第14話 再就職

文字数 869文字

 夫が再就職した。
 退屈地獄に耐えかねて。
 ハローワークに行き、いろいろ検索していた。希望は午前中だけ、週4日。体を動かす仕事がいい。
 数件ネットの求人に応募したが、体よく断られた。年齢が……68歳。女性なら、掃除や配膳があるだろうが。まあ男女差別はないはず。
 うちの施設にも男性の高齢者が清掃にくるがすぐ辞める。年下の女性に指図され、認知症のお年寄りに怒鳴られ、長続きはしない。

 何度も断られたが、今度はスーパーの朝の品出しを見つけた。早朝5時から9時まで。
 5時からって、何時に起きる? 
 受かったって、私は起きないよ。

 よほど人が足りないのだろう。受かってしまった。
 仕事には真面目な人だ。熱心に勉強する。カッターや軍手も自前で買ってくる。白のポロシャツに黒いズボンに黒い靴。何セット揃えた?

 早起きは苦ではない。いつでも新聞が届く3時過ぎには起きて、読んでから2度寝していた。
 ごはんに納豆、インスタント味噌汁。ほとんどそれだけ、自分で用意して食べていく。
 自転車も整備して、お尻が痛くなるからと、サドルカバーも買った。

 楽しそうだ。大手のスーパー。かなり厳しいらしい。覚えることがたくさんある。
 仕事の内容をよく話す。以前は酔うと愚痴くらいしか言わなかったのに。
 商品のことを話す。油揚げや豆腐の種類の多さ、冷凍食品は手袋をしていても手の感覚がなくなるのに、女性は黙々とやっている。女性は強い。と。
 開店時間にドアを開ける係なのだ。今日はトイレ掃除もするそうだ。 
 楽しそうだ。客によく声をかけられるらしい。タピオカ、どこですか? とか。
 妻の仕事の話は聞かないくせに、よく喋る。まあ、続けばいいけれど。

 しかし。朝4時間働いて帰るとどうするか?

 ビールがこのうえもなく美味いのだ。
 それは、困る。1日の酒量を超えませんように。
 今日は給料日だ。半月働いた分が入る。給与明細もネットで見る。昨日、苦労して何度もIDを入力していた。
 毎回少しだが残業をしているので思ったより多かった。
 焼肉ご馳走するって。
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