聴き屋(2022.6.7)

文字数 260文字

その人は
僕の話を
聴きながら
涙を流す

泣きたいのは
僕なのに

不可思議な
商売だと思う

話を聴く
だけで
お金を稼ぐ

医師でも
なければ
カウンセラーでも
なく
占い師や
坊さんでもない

ただの
聴き屋

僕の話を聴いて
泣き
笑い
怒るけど
癒しの言葉も
救いの言葉も
発することはない

なのに
通い続ける
僕も
不可思議だが
予約も難しいくらいに
繁盛している

専門医に
話してみた
妻に
話してみた
壁に
話してみた

けれど
気づけば
聴き屋
に戻る

上からでもなく
憐れみでもない
目線がいいのだ

聴き屋と
向き合うと
僕は
丸裸になって
話し掛けている

最近
聴き屋に
通う回数が減った

きっと
聴き屋が
効いたからだ
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