第73話 時には母のない子のように

文字数 1,411文字

 今までで一番泣いたのは、韓国ドラマ『秋の童話』
 生まれて取り替えられた娘2人の物語。目が腫れるくらい泣いた。

ーー泣いたけど、感動なし。なんてコメントが……
 
 
 最近は泣かなくなった。心が冷めている。
 
 今年涙は流さないけど、心で泣いたのは、拙作
『ウサギで思い出したこと』
 安全性のために動物実験されるウサギたち。

『泣き続ける』
 食べられるために、殺されるために生まれてくる豚の話。

 調べてショックを受けたけど、すぐに忘れてしまう愚かな私。

✳︎

 音楽のエッセイで、いろいろ調べていると、戦争、紛争の歌が多い。

『死んだ男の残したものは』は、谷川俊太郎の作詞、武満徹の作曲による歌。
 ベトナム戦争のさなかの1965年、「ベトナムの平和を願う市民の集会」のためにつくられ、友竹正則によって披露された日本の反戦歌の1つである。
 谷川に作曲を依頼された武満は1日で曲を完成させた。

死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった

死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった
着物一枚残さなかった

死んだ子どもの残したものは
ねじれた足と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった

死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった

死んだ彼らの残したものは
生きてる私 生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない

死んだ歴史の残したものは
輝く今日と また来る明日
他には何も残っていない
他には何も残っていない

(著作権無視。あとで削除します)
 この歌は武満徹と石川セリを調べていた時に知った。たくさんの人がカバーしている。

 高石 友也は、日本のフォークシンガー。代表作は「受験生ブルース」

死んだ男の残したものは
https://youtu.be/P1tnxd6JMwY

✳︎

 こちらは、親元から引き離されて、アフリカからアメリカへ連れて来られた黒人労働者たち。
 もう二度と生きて母親には会えないという過酷な運命を顧みながら、その境遇が時々「母のない子のように」感じられると嘆き悲しむ。

 歌詞には「A long ways from home」、すなわち「故郷アフリカから遠く離れて」とあるが、この「home」が意味する所は、決して現実世界の生まれ故郷の意味だけではなく、彼らにとって唯一の心の支えでもある主イエスの御許、人間界での苦役を終えて、魂が帰る安息の地を意味しているようにも思われる。

 過酷な労働と劣悪な生活環境に晒され、黒人労働者たちは幾度も生死の境をさまよいながら、栄養状態も悪く痩せこけた体に鞭打ってひたすら労働を続ける。
 ついに「くたばる直前(I feel like I'm almos' gone)」までに至れば、死ぬほど苦しんだ過酷な運命も
「もうすぐ終わりだ Soon-Ah Will Be Done」
となるのだろうか。
https://www.worldfolksong.com/songbook/spiritual/motherless-child.html

Sometimes I Feel Like a Motherless Child-Paul Robeson
https://youtu.be/KiJx1Hbn_KM?si=fk0BTfiEWTmpHTPQ


【お題】 今年一番泣いた物語はこれ
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