鉛筆削りの下(2022.3.16)

文字数 311文字

アパートから
一軒家に引っ越し
自分の部屋ができて
学習机を買ってもらった

わたしは
真新しい机の隅に
好きな男子の名前を
彫刻刀で彫って
誰にも見られないように
鉛筆削りを上に置いた

あの時のわたしは
好きな男子が変わるなんて
考えもしなかったのだ

一年後には
二つの名前が消され
新たな名前を彫った

三年後には
鉛筆削りでは隠せなくなり
移り気な自分を知り
彫ることをやめた

実家に戻る度
鉛筆削りを持ち上げ
判読できなくなった
名前を思い出そうとするが
一人目しか出てこない

やはり
初恋は特別なのだろう

しょうた
だけ
残しておけば良かったと思う

字は違うが
夫の名前も
しょうた
だから

懐かしい机に座り
鉛筆削りを持ち上げる度に
初恋を思い出す

愛する
翔太は
父と
居間で飲み交わしている
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