第9話 手作り餃子

文字数 1,287文字

 夫が有給休暇消化で今月末まで休み。そして退職。そしてハローワークへ行く。高年齢求職者給付金をいただく。65歳を過ぎると失業保険とは違い、一括でいただけるらしい。
 そして職探し。休んで十日も経たずに退屈地獄だそうだ。趣味がない。やることがない。ゴルフの練習は金がかかる。毎日は行けない。100球以下に抑える。前に同じマンションのご主人が素振りばかりでなかなか打たない、とバカにしていたが気持ちがわかる。
 退職だから、ラウンドにはずいぶん誘われている。金がかかるが断れない。

 私なんか、たった2時間の仕事でも、明日は休日だと思えば嬉しい。毎日が日曜日は辛そうだ。早くから飲む。休肝日も取れない。次の血液検査はどう出るか? 早くに寝る。夜中に起きて暖房とテレビをつける。温度と時間の大きなズレ。だから待ってる。家庭内別居。

 それで、少しばかり料理をするようになった。私が整形に行ってる間に、ごぼうとにんじんの胡麻マヨネーズのサラダを作った。切ってサッと茹でて和えるだけ。(にんじんラペを作ったときに、千切り用のピューラーを買ったので均一に切れる)
 体によさそう。味もまあまあ。お通じが良くなるが、本人は下痢をするのであまり食べない。

 昨日なにげなく、餃子でも作れば? と言ったらその気になった。長い時間ネットで検索。そして印刷。皮から作る、と。うわっ、面倒臭い。 
 餃子の皮は、確かホームベーカリーで作れるはず。調べたら出ていた。薄力粉と強力粉と35度の湯を入れてわずか8分。温度計もちゃんとあるのだ。
 その間に餡を作る。レシピは豚挽肉にネギ、ニラ、生姜、塩、醤油、ごま油、それに水。水? 水がかなりの量。
 久しく餃子の中身を作ってないが……白菜とか入れない? まあ、白菜をみじん切りにすると面倒臭いから、レシピを信用。
 皮を30等分し、めん棒で丸くする。
……できない。丸くならない。不恰好。非常に難しい。
「皮、買ってこようか?」
口から出た。
「明日、皮買って、明日にしよう」

 それでも、なんとか30枚伸ばした。まともな円形はひとつもない。顔から剥がしたパックの断片みたい。それに具を包む。包むのは慣れている。子供が食べ盛りの頃は作った。セロリ入りのや変わったものも。

 少し前、息子が来た時、餃子を作り孫に包ませた。市販の皮で。あの時は白菜をかなり入れた。あれはおいしかった。
 ずっと前、夫の中国の知人が来て、餃子を作ってくれたことがある。あのときも大量の白菜を刻んでいた。餡を包み、端と端をくっ付けて、丸いかわいい形にして茹でてから焼いた。あれはおいしくて、何度か真似た。

 今日の餡はコメントにもあった。半信半疑で作ったがおいしかった、と。
 不恰好な皮に包み、形を誤魔化し整える。夫のは……ひどい。
 ひとつがかなり大きくなった。焼く時も、水じゃなくて、熱湯を注ぐのね。そして火を弱めないで4分。焼けたら胡麻油をたらす。
 熱々を味見。カリッとして、皮がおいしい。具もおいしい。手間をかけただけのことはある。どこの餃子よりもおいしかった。

 食べた、食べた。餃子だけで夕飯はおしまい。
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