第26話 映画を3本

文字数 2,877文字

『偽名を名乗る猫』
 難しいお題です。というより、突拍子もないお題。ずっと考えていました。

 偽名、偽名、偽名を名乗る……
 猫、ネコ、ネコ……

 猫といえば……キティー。
 海外ドラマによく出てくる、猫に多い名前。
 キティキティ、キティー。

 ああ、キティー様。

 私も中学の頃は真似をして日記を書きました。
 キティー様。
 三日坊主で終わりすみません。

 日記からの連想。

 偽名? 偽名を使うのはなんのため?
 身元を隠す。
 なぜ?
 残党狩りを逃れ、生き延びるため。



【愛の嵐】 1974年のイタリア映画。

 1957年、冬のウィーン。
 とあるホテルで夜番のフロント係として働くマックスは、戦時中はナチス親衛隊の将校で、現在は素性を隠してひっそりと暮らしていた。
 ある日、客としてアメリカから有名なオペラ指揮者が訪れる。マックスはフロントに現れた指揮者の妻を見て困惑する。
 彼女、ルチアは13年前、マックスが強制収容所で弄んだユダヤ人の少女であったからだ。

 ホテルの一室に元ナチ将校の面々が集まっていた。彼らは戦後のナチ残党狩りを生き延びるために、ナチス時代の所業を互いにもみ消し合い、時には証人の抹殺まで行っていた。
 そんな彼らの会合の中で、図らずもルチアの存在が取りざたされる。

(リリアーナ・カヴァーニが、倒錯した愛とエロスを見せる一編。ルキノ・ヴィスコンティが絶賛したと言われる)

✳︎
 
  オーストリアは1942年の時点で、国民のおよそ10パーセントにあたる68万8478人がナチ党員であった。その比率はドイツ側の7パーセントを大きく上回る。
 この数値からオーストリア国民のナチ政策への加担は極めて大きかったことがわかる。
 彼らの一部は親衛隊に志願し、ユダヤ人の摘発、移送や東方のドイツ占領地域にあった強制収容所管理業務等において重要な役割を果たしていた。
 ユダヤ人迫害の責任者になったアイヒマン親衛隊中佐はオーストリアで育っている。
 極右はドイツよりもヒトラーの母国であるオーストリアで強い支持を得ている。

 ヘルベルト・フォン・カラヤンは、オーストリア=ハンガリー帝国、ザルツブルク公国ザルツブルク生まれの指揮者。
 ナチ党員だった。
 


【フリーダム・ライターズ】
 アメリカ合衆国での実話を基にした2007年の映画。

 1994年、ロサンゼルス郊外の公立高校に赴任した新人英語教師・エリン・グルーウェルは、荒れ放題のクラスを受け持つことになる。
 人種ごとにいがみ合い、授業を受ける気など更々ない生徒たちを相手に、エリンは授業の進め方に苦心する。
 ある日の授業中、ラテンアメリカ系のティトが黒人のジャマルをバカにした絵を描く。
 エリンはその絵を見て、第二次世界大戦のホロコーストがこうした差別から生まれたことを説明するが、生徒たちは理解ができない。

「ホロコーストを知らないの?」(驚愕!)


 エリンは『アンネの日記』を教材にしようとするが、教科長に予算の無駄と拒否されてしまう。 
 エリンは毎日何でもいいから日記を書くように、と1冊ずつノートを配る。
 最初は罵り言葉ばかりしか書いていなかった生徒たちは次第に「自分の声で語る」ようになり、エリンは生徒たちの環境の厳しさを知るようになる。
 エリンは日記を通して、生徒たちと向き合うようになり、生徒たちも次第にエリンに心を開いていき、悲観的だった将来を改めていく。
 アンネ一家を支えていたミープ・ヒースも招待する。

 生徒たちが書いた日記は、集められて1冊の本として出版され、ベストセラーとなった。その後、グルーウェルと生徒らによりNPO団体「フリーダム・ライターズ基金」が設立された。
  2008年7月3日、フジテレビ系『奇跡体験!アンビリバボー』で取り上げられた。



【手紙は覚えている】
 2015年製作のカナダ、ドイツ映画。ホロコーストを題材にしたサスペンス映画。

 ゼヴは今年90歳で、ニューヨークの介護施設で暮らしている。最近は認知症が進行し、最愛の妻、ルースが死んだことさえ忘れてしまうようになっていた。

 ある日、ゼヴは友人のマックスから1通の手紙を託される。
 2人はアウシュビッツ収容所からの生還者で、ナチスに大切な家族を殺されていた。
 その手紙には2人の家族を殺したナチスの兵士に関する情報が記されていた。その兵士の名はオットー・ヴァリッシュといい、現在は"ルディ・コランダー"という偽名を使って暮らしているという。
 体が不自由なマックスに代わりゼヴは復讐を決意、1通の手紙とかすかな記憶だけを頼りに、単身オットー・ヴァリッシュを探しに旅に出る。

ーーーー
 
 ルディー・コランダーの家に向かい、コランダーの娘と孫に出迎えられ、遂に"ルディ・コランダー"と対面する。
 コランダーに
「家族に聞かれたくないから外で話そう」
と促され、テラスへ移動する。
 その時、セヴの息子、チャールズがコランダー家を訪れ、コランダーの娘と孫がテラスへ案内する。
 そこにはコランダーに銃を突きつけるゼヴがおり、3人は驚愕する。孫に銃を向けられたコランダーは、
「自分は捕虜ではなくナチスであったこと、アウシュビッツのブロック責任者としてユダヤ人虐殺に加担したこと、ドイツ人としての本名はクニベルト・シュトルムであること」
を打ち明ける。
 ゼヴが「ちがう、お前はオットー・ヴァリッシュだ」と問いただすもコランダーは「ゼヴこそがオットー・ヴァリッシュだ」と主張する。
 話を聞けばコランダーとゼヴは2人ともアウシュビッツのブロック責任者であり、終戦の際、ユダヤ人であると偽ってアメリカへ渡った。
 腕の囚人番号もユダヤ人だと偽るために自分たちで彫ったものだという。その証拠にコランダーの左腕には、ゼヴの囚人番号より1つ若い番号が彫られていた。
 ゼヴは混乱し、詰め寄るコランダーを撃ってしまう。そしてすべてを思い出したゼヴは、息子のチャールズの顔を見た後、自らの頭を撃ち抜き自殺する。

 後日、ゼヴがいた介護施設で老人たちがニュースを見ており、コランダー家で起きた事件が報じられていた。
 老人たちは、ゼヴは自分が何をしたかわかっていないのだろうと話すが、マックスは老人たちに「ゼヴは自分がしたことをわかっている。ゼヴが殺した男の名はクニベルト・シュトルム、ゼヴの本当の名はオットー・ヴァリッシュ、その2人が自分の家族を殺した」ことを話す。
 すべてはマックスによって仕組まれた壮大な復讐だったのである。

✳︎


 ドラマ『相棒』で、赤ん坊の写真を見せられた右京さん。
「ヒトラーですね」
 過去に戻れたら(?)「ヒトラーを殺すか?」と聞かれた場面があった。
 なんと答えたかは覚えていない。

(Wikipedia参考にしました)

 ハマスによるイスラエルに対する大規模な攻撃は、ドイツ人たちにも強い衝撃を与えた。ショルツ政権はイスラエルを全面的に支持する姿勢を、打ち出した。その背景には、ナチスによるユダヤ人虐殺を決して相対化せず、国家として永久に責任を認めるという「国是」がある。
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