私の雨(2023.3+α)

文字数 570文字

辺りが急に暗くなり、雲に覆われた空を見上げると、体が浮き上がって吸い込まれるような気持ちになったが、足は地にあり、心の奥底で吸い込まれてしまいたいと願っている自分がいることに気づいて、地に足が着いていない最近の暮らしのせいだと心が暗くなる。どうせなら、激しく降ってしまえばいいのに、降りそうで降らないのは、いつまでも煮え切らない私と同じだと、雲に覆われた空を睨んで呟いたら、雨がポツリと落ち始め、次第に激しさを増して、やがて滝のように流れ落ちるので、背中を撫でられたように私の涙も溢れ出す。振るつもりが振られて深く落ち込み、未練たらたらな自分が馬鹿馬鹿しくなり、どうせ結果は同じなのだからどうでもいいじゃんと、つまらないプライドを捨てれば、早く新しい男を見つけようと土砂降りの中を走り始める。

大きな恋だったから
ほんとうは自分で終止符を打ちたかったのだ。

容易く雲が消えるほどの小さな恋ではなかったから
あっさりと晴れてもらっては困るのだ。

まだまだ降り続ければいい。でも、ずぶ濡れになった私は、もう泣いていない。家に帰ったら、思い出の服を脱いで、そのまま捨ててしまおう。何もなかったかのように仲良く並んだ歯ブラシも、壁に貼られた彼が描いた風景画も、雨が降り続いているうちに捨ててしまおう。きれいさっぱり忘れてしまうのだ。

今の私なら、きっとできる。
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