焼き芋(2023.1.18)

文字数 683文字

カラカラに乾いた落ち葉をゴミ袋へ捨てながら 子供の頃は焚き火をしたのに、と息苦しさを感じる 火の用心 煙りが上がると通報されるらしい 火の粉だけでなく臭いを嫌がる人もいるようだ あれもだめ、これもだめ 先回りして何もできないようにすれば 市役所も楽なのだろう 焚き火の温もりもアルミホイルにくるんだ焼き芋の楽しみも知らず スーパーで健康スイーツみたいな扱いを受けるハズレのない焼き芋を買う人々は 僕を古い人に分類する お茶や水を買うなんてありえない、と一緒に暮らしていた祖父母が口にするのを聞いて笑った僕が 気づけば笑われている 祖父は焚き火が好きで 落ち葉を集めては 毎日のように自分で育てたサツマイモを放り投げた アタリもあればハズレもあったが いつもニコニコしていた 時代は変わったのだ カラカラに乾いた落ち葉は僕で 僕は僕をゴミ袋へ捨てている 昔なら焚き火となって誰かを温められたのに 今では嵩張るだけのゴミでしかない 手間を楽しみたいのに あれもだめ、これもだめ 欲しければお金をどうぞなんて 風情に欠けると嘆く僕は スーパーで焼き芋を買う老人を見ると 時代への適応力では負けていると白旗を上げる そろそろ四の五の言わずに買ってみてはどうだろうか? 本当はスーパーの焼き芋が食べたくて仕方ないのに つまらない意地を張っているだけなのだ 紅天使 紅あずま 紅はるか 紅優甘 シルクスイート スーパーによって品種が違うらしい 下調べは万全だ あとは食べるだけ 焚き火は温もりより焼き芋が目当てだったと素直に認めて いざ、スーパーへ 急がないと旬が終わってしまう
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