035 昼月という名のカワサムな美女子…… side A

文字数 1,607文字

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 プレジャーガン二大大会の一つBGWでは、ユニットの制圧力をレイ‐ガンによる光線の撃ち合いのみで競うところが、ニュースタイルと言われる由縁(ゆえん)

 そして、もう一つのCUCは、事歴あるサヴァイヴァルゲームに体系的ルールを定めて、さまざまな戦闘単位‐戦闘スタイル‐戦闘装備、それら混成ゲームまでもをとり纏めた融通自在さが特徴となる。

 本日の練習戦も、スリングショットを使う崎陽がエントリーするため、俗に言うCUCルールのレギュレーションが適用されることとなっていた。
 レイ‐ガンだけでなく、光の刃を発生させるELソード類の使用も許されるが、実弾発射銃器および刀剣類は須らく、カラーペイントを付着させるにとどめた安全な弾丸と切刃(きりは)のみでなければ使用が認められない。

 対外戦となれば、そうした武装の安全性の確認は、二大大会運営組織のレフェリー講習を受けてライセンスを取得した者が、三名以上で行うことも規定となっている。

 なので、このプラクティカルフィールドに勤務する資格を有した職員だけではなしに、帝政義学大附属と桜嶺のOBたちから集めた審判団で、公正かつ厳格に全てがチェックされる運びとなった。

 しかしながら、通例では、標準規格をクリアした安全マーク表示の確認程度で済んでしまう作業も、崎陽の規格外なラウンダルの安全性は試し撃ちで確かめるしかない。

 それを、自分に先んじて、初対面の他人にやられてしまうもどかしさに気をもみつつ、崎陽も戦闘開始前のピリついた時間を過さなければならなかった。
 
 そんな中、チェック作業が思いのほか長引いている旨を伝えるため、澤部がどしどしと崎陽を超えた苛立ちも露にやって来る。

「おいっ崎陽、何なんだあの二人? 見ねぇツラだけど、おまえのツレなら余計な口出しすんなと言って来い。そのせいでTTFが押してるみてぇだしっ」

 澤部が顎をしゃくって見せた方向には、フィールドを囲う三メートル高くなった壁の上で広がる観戦席の、その中央最前部に設けた本部ヤードがあった。
 一人頭ぬけたフィフが、長すぎる腕を妖氛(ようふん)に振り振り熱弁をふるっている様が窺える。

 牙は、ぴったりフィットの立体成形マスクで顔下半分ごと隠秘しているせいもあって、その姿は奸邪な呪いでもかけ撒いているかのよう。

 さらにその手前では、ピスタの顔も覗けている。
 セラフィムから言われるままに、恰も本部の延長みたく実況目的のネット配信ブースを拵え終え、実に得意満面といった表情。

 ここからは一駅しか離れていない、伐々木女子高等学校音楽科に通うセラフィム四人目のメンバー、又梁昼月(またはり・ひるつき)までが加わっているとあって、ピスタのはしゃぎぶりは崎陽も到着時から目にも耳にも障りまくってはいた。

 練習戦へのモノとは全く別の癇を立たせてくれるものの、ピスタのそれが和加の言い励まし以上に、気分がナーヴァスからシリアスへ走ろうとするのを躓かせ続けていると言えなくもなく、澤部ほどの不快さには達していない崎陽だった。

「知るかよ、昨日知り合ったばっかの顔見知り程度でツレじゃあない。さっき土下寝っぽく低頭平身してたのは、あれが、狂犬被害の現場から助け出してくれた二重国籍人と、セラフィムの見張り番になってくれそうな狂犬だからにすぎないって」

「知るかっ。こんな時にまでクソアホなことほざくんじゃねぇっての」

「事実だからしょうがない。んで、そのTTFって?」

「テイク・ザ・フィールド、戦闘開始っ。ゲームを始める時間のことだ。ったく、その辺のおまえの若年寄りぶりは最クソのナゥヤン級だよなっ。ちなみに、ナゥいヤングって死語を発掘して略した化石語だから、それも頭ん中の糠ミソによ~く漬け込んどけ」

「なら最初からそう言えっての、ったくイチイチ。おまえらこそジャーゴン(専門用語)を気取るその傾向、排他意識高い系でも、徒党的でギャング化の前段階っていう最ビチグソな厨二病症状じゃね?」
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登場人物紹介

当作は ”ワケあり” ということから、情報ナシにてお愉しみいただければと……

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