でんでんむし(2023.7①)

文字数 496文字

でんでんむし
を目にしたのは
ずいぶんと
久しぶりで
紫陽花を
観にきたのに
でんでんむしが
気になる

 でんでんむしむし かたつむり 
 おまえのあたまはどこにある 
 つのだせ やりだせ あたまだせ

と幼児の合唱が頭に響く

ひとりだけ
音を外しているのが僕だ
言われなくても
直ぐに分かる

あの頃は音痴なんていう言葉を知らず
誰よりも元気に歌っていた

幼稚園の発表会に集まった保護者たちが
僕の歌声を笑っていたとは知らずに
楽しんでくれていると思っていた

 でんでんむしむし かたつむり 
 おまえのあたまはどこにある 
 つのだせ やりだせ あたまだせ

やがて
小学生になり
独唱したら
みんなから笑われた

音痴だと
みんなから笑われた教室の景色を
今でもはっきりと憶えている

こどもは
正直で
残酷だ

あの日から
なるべく小さな声で
時には口だけ動かして
歌うふりをするようになり
音楽はいつも「2」だった

家に帰ったら
風呂場で
元気に歌ってみようか
幼稚園の頃のように

 でんでんむしむし かたつむり 
 おまえのあたまはどこにある 
 つのだせ やりだせ あたまだせ

今でも
相変わらず
人前で歌えないが
代わりに
詠うようになった

大人になってから
詩に出会えて
良かった
と思う
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