楓(2023.12②)

文字数 336文字

楓を好きになってから
楓を知った

僕はずっと
紅葉だと思っていた

楓は
楓が嫌いだ

楓の由来を聞かれ
キヘンに風だから
風に関係するんでしょ?
と自信満々に答えたら
 蛙の手に似ているから
  か、え、る、で
 いつしか略されて
  か、え、で
と暗い声で
教えてくれた 

楓は
蛙が苦手なのだ
だから楓は
楓が嫌いなのだ

僕は
苦手を通り越して
蛙が嫌いなので
楓は好きだが
楓と同じように
楓が嫌いになった

楓はとても細長い指で
もちろん
水かきもない

楓の手は
蛙の手ではない
とてもきれいな手だ

もうすぐ
樹々が色づき始めたら
楓を見に行こうと思っている

本物の蛙じゃないから
不意に跳んでくることもないだろう

紅葉の中に楓を探す
秋の肝試しだ

と言いつつ
怖い怖いと言いながら
手をつなぐ口実
が欲しいだけかもしれない

出会って
二度目の秋が始まる 
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