黒い果実(2023.1+α)

文字数 284文字

黒くて甘い果実と
黒くて苦い果実を
贈ります

メッセージが添えられた
宅急便が届いたのだが
どちらが甘くて
どちらが苦いのか
書かれていない

鼻を
近づけても
どちらも無臭だ

二つに一つ
だから、
甘ければ
もう一つは食べない
苦ければ
もう一つを食べればいい

いや
待て

贈り主を
思い浮かべれば
どちらも
苦い可能性も高い

ひとり悩んでいると
帰宅した小学生の息子が
果実を手にして
口に放り込む

 甘くて
 美味しいよ
 パパ

つまり、
残りは苦い
ということになる

 先より
 甘いよ
 パパ

黒くて甘い二つの果実は
忠告する間もなく
若い胃袋に消えた

私は
試されたのだ

小さい人にあって
大きい人にないもの
否、失くしたもの

口の中が
苦くなる 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み