で、両腕を空へ突き上げ歩きだす。

「……なぁピスタ、実はメチャクチャ眠いんじゃね?」

「眠さはどうでもいい。ノッドの襲来がヤバいのだ僕はっ、完全に自制を失うかもだからな。それをゾーンやフロー状態と称するコーチもいたが、好い方へ転がるとは限らない~。無意識の内に、コーチともども何度リア充どもを病院送りにしたことか、だ!」

「ガチでか~、あんたも別種の怪物だったとはねぇ……アハ」

「何だ? 今、完全にイカレるなっ」

「いや、なんかオモロそうなことひらめいただけ。ピスタもさ、見えなくてもクモの巣に絡まってるのは嫌じゃね? オレに協力してくれよ、その強さを見込んでお願いするって」
 
「おぉ聞くぞ。お願いなど無用だ、僕は協力のためだけにここにいるっ」

 崎陽は、成功するかどうかはとりあえず脇に置き、思いついた迷案をピスタへ説き起こす。

 話が半分も終わらない内に和加が異議を唱えだしたが、崎陽はヴォリームに手を伸ばそうとすらしない馬耳東風を決め込み続ける。

  ピスタの方もいよいよ増して、意気までも怪気炎をあげていった。
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登場人物紹介

当作は ”ワケあり” ということから、情報ナシにてお愉しみいただければと……

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