どんな花(2024.1③)

文字数 334文字

蕾のまま
枯れてしまった薔薇を見て
或る人を思い出す

咲くことも
散ることも
ないまま
逝った人

僕は
咲いたけれど
思っていた花
ではなかった

誰も見向きもしないのに
咲く虚しさを
知るために
咲き続けた

僕は
咲いたけれど
思っていた色
ではなかった

誰かに踏まれても
咲く空しさを
学ぶために
咲き続けた

どうやら
僕は
散り始めたらしい

あれほど
むなしいと
感じていたのに
淋しいと
感じ始めている

僕は
咲いたけれど
思っていた匂い
ではなかった

どうして
蕾のうちに
気づかなかったのだろう?

でもそれらは
咲いて
みなければ
分からなかったこと

もう十分に
咲いたのだから
静かに散ればいい

蕾のまま
枯れてしまった薔薇を見て
思い出した或る人は
逝かなければ
どんな花を咲かせたのだろう?

僕は
思っていた花ではなかったけれど
咲いて散るのだから 幸せだ
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