王子と怪物(2021.10.16)

文字数 352文字

まだ
続けるのか
もう
無理だろう

ここ数年
秋になると
ため息を吐いた


王子と
呼ばれて
十数年経つが
今でも
あの夏の雄姿を
思い出す

記憶と
期待と
現実の
深い溝

最高の
好敵手は
遠い存在になってしまった


怪物と
呼ばれて
二十年以上経つが
今でも
あの春夏の躍動感を
思い出す

記録と
栄光と
復活の
高い壁

流れ流れて
獅子に戻り
最後の輝きを目指した


とにかく
甲子園の頃から
二人が大好きだった

だから
打ち込まれ
怪我を繰り返す姿を
見るのが
つらくて
悔しかった

傷つく
必要なんて
ないのに
自ら
傷つく
道を選んでいる
ようにしか見えない

他人は
過去を見て
憐れみ
本人は
現実を見て
足掻く

二人とも
野球が
好きだから
どんなに
叩かれても
諦めなかったのだ

たぶん
それだけ

王子でも
怪物でもなく
野球少年がふたり
今年でユニフォームを脱ぐ

ため息を吐いていたはずが
別れを告げられて
揺れるなんて
勝手だな
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