030 side B
文字数 2,491文字
「ん~。その辺からして、まるでピンとこないんだけどなぁ」
「こんの十代失格野郎が! セラフィムとサヴァゲネタでつながれるとなりゃ、日本一のサヴァゲ部主将ですら、PG話までもちかけて親しくなっとくのが常識的流れなんだっ。実際にバトる俺たちは完全に置き去りの事後承諾で、セラフィムとの間だけで勝手に盛り上がられちまうのも当然のなりゆきなんだよっ」
「あっそ……」
「昨日されてた配信じゃ、おまえは爆笑パチンコ勇者、俺たちはそれに寄って集って返り討ちにされた賊虐サークルときたもんだっ。このままにしておけるもんか、爆笑なんかおまえ独りでされてろっての」
澤部毎度の舌剣主軸の力説も、ピンとくるほど耳に留める気すらない崎陽だが、何かと迷惑でもて悩みぐさとなっているセラフィムにはもう、災いを招こうとかまわない毒突きが直截的に出てしまう。
「ったく。どうであれ、ま~たあの残酷天使どもの仕業かよ。って言うか、誑 かされてる十代の大半こそが人間失格だってぇのっ」
そう腐しながら、そもそもは昨日、昆スタンツェにピスタをいきなり紹介するだけして、一人とっとと逃げ去った不届きが起因しているだろうことを、今ようやっと思い及べる崎陽だった。
全ては、崎陽自身が罰 当たりな場所に、火種をまき散らしていただけのこと。
「まぁ賊虐サークルは言いすぎだけれども、そんなイメージは君が会の一員として戦ってくれたら払拭できるし、何よりパチンコを武器にかなりの腕コキというのが激ウケしちゃったようなんだ。帝政義学大附属サヴァゲ部で最強を誇るユニットカイザーの絶対エース、椎座 ・ジュリアス・凱填 にね」
「椎座からの招待を辞退したなんて拡散されたら、俺たちは間違いなく次の大会で、どのユニットからもバトる前からビビリの負け犬扱いだ。敗北を喫すのは仕方がなくても、バトって一矢報いる根性すらない腰ぬけのレッテルを貼られてしまう。一度貼られたら剥がれやしない、桜嶺が日本一になろうが貶され方が変わるだけだっ」
会長に続く副会長の畳みかけにも、てんでピンとこない崎陽は、これでは埒が明きそうもないことだけがピンときていた。
「……だからぁ、オレに関係ないですよね全っ然っ?」
「う~ん、まぁ確かにね。ウチの会の立場的なことには関係はないけれども、完全に無関係とは言えないんじゃないかな? セラフィムからのメールには、君に迷惑なフォロワーを押しつけられた甚大な貸しがあるともあったし。その借りを、ウチの会の一員となってバトることで早いトコ返せと焚きつけているんじゃないのかな?」
会長は苦し紛れのように託 けたものの、それが埒の明けていく道火となる。
崎陽には、痛いところを衝きゆるがされるのに充分なハードブロー。
「……何でそうなるかなぁ、その件はオレだって被害者なのに。会わせなけりゃ死ぬとか、ネトネト脅迫されたらしょうがないでしょうに。大体、迷惑だろうがあいつらのフォロワーじゃないですかっ」
「いやいや~崎陽君、それを今、俺たちに言われてもなんだなぁ。とにかくセラフィムに文句をつけるためにも、ここは一緒に行っておくしかないんじゃないかな?」
「ったく。会長ってのは、どいつもこうだよな、いっつも……」
「その負傷が本当なら、ムリをしなくて全然いいし、勝つために古今未倒の椎座を倒してくれとまでは頼んでいないし。JBさえしてくれれば、PGの条件はクリアできるのだからさ」
「おぉ~そのとおりだった会長っ、崎陽はスグにやられてかまわない。どうせあっちも、おまえのナメたパチンコ攻撃を血祭りにあげて爆笑したいだけ、俺たちも試したい戦術が山ほどある。なっ、早く用意をして来い。朝メシも奢るし床屋は帰りに寄ればいい、もうカット代だって出してやるからっ」
「……副会長ってのも、どこでも一緒だクソッ」
副会長はダメ押しで、崎陽の母親へと忠実 やかに向きなおる──。
「ねっお母さん。神に誓って悪事の誘いではありませんから、今日一日息子さんを貸してください。何なら晩メシも喰わせますので、少しは家事が楽になるんじゃないですか?」
「そぉねぇ。そこまではいいから、晩ゴハンまでには帰してちょうだい。なら、行っといでトシ坊、浮いた床屋代で私がヘアスタイリングしに行っちゃおうかしらぁ」
「鬼っ。それが母親の吐くセリフかよ、左腕はガチで痛いってのに」
「あんたこそお客さんたちの前でっ。もぉ行くだけだって言うから許そうと思ったけど、そんなの許さない。腕なんか捥げてなければ大丈夫よ、勝負なら何が何でも勝って来な! 勝ち返すためのおカネは絶対に出さないんだからねっ」
そう崎陽に言い放った崎陽の母親は、鬼鬼しく尖らせた瞋目 で副会長を見据える──。
「……はいっ。何でしょうか?」
「もし負けたりしたら、丸剃り坊主にしてやってちょうだい、いいわね! 守らないと、あんたの頭を皮ごと毟り剥いてやるわよっ」
「えぇっ……」
副会長は自分の耳を疑いつつも、今自分に言い放たれたことの真意を問うように泳ぎ気味の視線を崎陽へ投じた。
「オレは一切関知しませんけど、マジで言ってますし、ガチにやるかもですから」
「ガチって……」
副会長はフリーズするも視線だけをじわりじわり、ズラしてできる限り自分の視界から、崎陽の母親をはずしにかかる。
「ええ。本当は世間体とかからどうでもいい鬼母なんでね~、そこにいる、とっつきは人当たり好さげで、融通も利かせてくれそうな若づくりオバハンはっ」
「何だってぇ! この悪タレ小僧がっ」
「さ~て、支度支度っと」
憤激する母親を往なすのは、客前ならば慣れたモノ。階段も途中の狭い踏み面 の上ですばしこく踵を返した崎陽は、すんすん四段飛ばしで階段を駆け戻って行く。
その、ふてぶてしさも甚だしい引き際の良さに、崎陽の母親は層倍以上に跳ね上がったムカつきを、そのまま眼光に表して再び副会長を睨まえた。
「は、はい! 重重了解してますのでお母さん、負けたら丸剃り坊主ですよねっ」
「こんの十代失格野郎が! セラフィムとサヴァゲネタでつながれるとなりゃ、日本一のサヴァゲ部主将ですら、PG話までもちかけて親しくなっとくのが常識的流れなんだっ。実際にバトる俺たちは完全に置き去りの事後承諾で、セラフィムとの間だけで勝手に盛り上がられちまうのも当然のなりゆきなんだよっ」
「あっそ……」
「昨日されてた配信じゃ、おまえは爆笑パチンコ勇者、俺たちはそれに寄って集って返り討ちにされた賊虐サークルときたもんだっ。このままにしておけるもんか、爆笑なんかおまえ独りでされてろっての」
澤部毎度の舌剣主軸の力説も、ピンとくるほど耳に留める気すらない崎陽だが、何かと迷惑でもて悩みぐさとなっているセラフィムにはもう、災いを招こうとかまわない毒突きが直截的に出てしまう。
「ったく。どうであれ、ま~たあの残酷天使どもの仕業かよ。って言うか、
いいね!
やアクセス数を伸ばすために、非のないトコに火を点けすぎて堕天しちまってる悪魔だよな。それにそう腐しながら、そもそもは昨日、昆スタンツェにピスタをいきなり紹介するだけして、一人とっとと逃げ去った不届きが起因しているだろうことを、今ようやっと思い及べる崎陽だった。
全ては、崎陽自身が
「まぁ賊虐サークルは言いすぎだけれども、そんなイメージは君が会の一員として戦ってくれたら払拭できるし、何よりパチンコを武器にかなりの腕コキというのが激ウケしちゃったようなんだ。帝政義学大附属サヴァゲ部で最強を誇るユニットカイザーの絶対エース、
「椎座からの招待を辞退したなんて拡散されたら、俺たちは間違いなく次の大会で、どのユニットからもバトる前からビビリの負け犬扱いだ。敗北を喫すのは仕方がなくても、バトって一矢報いる根性すらない腰ぬけのレッテルを貼られてしまう。一度貼られたら剥がれやしない、桜嶺が日本一になろうが貶され方が変わるだけだっ」
会長に続く副会長の畳みかけにも、てんでピンとこない崎陽は、これでは埒が明きそうもないことだけがピンときていた。
「……だからぁ、オレに関係ないですよね全っ然っ?」
「う~ん、まぁ確かにね。ウチの会の立場的なことには関係はないけれども、完全に無関係とは言えないんじゃないかな? セラフィムからのメールには、君に迷惑なフォロワーを押しつけられた甚大な貸しがあるともあったし。その借りを、ウチの会の一員となってバトることで早いトコ返せと焚きつけているんじゃないのかな?」
会長は苦し紛れのように
崎陽には、痛いところを衝きゆるがされるのに充分なハードブロー。
「……何でそうなるかなぁ、その件はオレだって被害者なのに。会わせなけりゃ死ぬとか、ネトネト脅迫されたらしょうがないでしょうに。大体、迷惑だろうがあいつらのフォロワーじゃないですかっ」
「いやいや~崎陽君、それを今、俺たちに言われてもなんだなぁ。とにかくセラフィムに文句をつけるためにも、ここは一緒に行っておくしかないんじゃないかな?」
「ったく。会長ってのは、どいつもこうだよな、いっつも……」
「その負傷が本当なら、ムリをしなくて全然いいし、勝つために古今未倒の椎座を倒してくれとまでは頼んでいないし。JBさえしてくれれば、PGの条件はクリアできるのだからさ」
「おぉ~そのとおりだった会長っ、崎陽はスグにやられてかまわない。どうせあっちも、おまえのナメたパチンコ攻撃を血祭りにあげて爆笑したいだけ、俺たちも試したい戦術が山ほどある。なっ、早く用意をして来い。朝メシも奢るし床屋は帰りに寄ればいい、もうカット代だって出してやるからっ」
「……副会長ってのも、どこでも一緒だクソッ」
副会長はダメ押しで、崎陽の母親へと
「ねっお母さん。神に誓って悪事の誘いではありませんから、今日一日息子さんを貸してください。何なら晩メシも喰わせますので、少しは家事が楽になるんじゃないですか?」
「そぉねぇ。そこまではいいから、晩ゴハンまでには帰してちょうだい。なら、行っといでトシ坊、浮いた床屋代で私がヘアスタイリングしに行っちゃおうかしらぁ」
「鬼っ。それが母親の吐くセリフかよ、左腕はガチで痛いってのに」
「あんたこそお客さんたちの前でっ。もぉ行くだけだって言うから許そうと思ったけど、そんなの許さない。腕なんか捥げてなければ大丈夫よ、勝負なら何が何でも勝って来な! 勝ち返すためのおカネは絶対に出さないんだからねっ」
そう崎陽に言い放った崎陽の母親は、鬼鬼しく尖らせた
「……はいっ。何でしょうか?」
「もし負けたりしたら、丸剃り坊主にしてやってちょうだい、いいわね! 守らないと、あんたの頭を皮ごと毟り剥いてやるわよっ」
「えぇっ……」
副会長は自分の耳を疑いつつも、今自分に言い放たれたことの真意を問うように泳ぎ気味の視線を崎陽へ投じた。
「オレは一切関知しませんけど、マジで言ってますし、ガチにやるかもですから」
「ガチって……」
副会長はフリーズするも視線だけをじわりじわり、ズラしてできる限り自分の視界から、崎陽の母親をはずしにかかる。
「ええ。本当は世間体とかからどうでもいい鬼母なんでね~、そこにいる、とっつきは人当たり好さげで、融通も利かせてくれそうな若づくりオバハンはっ」
「何だってぇ! この悪タレ小僧がっ」
「さ~て、支度支度っと」
憤激する母親を往なすのは、客前ならば慣れたモノ。階段も途中の狭い踏み
その、ふてぶてしさも甚だしい引き際の良さに、崎陽の母親は層倍以上に跳ね上がったムカつきを、そのまま眼光に表して再び副会長を睨まえた。
「は、はい! 重重了解してますのでお母さん、負けたら丸剃り坊主ですよねっ」