声なき声(2022.6+α)

文字数 236文字

声なき声が聞こえる耳があったら
世の中は変わるだろう

声なき声が
溢れていることに
誰もが気づいているけど
気づいても聞こえないから
生きていられるのだ

助けを求める叫び
噛み殺す罵詈雑言
あるいは
小心者の恋の囁き

口から
発する言葉は
いくつもの
網を潜り抜けた
稀有な存在なのだ

朝から晩まで
喋り続ける
我が母にも
声なき声はある

声なき声は
澱のように溜まり
心が重くなるから
僕はときどき
風呂場で叫び尽くす

声なき声に
重さなんてないはずなのに
やけに重くなる

報じられないだけで
声なき声は
死因の上位に入るらしい 
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