小さな黒い虫(2023.10②)

文字数 242文字

小さな虫を潰したら
黒い死骸が人さし指に残った

顔に止まったのが悪いのだけれど
さっきまでは生きていたから
やはり罪を感じる

命の重さに
違いはないのだ

私は虫を
 殺した

しかし
誰からも
咎められず
生きていく

命の重さに
違いはないはずなのに

虫は私を
 殺せない

しかも
誰からも
悼まれず
死んでいく

命の重さに
違いはあるのか?

人さし指の黒を
 ティッシュで拭いて
  ゴミ箱に捨てる
そして 手を合わす

許しを請う殺虫者は
人間社会では小さな黒い虫

 お前の代わり
 なんて 
 いくらでもいる

契約が終われば
ポイっと捨てられるのだ
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