第2話 謳歌できるか?

文字数 1,167文字

 NOVEL DAYSのある方のエッセイを読んで感激した。75歳でも働いている。妻の幸せが自分の幸せだという…… 羨ましい。

 夫が退職した。
 65歳の時から私も周りも引き伸ばしてきた。あと、1年、もう1年、もう1年。なんとか70歳まで頑張ってくれないものか? 

 マンションを買ったのが早かったから、ローンは完済した。
 結婚して半年暮らした、あなたの住んでいたアパートは、風呂もなく日も当たらない『うなぎの寝所(ねどこ)
 玄関がなかった! 洗濯機は廊下。初めて行った時は驚いた。家賃は安かったが。

 酒を飲めば銭湯には行かない。私は夜ひとりで行くのが嫌だから仕事の帰りに夕方寄ってきた。下の階の八百屋のおばさんが背中を流してくれた。懐かしい。
 十年以上あとに、おばさんの息子と私の娘が中学で同じクラスになってびっくり。

 そのアパートで半年暮らしたが、子供が生まれる前にいろいろ考えた。
 ちょうど入ってきたマンションのチラシ、近かったのですぐに見に行った。まだ、マンションはあまり建っていなかった時代。周りはプロパンガスだから、ガスはない。電気温水器に、キッチンは電熱器で、シンクがふたつ。(ダブルシンクという)
 すぐに気に入った。こんなところで料理ができたら天国だわ、と確かに思った。

 会社の経理に相談したら、おまえ、勇気あるなあ、と言われたとか。まだ、金利が5、5の時代。26歳の夫ひとりの収入で返していくのは大変だった。
 子供が3人生まれた。40歳過ぎるまで貯金などできやしない。
 ただ、そのあとに家を買った人たちは、まだまだローンが残っているから、仕事を辞めるわけにはいかないという。

 60歳でいただいた退職金は小さな会社だから……それに金利が上がらない時代。増えるはずだった退職金は増えてない! 
 リフォームも海外旅行も夢の夢夢……
 
 でも、年金生活でもケチケチしたくないね。私は、好きなパンも焼くし、ジャムも作る。紅茶は大缶のアーマットを買えばしばらく持つ。でも、セレクトコーヒーの通販は送料が900円もかかるからやめた。
 化粧品もランクを落とすか、美容院も頻度を減らすか? 

 美容院、値上がりしていた。でも、月一で行かないとひどい頭に。ネットでカラー剤を検索してみた。
 あなたは床屋は安いところに行っている。喋ったり、サービスが嫌だからと。
 
 私は豪快な美容師さんと話すのが楽しみ。本名もよく知らないけど。
 楽しい方だ。材料をたくさんいただいている。スポーツに詳しい。ゴルフはやらないくせにマスターズを観ている。フギィアスケートもトゥクタミシェワが好きで話が合ったし。
 宇宙はひとつじゃない、とか、死ぬ事は初めてだから楽しみにしてる……とか、手が止まるのよね。面白い人だ。

 老後を謳歌できるか? いや、七掛けだからまだ四十代。



 
 

 
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